秋季総合特集Ⅲ(1)/発信による強靭化/AOKI/帝人アクシア
2025年10月29日 (水曜日)
〈AOKI/SNSで顧客と接点拡大/再生100万回超え動画も〉
AOKIはSNSで情報を発信し、消費者との接点づくりを強化している。ブラウンスーツの着こなしを紹介する動画は、100万回以上再生されるほど注目を集めた。スタッフスナップ(店舗販売員がお薦めの商品を着用したコーディネート画像)の投稿も好評だ。反響の高かった投稿画像は印刷・ラミネート加工し、店舗での接客時に活用。デジタルとリアルを融合した販促にも取り組む。
AOKIレディースでSNS戦略の中心を担うのが、コミュニケーション戦略課の西郷満利菜チーフだ。自ら出演し、高い確率で〝バズる〟動画を生み出している。
インスタグラムを通じて配信した「ブラウンスーツ着回し7スタイル」動画は、再生回数100万回超えの大ヒットを記録した。1着のブラウンスーツに対し、色やデザインの異なる7点のブラウスを次々と組み合わせてみせる。着こなしの幅が広いブラウンスーツを訴求する内容だ。
「数年前までブラウンは何となく古臭いイメージを持たれていたが、ブラウンスーツ1着でこれほどかわいく着回せるということを発信したかった」。西郷さんはこう振り返る。
動画に入れるテロップも重要だ。例えばブラウンスーツにネービーのブラウスを合わせる画面では、「後輩に憧れられたい時はこれ」といったコメントを入れる。テロップや映像に動きが少ない動画は、すぐに視聴を中止されてしまう可能性が高いと言う。
西郷さんは「投稿者のキャラクターを知ってもらうことも大切」と指摘する。「ブラウン押しの西郷」が浸透し、内容にも共感してもらえるとファンが付く。ブラウンの商品を紹介する動画では「#ブラウン族」とハッシュタグを付けて、検索しやすくしている。
動画は週に3本程度上げる。「30代/中堅OLの出勤コーデ」「夏の通勤コーデ」など、働く女性に寄り添う内容でヒットを飛ばしている。
一方、スタッフスナップの投稿は各地域の店舗スタッフ約100人が行う。西郷さんが講師を務める投稿者向けの社内勉強会では、写真のみの投稿ではなく、目を引くキャッチコピーや商品の説明文を入れるようアドバイス。写真では伝わりにくい生地の質感や透け具合などは、特に丁寧に伝える必要がある。
スタッフスナップの画像は、リアルな接客にも生かす。反応の良かった投稿画像を印刷・ラミネート加工して、「ルックブック」と名付けて接客時に利用。複数の着こなしパターンを視覚的に紹介することで、来店客1人当たりの購入点数の増加にもつなげる。
〈帝人アクシア/シーズンで100億円の市場/商品力と発信力がポイント〉
シーズンで約100億円の市場を作っている企業がある。テレビショッピングで除湿剤などを販売している帝人アクシアだ。テレビショッピングは強力な販路だが、その他商品の中に埋没する恐れもある。消費者に選ばれる理由には、商品が持つ機能や品質に加え、発信力が欠かせない。
同社は、1988年に帝人の出資で設立。現在は帝人フロンティアの子会社として生活消費材関連商品の企画・開発・販売を行う。多くの商品の中で、高吸水・高吸湿繊維「ベルオアシス」を使った除湿・消臭剤「乾っとソフトパックドライ」、収納ケース「乾っとデオケース」の二つが人気を誇る。
帝人アクシアは「乾っとソフトパックドライは4年ほど前から人気が高まり、乾っとデオケースはこの2年で注目されるようになった」と話す。ベルオアシス自体が長い歴史を誇っていることを思うと、ブレーク商品の誕生は「時間がかかった」ようにも感じる。きっかけはあったのか。
ベルオアシスを使った商品では、寝具用の湿気取りを販売していたが、シリカゲルタイプの登場でシェアを奪われる。新たな商品が不可欠となったが、ベルオアシスという素材に焦点を当てたプロダクトアウト型の開発ではなく、マーケットインにかじを切った。
新商品の展開に当たり、「消費者にどのようなベネフィット(利益)を提供できるか。そのことを第一に考えた」と言う。ポイントにしたのが、使い捨てではなく、繰り返し使えるという特性。消費者の悩みである湿気対策に加え、家計に優しい商品としても訴求を強める。
その結果、商品の販売が伸びる。一つのテレビショッピングで、乾っとソフトパックドライはワンシーズンで40万セットが販売され、乾っとデオケースの販売はワンシーズンで50万セットを超える。小売価格で換算すると市場規模は約100億円。他のテレビショッピングなどの数字を合わせるとさらに大きくなる。
「売り方」も重要なポイントだ。通常は、番組のナビゲーターに任せるが、シナリオはある程度自らで作成する。消費者の立場になってシナリオを書いているとし、「消臭といった機能だけでは響かない。何を欲しているか、困り事は何かを常に考えている」と強調する。
ショッピングナビゲーターの育成などが今後の課題だ。同社社員のナビゲーターはまだ一人だが、現場から指名の声が入るほどで、「他社からの依頼も引き受ける可能性もある」としている。また、リサイクルポリエステル「エコペット」を使った商品も拡充する。





