秋季総合特集Ⅳ(9)/Topインタビュー/カケンテストセンター 理事長 眞鍋 隆 氏/個人と組織、新事業にも/顧客に寄り添う検査機関へ

2025年10月30日 (木曜日)

 2025年度(26年3月期)が最終の中期経営計画を進行中のカケンテストセンター(カケン)。事業収入などの数値目標は達成できる見込みであるほか、新事業の取り組みも着実に進展する。次期中計について眞鍋隆理事長は「基本的な考え方を変える必要はない」としつつ、「顧客に寄り添える検査機関になることが大事」と強調した。

――カケンが独自性を発揮するため、何を磨き、足りない部分は何を補ってきましたか。

 一つは、根幹である試験・検査業務というハード面です。カケンの強みは、長い歴史の中で培ってきた信頼感と顧客が持つ悩みへの対応力にあります。従来から磨いてきましたが、繊維産業の強靭(きょうじん)化を支える黒子として、信頼感と対応力を徹底的に磨き上げていきます。

 実際に顧客から相談を受けるのは、「カケン」という存在ではなく、一人一人の人間(職員)です。信頼感と対応力を磨くためには個々の力の向上が不可欠であり、研修や「カケンアカデミー」を実施しています。高めた個人の力を組織の力として統合することも重要です。個人と組織の両方を磨いています。

――ソフト面ではどうですか。

 カケンには、試験・検査で得られた知見が蓄積されています。この知見を生かして顧客の高品質なモノ作りに貢献していきたいと考えています。コンサルタント的な役割や品質管理への助言は今後ますます重要になってくると予想していますので、磨きを掛けていきたいと思います。

 サステイナビリティーをはじめとする社会の動きに対する貢献も念頭にあります。環境関連や人権に関するものです。環境では温室効果ガス排出量の算定などを実施しています。人権関連では、繊維産業の監査要求事項・評価基準「JASTI」に基づく監査やCSR監査に対応し、実績もできてきました。

――検査機関やカケンの事業を取り巻く環境は。

 ポイントは、コスト高と競争の激化、グローバル販売、気候変動によるニーズの変化の三つです。コスト高に関しては、価格の適正化を要請すると同時に、合理化努力を続けます。他の検査機関との競争は激しさを増しています。カケンに依頼してもらえるよう、付加価値を提供していきます。

 世界市場での販売拡大を志向する顧客もいます。それにはターゲットとする国・地域の法規制や商習慣などの情報は不可欠です。カケンでは、グローバルテクニカルサポート室を通じて情報を提供します。そのほか、気候変動によって遮熱や遮光、UVカットといった試験のニーズが増えており、積極的に応えます。

――25年度上半期(4~9月)の業績は。

 24年度は、23年度を超えましたが、25年度も試験依頼が堅調に入っています。事業収入も前年を上回り、機能性試験の依頼増加が寄与している形です。各国・地域の拠点が堅調に推移しており、ベトナムでは、子会社のMTVカケンベトナムの立ち上げ効果が出ています。

 上半期のトピックスでは、サステナブル経営推進機構(SuMPO)からライフサイクルアセスメント(LCA)算定の検証機関として登録されました。9月に最初の検証を終えています。拡大を志向してきた新規事業の代表的な事例と言え、新しい一歩を踏み出せたと考えています。

――下半期の施策は。

 人材強化のほか、デジタル技術で企業を変革するDXによる試験の高度化・効率化を図っていきます。コンサル事業も拡大できるよう、セミナーや展示会を通じて情報を発信していきます。事業収入は、年間でも昨年を上回れると思っていますが、努力を怠るつもりはありません。

――中計が最終年度です。

 事業収入などの数値目標は達成できる見通しです。LCA算定・検証といった新事業も開始するなど、確実に前進したと評価しています。次期中計ですが、基本的な考えは変えません。今あるニーズだけでなく、顧客にとって次に何が必要にも目を向けられるカケンに成長していきます。

〈ごはんのお供/ヨーグルトを多色で〉

 「家では基本的に米を食べない」と言う眞鍋さん。代わりにヨーグルトを常食しており、「そのお供ならば幾つもある」と話す。色味に合わせて、黒豆(黒)、ブルーベリー(紫)、パイナップル(黄)、クランベリー(赤)、キウイ(緑)など、十種類ほどある。これらの中から5、6種類を選んでヨーグルトに入れて食べている。「なるべく多色で」としたほか、「レンジで40~50秒温めるのが良い」とアドバイスをくれた。

【略歴】

 まなべ・たかし 2003年経済産業省化学課長、05年NEDO総務部長、08年産業技術総合研究所理事、09年経済産業省大臣官房審議官、10年全国中小企業団体中央会専務理事、16年タクマ常務執行役員などを経て、23年10月カケンテストセンター理事長就任