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大手学生服メーカー/価格改定で利益改善/安定供給、在庫削減が課題

2025年10月24日 (金曜日)

 学生服業界ではここ数年、性的少数者(LGBTQ)への配慮から、中学校を中心にブレザーへのモデルチェンジ(MC)が活発化している。その影響によって、大手学生服メーカー3社はMC校からの受注を堅調に伸ばす。さまざまなコストが各社の利益を押し下げる要因となっていたが、進めてきた価格改定によって一定の改善が進んだ。(秋山 真一郎)

 この数年、原材料費や物流費、人件費など、モノ作りにおけるコストが上がってきた。また、従来の詰め襟に比べてブレザーは生産に手間がかかる。地域や学校ごとにデザインが変わるケースも多く、多品種・小ロット化も加速している。生産の効率化など自助努力が限界を迎える中、各社は製品の価格改定へ動いた。

 値上げがおおむね順調に進み、トンボ、菅公学生服、明石スクールユニフォームカンパニーの学生服メーカー大手3社の利益は改善が見られる。トンボは2025年6月期、3年ぶりの営業増益となった。藤原竜也社長は「契約期間中で提案が伸びている物件もあるが、7割ほど終わった」とし、今期に「9割近くまで完了する」見通しを立てる。

 菅公学生服は24年7月期に各利益段階で赤字を計上したほか、2期連続の最終赤字となっていたが、25年7月期は黒字転換を果たした。尾﨑茂社長は「業界全体で値上げを行ったことが売り上げと利益面に大きく貢献した」と説明。価格改定については「8割ほど完了した」とする。

 明石スクールユニフォームカンパニーは25年12月期の業績に価格改定の効果が表れてくるとみられる。河合秀文社長は「想定の数字に近いところまで単価を上げることができた」と話す。

 一方、コスト増は継続しており、利益確保は困難さが増している。各社は戦略的にコスト削減を追求するものの、「昔のように5年に1回、10年に1回のような価格改定だとおぼつかない」(トンボの藤原社長)、「原材料を含めコストがどんどん上がっている。また(価格改定を)お願いしていかなければならないだろう」(菅公学生服の尾﨑社長)との声も上がる。

 来春に向けては製品の安定納品も引き続き求められる。ニッケの調べでは、26年度入学商戦に向けて制服MCを予定する学校は中学、高校合わせて517校に達する見通し(9月末時点)。25年度入学商戦のMC校数、722校からは減少するが、中学校のブレザー化が活発でなかった時期と比べると、依然として高水準にある。

 各社は入学商戦での安定供給を重視するために備蓄生産を強化した。また、制服の別注化が進んだこともあり、在庫量が増えた。在庫圧縮も引き続き課題となる。