秋季総合特集Ⅲ(6)/Topインタビュー/スタイレム瀧定大阪 社長 瀧 隆太 氏/独自のクリエーション発信/生地販売苦戦、製品は拡大

2025年10月29日 (水曜日)

 スタイレム瀧定大阪(大阪市浪速区)は近年、中国を筆頭に海外向け生地販売の拡大を続けてきた。しかし情勢変化によって上半期(2025年2~7月)は振るわなかった。「全体的に向かい風が吹いている」と言う。国内向け生地販売も、アパレルの小口化要求などを背景に厳しい。モノ作りの難度も上がる。瀧隆太社長に考えを聞いた。

――独自性を発揮するために磨いてきたことは何でしょうか。

 当社の独自性、強みは何かと言えば、企画とリスク(に挑戦する力)が両輪です。これは長い歴史の中で日々当たり前のように磨いてきたことです。当社の生地販売の取引は備蓄(リスク)と別注とがありますが、国内向けでも海外向けでも圧倒的に備蓄の比率が高い。自社発信の企画力と即納機能が評価されていると言えます。

 ただ、備蓄にしても別注にしても、リードタイムの長期化が大きな問題になっています。以前と比べて、海外と比べて、の二つの意味で長期化しています。人員不足を主な理由に日本のリードタイムが長期化している現状に強い危機感を持っています。

――事業所数がジワジワと減り、生産スペースがタイトになっていることもリードタイム長期化の理由の一つです。

 私は18年前にこの業界に入ったのですが、その際に、品目にもよりますが日本の織物や編み地の生産数量がピーク時に比べて5分の1、10分の1になっていることを知り、驚くとともに危機感を持ちました。日本でモノ作りができなくなるのではないか、という危機感です。当社は基本的に問屋業ですから、商品を直接的には作りません。生産者が消えれば当社の事業自体が立ち行かなくなります。

 ここ数年はこの改善に向けて具体的に動いています。SCM推進室を立ち上げつつ営業スタッフも全国の産地をつぶさに回り、どんな問題があるのか、どこがボトルネックになっているのか、どことなら組めそうかなどを調べました。糸、織り・編み、染色加工など繊維生産の実態を知り、コントロールしていくためです。その中でビジョンを共有できるところとは取り組み型の関係を築くようにしています。日本にモノ作りを残すための取り組みです。

――今年はついに直接的な設備投資にも踏み切りました。

 尾州産地の小塚毛織(愛知県一宮市)さんと旧式シャトル織布工場のカナーレジャパン(同)を、北陸産地のシモムラ(石川県小松市)さんと糸加工のWS(同宝達志水町)をそれぞれ合弁で新設しました。この2社についてはリードタイムの短縮というよりも、もっとよく知り、残していく、という意味合いが強いです。

――海外生産にも力を入れています。

 中国、インド、インドネシア、ベトナム、韓国、タイ、イタリアなどで生地を生産したり、生地を備蓄したりしています。拠点も設け、それぞれが外・外ビジネス拡大に向けて有機的に結びつくようにもなってきました。

――企画力についてはいかがですか。

 クリエーションの力をもっと伸ばしたいと考えています。当社ならではのクリエーティブなクリエーションを作り上げ、国内外のブランドに発信する。コスト競争に巻き込まれないためにもこの部分はもっと磨いていく必要があります。

――上半期(25年2~7月)を振り返ってください。

 インフレ基調の中で、全体的には増収にはなっていますが、主力の国内向け生地販売は減収でした。中国や欧米向けも市況悪化などで踊り場を迎えており、伸ばし切れていません。ウールを主体とする原料事業も、酷暑などでウール離れが加速する中で苦戦しています。製品OEM・ODM事業は方針通り伸ばせました。

――今後の方向性は。

 先ほども述べましたが、クリエーションの力をもっと引き上げたい。「あ、いいな」と感じてもらえるような生地コレクションを発信していきます。優れたクリエーションを求める人は世界中にいます。この声に対応できればまだまだ成長することは可能だとみています。

〈ごはんのお供/スッポンだしで炊いた昆布〉

 「毎日白ご飯を食べる」と瀧さん。お供として思い浮かんだのは、大阪の百貨店などで売られている「まつのはこんぶ」。筆者は食べたことがないが、スッポンのだしで炊き上げ、松の葉のように細く刻んだ昆布。価格もそれなりに高いが、おいしいらしい。そんな瀧さんが最近はまっているのがトライアスロン。「過酷だが楽しい」そうで、運動の結果として食欲も増している。そんな時に食べる白ご飯とまつのはこんぶは格別のおいしさ。

【略歴】

 たき・りゅうた 1999年ソニー入社。2007年瀧定大阪入社。08年4月から瀧定大阪社長。18年4月から兼スタイレム会長。瀧定大阪とスタイレムの吸収合併・社名変更に伴い21年2月からスタイレム瀧定大阪社長