秋季総合特集Ⅲ(12)/Topインタビュー/コスモテキスタイル 社長 岡田 泰紀 氏/顧客に密着した企画開発力/課題を“伸ばす力”に転換

2025年10月29日 (水曜日)

 コスモテキスタイル(大阪市中央区)の上半期(2025年4~9月)は、売上高、利益ともに前年同期比ほぼ横ばいだった。市況が低迷する中でも切り売り向けの伸長に成功し、まだまだ種まきの段階とはいえ、輸出も少しずつ着実に拡大している。来年には創業90周年、設立45周年の節目を迎える。岡田泰紀社長に考えを聞いた。

――独自性を発揮するために磨いてきたことは何でしょうか。

 当社の独自性は企画開発力と顧客密着型のサービスにあります。特に、独自の意匠や生地企画開発に力を注いでいます。また顧客との密接なコミュニケーションを通じてニーズを深く理解し、それに応える商品を提供することを常に目標にしています。

 一方、グローバル展開における経験不足は課題で、これを補うために海外パートナーとの連携を強化し、現地市場の知見を取り入れるとともに、グローバル人材の採用・育成にも力を入れ、国際競争力を高めていきます。これからも独自性を磨き続け、業界をリードする存在でありたいと考えています。

 当業界では価格競争や人材不足など難題が続く一方、これらを乗り越えるノウハウと俊敏さこそが当社の強みだと捉えています。特にモノ作りの力には自信があります。長年頑固なまでにこだわり、顧客が期待する商品を市場のトレンドも取り入れながらぶれずに作り続けています。人材育成や異分野連携も徹底し、足りないところを全員で補い合う文化を築いているつもりです。課題を“伸ばす力”に転換する。そういう気構えで臨んでいます。

 サステイナブル商材やSDGs(持続可能な開発目標)対応にも注力しており、ホームページの刷新や新たなメルマガ配信などにも力を入れています。

――上半期(25年4~9月)はどのような結果に。

 微増収微減益ですが、ほぼ横ばいと言えます。原材料高騰分の価格転嫁が十分にできませんでした。輸出は徐々にではありますが着実に拡大しています。近年は「プルミエール・ヴィジョン・パリ」や「インターテキスタイル上海」など海外の展示会に積極的に出展しており、その成果が少しずつ表れているということです。

 国内で開かれたインバウンド展にも初出展し、一定の成果を上げることもできました。

 自身としては、昨年に引き続き中国の「インターテキスタイル上海」に参加し、中国の重要既存顧客との親交を深めることができましたし、従来にはなかったロシアや中東、インドなどの新規顧客とも接点が持てて新鮮でした。

――社内改革にも着手しています。

 働き方改革と上長の気づきを深める目的で、360度評価制度を導入しました。社長をはじめ、役員や幹部が社員から評価を受けるというものです。今期から社長と社員の1対1のミーティングも始めました。「もっと会社をこうしてほしい」など建設的な意見が出てくればと考えています。

 11月の「東京テキスタイルスコープ」(TTS)では、アパレル向けと切り売り向けの協働プロジェクトとして二つの部署が一つのブースに出展します。生地という同じ商材を扱いながらもアパレルと切り売りは似て非なる業界ですので、化学反応が起こることに期待しています。

――今後の方針は。

 海外展への積極的な出展を続けます。海外販路拡大を狙い、収益力を引き上げていきます。

 環境の変化が著しいため、そこへの対応力を磨くことも重要です。そのために従来の延長線上にはないさまざまな角度での投資も検討していきます。詳細はまだ言えません。

――来年に創業90年を迎えます。

 来春に創業90周年と設立45周年を迎えます。取引先、地域社会、従業員の皆さんの支援のたまものであり、心から感謝します。90年の歴史を単なる重みとせず、次の世代に引き継げる「しなやかで強い会社」へと進化していくことがテーマです。絶えず外部視点を取り入れ、若い人材、新規事業、デジタル化、従来の延長線上にない新たな投資などに注力していきます。

〈ごはんのお供/ふりかけと生地は似ている〉

 岡田さんがご飯のお供として真っ先に思い浮かんだのはふりかけ。「シンプルな白ご飯を一瞬で特別な一品に変えてくれる魔法のような存在だった」と幼少期を振り返る。「実は生地にも通じるものがある」と岡田さん。生地もふりかけと同様、素材はシンプルでも、味付けによって魅力が何倍にも広がる。ふりかけが白ご飯を引き立てるように、「私たちも素材に付加価値というスパイスを加え、業界を盛り上げていきたい」。

【略歴】

 おかだ・やすき 1981年三井物産入社。89年モスクワ支店次長、97年繊維部製品室長、2000年青島事務所長(兼)有限公司総経理、08年コンシューマーサービス本部西日本CS事業部長、09年関西業務部長、12年関西支社副支社長を経て16年に給食委託企業、メフォス専務取締役、18年同社社長。22年6月退任、同年7月からコスモテキスタイル社長