2025年秋季総合特集(11)/Topインタビュー/一村産業 社長 大嶋 秀樹 氏/「やりたい」や個性を大事に/新商流作りが一部進展
2025年10月27日 (月曜日)
北陸産元と生地商社を兼ねる一村産業(大阪市北区)の上半期(2025年4~9月)売上高は全社では微増だったが、繊維事業は微減だった。ユニフォーム向けやシャツ地は堅調だったが、中東民族衣装向けが減少した。とはいえ、海外市場向けなどで新しい芽は出始めている。大嶋秀樹社長に現況と今後を聞いた。
――独自性を発揮するために何を磨いてきましたか。
私が最近感じているのは、会社の風土として個々人がやりたいことをやる、やれる環境が整ってきているということです。事業の方向性はトップが定めますが、そこに至るまでの“やり方”に関してはほぼ放任しています。
2年半前に社長に就任してまず自身に課したことは、社員がやってみたいと言ったことには反対しないということです。仕事ですから結果は求めますが、過程も大事。評価制度も成果だけでなく、仕込みや準備をどう進めたかをきちんと見るようにしています。
人間一人一人には個性があります。会社が個性をつぶすというのは極めて理不尽なことで、あってはならないこと。社会にも会社にもいろいろな人がいていいし、さまざまな意見があるのが正常。野球やアメリカンフットボールといったチームスポーツもそうですよね。それぞれの役割を、個性を発揮しながら務める。金太郎あめのような個人の個性が見えない会社はいずれ崩壊すると思います。
とはいえ司令塔役は必要です。手柄を焦ってミスが確実になってしまうような際には軌道修正を図ります。
――逆に、足りない部分はありますか。
当社は生地や資材など中間財を主力にしていることもあり、ひと言で言えば地味。もっと川下や消費者に近づいた事業をしていく必要性を感じています。その一環として、クラウドファンディングの活用に力を入れています。将来の製品事業展開、川下化を見据えた勉強という位置付けです。「マクアケ」で高通気素材「アミド」を使ったユニセックスパンツを販売したのに続き、さまざまな機能をカスタマイズできる「クアトロセブン」を使ったTシャツを出し、目標を達成しました。次はクアトロセブンのトレーナーを出します。
今年からはプロバレーボールチームの東レアローズ静岡と東レアローズ滋賀のスポンサーになりました。若手社員を中心にプロジェクトチームを結成し、両チームの応援活動に取り組んでおり、マクアケに出した動画でも選手が当社製品を着用してくれました。ブランド価値を高めるためには何をすればいいのか、勉強中です。
――上半期を振り返ってください。
繊維事業は売上収益が前年同期比1%減で、売上総利益は微増だったものの、事業利益は9%減でした。減収減益目標を立てていたので想定内ですが、利益面では為替差損が痛かったのと、価格改定が進まないことが課題です。
スパンポリ事業は中東民族衣装向けが微減ながら、取り組んできた「中東以外」が伸び、全体では微増でした。ユニフォーム向けは利益が厳しいものの独自素材が好調で増収です。ライフスタイル事業は欧州向けが不調ながらもほとんど実績のなかった北米向けが伸び始めました。
契約は取れていてもモノが上がってこないという事態が頻発しています。当社はグローバル生産に取り組んでいますが、モノ作りのベースは日本です。仕方がないことではありますが、染工場などが稼働日数や時間を減らす傾向の中、以前のような納期ではモノが上がってこず、機会損失になっています。
また中東民族衣装向けでは中国などの海外勢が安値で入ってきており、生産調整も始まり出したため、楽観できない情勢です。
全社は売上収益が1%増、売上総利益が3%増、事業利益がトントンでした。
――通期や来期に向けては。
通期では増収増益計画を立てていますが、厳しい見通しです。一方、北米向けやインド向け、中国、韓国向けの拡大に新規商流作りとして取り組み、芽も出始めていますので、期待したいところです。
〈ごはんのお供/卵やバターをかけて〉
朝食ではほぼ毎日白ご飯を食べると言う大嶋さんは、大の白ご飯好きである。好んで食すのが、定番の卵かけご飯。バターじょうゆをかけたご飯をのりで巻いて食べたりもする。バターが好きで、みそ汁に入れて食すこともあるそうだ。そんな大嶋さんは今年4月、膝を手術した。そのため数週間入院もした。病院食のおかげで7㌔痩せ、タバコもやめた。しかしそこから半年が経ち、「タバコ以外は元に戻ってしまった」と笑う。
【略歴】
おおしま・ひでき 1983年一村産業入社。2012年取締役産業資材事業部門長兼優水化成工業取締役、18年常務、22年専務を経て、23年6月から社長





