秋季総合特集Ⅲ(15)/Topインタビュー/KBツヅキ 社長 武内 貞継 氏/技術開発で特色ある製品を/IPやサブスクなどで勝負

2025年10月29日 (水曜日)

 KBツヅキの武内貞継社長は「今は量を追いかける時代ではない」とし、特色ある商品の販売に力を入れる。このほど、従来とは異なる組成の綿糸を開発、その糸を使ったタオル製品の販売を進める。タオルはアニメ作品などのIP(知的財産)を活用した製品のほか、サブスクリプション型の販売サービスなど既存とは違う手法で勝負する。

――会社として独自性を出すために磨いてきたことは。

 現在当社が置かれている状況としては苦戦の一言です。さまざまな施策を抜本的に変えないと生き残っていけません。そうした中で特色ある製品を打ち出していくことが独自性と考え、ここ数年は技術開発に取り組んできました。綿糸で新たな開発というのは難しく、大変な時間と労力がかかりましたが、ようやく従来の組成とは異なる綿糸が完成しました。販売方法や商品戦略もこれまでとは大きく変えており、状況の変化に対応できる体制ができつつあります。

――改めてどのような特徴の綿糸か教えてください。

 従来の原料使いながらも、米国のサンホーキン綿並みの品質を備えるカード糸です。試験機関によるデータもそろえていますが、カード糸でありながらサンホーキン並みのソフトさがあるほか、毛羽落ちが少ないのが大きな特徴です。糸の均一性も高く、凹凸が少ないすっきりとした糸です。強度が若干落ちますが、実用上は問題ないレベルです。複数のわたを組み合わせることで、こうした特徴を実現しています。新たな設備は必要なく、現有設備で生産できることも利点と言えます。

――この綿糸を使ったタオルを展開します。

 これまでもタオルを販売していましたが、日用品ということもあってか特色を出すことに苦戦していました。従来タオルは「200回洗濯できる抗菌性」などをうたっていましたが、消費者にはあまり響かず販売も伸び悩みました。その反省を踏まえ、「生乾きの臭いがしない」「毛羽落ちしない」などの分かりやすく、シンプルな魅力を訴求していきます。

――従来にはない売り方も進めます。

 定額で新品のタオルと取り換えるサブスク型のタオル販売です。地方新聞社とその新聞配達店とタッグを組みます。新聞の契約や集金で各戸に訪問する機会が多いと考えたからです。訪問時にサブスク型タオルの販売に加えて、使用済みタオルの回収もするという仕組みです。回収したタオルは反毛したのち、バージンを入れて再度紡績し、エコな綿糸として主に海外向けに販売します。100%当社のタオルですし、トレーサビリティーもしっかりしています。

――IPを活用した販売戦略の狙いは。

 タオルそのものをブランド化するのではなく、既にあるものを活用した方が良いと考え、IPによるライセンスビジネスを展開します。著名な動物写真家である岩合光昭氏が撮影した猫の写真やアニメ作品「ルパン三世」、テレビゲームソフト「デス・ストランディング」などをデザインのモチーフとしたハンカチタオルを販売します。それぞれに根強いファンがいますので、ノベルティーグッズとして売れると考えています。

――今期(2025年12月期)の見通しは。

 厳しい状況が続いており、赤字を見込んでいます。生産拠点である出雲工場はかつて8千、9千コリの生産量がありましたが、輸入品の増加に伴い、今では2千コリほどに落ち込んでいます。ただ、工場の稼働日数を減らすなど生産方法を変えることで製造コストを下げ、2千コリでも利益が出せる体質になりつつあります。余剰人員はIPなどの新しい事業に振り替えるなどして吸収しています。この新しい事業が軌道に乗れば、来期は黒字浮上できると考えています。

――3月から始めた綿の手芸糸「イズモコットンボール」の販売状況は。

 ネット販売が中心ですが、商品によっては品切れになるなど好調です。若い人の間では手芸ブームが起きていますので、その波に乗って逐次商品を増やしていきます。問屋へのアプローチを強化し手芸店向けに販売できたらと考えています。

〈ごはんのお供/毎日晩酌、休肝日なし〉

 「お酒がない食事はおいしくない。ご飯のお供は酒」と断言する武内さん。若い時は相当量飲んでいたが、歳を重ねるごとに酒量は減った。ただ今でも毎日晩酌しており、「休肝日はない」と笑う。奥さんが買ってきたものを飲むが、暑いときはビール、お祝いのときはワインなど、季節やシーンに合わせた種類のお酒をたしなんでいる。武内さんいわく「お酒を飲むと食事が美味しくなるのはアルコールで口の中が奇麗になるから」だとか。

【略歴】

 たけうち・さだつぐ 2004年都築紡績事業管財人。05年から同社(現・KBツヅキ)社長