綿紡績大手 構造改革で“次の稼ぎ方”へ
2025年10月27日 (月曜日)
綿紡績大手の繊維事業で国内生産体制の再構築が進んでいる。生産拠点の整理・集約によって、量から質への転換を急ぐ。
コスト競争力に依存しない高付加価値型の事業構造を目指し、海外展開や新素材開発を軸に“次の稼ぎ方”を模索する動きが鮮明になってきた。
繊維事業の構造改革は今年に入っても継続している。大和紡績は3月、合繊紡績主体のダイワボウスピンテック(松江市)の生産を停止し、国内紡績から撤退。クラボウは6月、紡績・織布の中核だった安城工場(愛知県安城市)を閉鎖した。
富士紡ホールディングス(HD)は小坂井工場(愛知県豊川市)の繊維生産を12月までに停止し、研磨材事業へ人員の再配置を予定する。日清紡HDも綿スパンレース不織布「オイコス」の生産を年内に停止する方針で、各社とも撤退を起点に構造改革を加速している。
クラボウは3カ年の中期経営計画でポートフォリオ改革を推進。「過去の延長線上のビジネスでは生き残れない」(西垣伸二社長)として、安城工場の設備をタイとインドネシアへ移設し、グローバル供給体制を再構築。海外での安定供給と、原綿改質による機能糸「ネイテック」など、高付加価値化を両立させる戦略を描く。
大和紡績はコスト競争力のない汎用(はんよう)品を避け「最終製品に近い末端への接近」(青柳良典取締役)を徹底。ポリプロピレンとレーヨンの複合技術を武器に高付加価値素材への転換を進める。特にフェースマスク向けでは原料から一貫生産できる強みを生かし、「市場でかなりのシェアを獲得している」と強調する。
富士紡HDは生活衣料事業で、インナーブランド「BVD」の電子商取引(EC)の拡充や組織改革を通じて新規顧客を開拓。高級インナー「アングル」では“麻のような風合い”の綿素材「アサメリー」を主軸に海外展開を加速している。中国の富裕層向け販売が好調で、海外売上高が国内を上回った。「現状維持は衰退」(井上雅偉社長)とし、和歌山産地との連携を通じて欧州輸出も強化する。
新たな方向性を探る
シキボウは「繊維技術を経営資源の軸足に置く」(鈴木睦人社長)として、積極的な投資を続ける。ユニチカの衣料繊維事業の一部譲受は「成長への変革の一丁目一番地」と位置付け、国内外の事業基盤を強化し、グローバル展開を視野に統合準備を進める。
エンドユーザーとの接点づくりも活発だ。クラボウは7月、ワークウエア専門のECサイト「ニューライフワーカーズ」を開設。「ユーザーの声を直接捉え、素材開発に生かす仕組み」(西垣社長)を構築した。
日清紡HDは「繊維事業をそろそろ次の形にしていかなければならない」(石井靖二社長)とする。綿製品の繊維to繊維リサイクル技術の確立を目指す「シャツ再生プロジェクト」では試作品が完成し、実用化に向けて前進。繊維と他事業の融合を模索し、次代を担う研究テーマとして新素材開発に挑む。





