秋季総合特集Ⅱ(9)/Topインタビュー/日東紡アドバンテックス 社長 森 徹也 氏/得意分野磨き業界をリード/高機能資材世界一に向けて

2025年10月28日 (火曜日)

 日東紡グループの日東紡アドバンテックスは、4カ年の中期経営計画に取り組んでいる。ドット状コーティングによる機能加工技術「ディアライン」の拡販やサステイナビリティー対応の強化などを事業成長の柱とする。森徹也社長は、中計2年目となる2025年度(26年3月期)の上半期までを振り返り、「事業を取り巻く環境は厳しいが、着実に前へと進んでいる」と一定の評価を与える。下半期以降も日東紡の他事業との連携を深耕して販売拡大を図るなど、「高機能資材分野で世界ナンバーワン」という目標に向けた施策を進める。

――日東紡アドバンテックスが独自性を出すために、これまで何を磨き、足りない部分をどのように補ってきましたか。

 事業を開始して今年で5年目に入りました。接着芯地を中心とし、極薄・軽量かつ高品質なモノ作りを得意としています。得意分野を磨くことで業界をリードしてきたと自負しています。ただ、会社は「接着芯地から接着資材」への転換を旗印に掲げています。目標とする高機能資材分野でのナンバーワンに向けて前進を続けます。

 ポイントになるのがドット状コーティングによる機能加工技術です。展開を開始して4年になりますが、資材分野で広がりが出てきました。接着芯地は衣料分野が中心のため顧客ニーズ・要望を集めるだけでも大変でした。今では顧客や市場の声に応じた独自の提案もできるようになり、高い評価を得ています。

――現在の事業環境をどのように捉えていますか。

 今年の夏も記録的な猛暑でしたが、近年は春と秋がなくなり、冬も短くなっています。芯地や裏地などのアパレルパーツの需要も減少傾向にあり、服飾資材を製造・販売する企業を取り巻く事業環境は厳しさが続いていると言えます。一方で、暑さへの対策や着用時の快適性に対するニーズは高まっています。

 そうした観点から考えればまだまだチャンスはあります。例えば芯地なは薄さや軽さ、機能性が求められ、当社が得意とする領域です。「安ければ売れる」という時代ではなく、快適性や機能性、品質、安心・安全は不可欠な要素です。それらを満たした商品を適正な価格で販売することが重要と考えています。

――トランプ関税の影響はありますか。

 現在、直接的に大きな影響を受けているわけではありません。中国の経済は盛り上がりを欠いた状況が続き、欧州の経済も良くありません。米国の関税政策が中国や欧州の経済にとってさらなるブレーキとなる可能性は否定できません。それらの影響がこれから顕在化するかもしれず、注視する必要があるでしょう。

――そのような状況下で、25年度上半期(25年4~9月)の業績は。

 主力の芯地は、アパレルメーカーが適量生産を志向していることもあって数量では厳しい局面にありますが、価格の適正化などから売上高では健闘しています。衣料品全体の生産着数は減少していますが、伸びている企業やブランドも少なくありません。そうした企業・ブランドのニーズに合致した商品の開発を続けていきます。

 染色加工子会社の文京精練は、接着芯地とアウター関連の染色加工を手掛けているのですが、染色や加工ができる会社が全国的に減少しているため顧客の依頼が増えています。しかし、文京精練も生産キャパシティーは限られていますので、生産効率性を高め、収益性を向上していきたいと考えています。

――下半期以降の重点施策は。

 衣料品市場が大きく伸びるとは考えにくく、トランプ関税の影響も無視できない中、従来の接着芯地は厳しい環境が続くと予想しています。機能性商品は増えていきますので、ドット状コーティングによる機能加工技術の提案を強化します。当社だけでなく、日東紡の資材・ケミカル事業全体で取り組み、事業間の協業にも力を入れます。

 ドット状コーティングの機能加工技術の利点は、従来の加工では難しいことへの対応にあります。例えば、撥水(はっすい)性のある生地や薄地に加工でき、ガラス繊維やアラミド繊維、炭素繊維を使った生地、不織布にも適用できます。機能の複合化や片面だけの加工も可能で、使用する水の量や廃液も大幅に減らせます。

――現中計でも拡販を計画しています。

 中計では「飛躍的な拡大」を目標としています。想定よりも時間がかかっていますが、生活雑貨関連用途を中心に少しずつ販売が伸びてきました。帝人フロンティアとアース製薬が開発した防虫加工「スコーロン」に採用されているほか、スラックスの滑り止めや消臭ランドリーバックなどでリピートを獲得しています。

 ドットコーティングによる機能加工に対応できる企業は少なく、世界でナンバーワンを目指していきます。既存の加工を置き換えていけるだけのポテンシャルは持っていると考えています。さまざまな商品を開発していますが、世界市場で戦うために、多くの企業と共同で商品開発を進めます。

――環境対応への取り組みは。

 サステに対応する商品を充実させています。ケミカルリサイクルポリエステルの活用や生分解性を持つ芯地のほか、海洋生分解性やマイクロプラスチック抑制、OBP材料の利用、環境に優しい原着糸の利用、オールポリエステル芯地によるモノマテリアル化など、多様な角度から環境対応を図っています。

 海外顧客への販売も増やしていきたいと考えており、国際認証の「GRS」(グローバル・リサイクル・スタンダード)を取得しました。欧州は景気が振るわず、スピードに欠けている部分はありますが、取り組みが進展しつつあります。

〈ごはんのお供/ネットでまとめ買い〉

 「のりのつくだ煮にハマっている」と話す森さん。兵庫県の企業が製造・販売し、関西では知られた商品が特にお気に入りなのだとか。さまざまな商品がラインアップされているが、のり本来の色や香りを引き出したプレミアム商品が「味もまろやかでおいしい」と語る。関西出身の森さんは子供の頃から食べていたが、「地元を離れていつの間にか味を忘れていた。久しぶりに食べて感動」した。東京都内のスーパーではあまり売られておらず、ネットでまとめ買いしていると言う。

【略歴】

 もり・てつや 1989年日東紡入社。2021年7月日東紡アドバンテックス取締役兼営業第2部長、23年4月日東紡繊維事業部門長兼日東紡アドバンテックス社長を経て、24年4月日東紡資材・ケミカル事業本部繊維ユニット長兼日東紡アドバンテックス社長