「TITAS」 関係者インタビュー(中)/明基材料 機能織材事業所 李冠緯所長

2025年10月24日 (金曜日)

透湿防水のサステ新素材

  ――繊維に参入した経緯は。

 当社は、(エレクトロニクス製品で知られる)BenQ(ベンキュー、中国語名:明基)グループの一員で、液晶ディスプレー用偏光板などで培ったフィルム成形や、ラミネート技術が強みです。主に機能性フィルム、電池材料、医療製品を展開しています。われわれの技術を応用し、「ゴアテックス」のような透湿防水素材を作りたいと考え、約5年前にフッ素化合物(PFC)を使用しない、環境負荷の低い膜の開発から着手しました。

  ――それが今回「台北紡織展」(TITAS)で発表した透湿防水素材「Xpore」(エックスポー)ですね。

 当素材は、われわれが開発した疎水性の微多孔膜が基盤です。フッ素フリーで、化学溶剤を一切使用せず、高い透湿性と防水性を両立しました。例えるなら「ゴアテックス プロ」に匹敵する性能を、より環境に優しい製法で実現しました。六つの製品ラインを持ち、うち厳しい気候下での活動に対応する「Xpore Utmost」は、欧米大手ブランドとの取り組みが進行中です。

  ――今回展では「e2cycle」(イー2サイクル)も出展しました。

 繊維産業がペットボトルリサイクルに注力しているのを見て、グループ内で年間約3千㌧の廃材となるディスプレー用偏光板の回収に着目しました。この偏光板は多層構造ですが、われわれは外側と内側の高純度な透明フィルム層を剥離・回収し、これをペレット化して糸・生地にします。それと当社のラミネート技術を組み合わせ、イー2サイクルを開発しました。

  ――非常にユニークですが、環境負荷は。

 最大限に考慮しています。われわれの回収・リサイクルプロセスは、従来のペットボトルリサイクルと比較しても、高いCO2削減効果があります。

  ――イー2サイクルはどんな生地を作れますか。

 編み物から織物まで多岐にわたります。透湿防水の3層ラミネート加工も可能です。現状では、生地の品質安定性と機能性、快適性のバランスを考慮し、イー2サイクル50%、リサイクルペットボトル素材50%の比率です。これにより、優れた耐摩耗性や引裂強度などの物性を維持しています。

  ――両素材の今後の展開は。

 現状は欧米向けがメインですが、今後、日本市場に本格的に参入します。そのため、日本の大手商社で繊維を経験した人材を採用しました。これから日本でパートナー企業を見つけ、一緒に市場開拓していきます。

(台北=岩下祐一)