秋季総合特集Ⅳ(10)/Topインタビュー/ボーケン品質評価機構 理事長 吉田 泰教 氏/それぞれの専門性磨く/未来志向の品質価値を提示

2025年10月30日 (木曜日)

 ボーケン品質評価機構は、2019年から事業本部制を導入し、従来の納品前検査を中心とした試験機関から“お客さまと共同で品質保証するパートナー”への転換を進めてきた。吉田泰教理事長は「事業本部制により、それぞれの専門性を磨くことで対象とする分野、市場、サービスの広さと深さを追求する」と話す。

――独自性を発揮するために何を磨くべきでしょうか。

 当機構は2019年から事業本部制を導入し、それぞれの事業本部が専門性を磨くことで“お客さまと共同で品質保証するパートナー”への転換を進めてきました。その中で対象とする分野、市場、サービスも拡大しています。例えば日用品の試験は30年以上の実績がありますが、最近では日本オフィス家具協会(JOIFA)に参画し、オフィス家具関連のJIS(日本産業規格)策定・改正や品質試験にも参入しました。そのほか、子供用玩具試験やサステイナブル支援事業にまで事業領域が広がっています。また、品質パートナー戦略を実行するために“人財”の育成と組織の再整備も進めています。品質、環境、人権それぞれの分野で専門人財の育成に力を入れています。品質支援事業の工場品質管理(QC)監査や認証分析事業の温室効果ガス(GHG)排出量算出などのニーズも高まっており、事業領域の広さだけでなく、深さも追求しています。

――25年度(26年3月期)の状況は。

 グループ全体ではここまで増収増益で推移しています。特に海外事業が堅調です。米中対立を背景に中国が米国向け以外の生産に力を入れる傾向が強まっており、結果的に日本向け繊維製品の生産などが中国に回帰する動きがあります。当機構は中国での試験業務を始めて30年の実績がありますから、試験を現地化する動きに対応できています。ただ、国内の納品前試験が中心の繊維事業は苦戦です。繊維製品の国内生産が一段と減少しているためです。認証分析事業は日本バイオプラスチック協会の認証試験機関として海洋生分解性試験の取り組みを進めています。また、21年に成立した「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」に基づくプラスチック使用製品設計認定の指定検査機関にもなっています。これは資源循環に配慮したプラスチック製品設計を主務大臣が認定する制度です。

――品質支援事業も強化しています。

 工場QC監査も中国で拡大しています。最近は継続的に監査を実施し、結果に基づいて改善策を提案するというコンサルティングまで含めた案件が増えてきました。

――26年度に向けた課題は。

 25年度から新しい中期経営計画がスタートしており、従来の枠を超えた未来志向の品質価値を提案することをテーマに掲げています。変革期における人財と組織の整備を進め、非アパレル分野の拡大、教育支援や品質支援、サステイナブル支援、共同研究開発という四つのソリューション事業を深化させます。

 重点戦略として、“信頼のBOKEN”ブランドの再定義に取り組みます。中立・公正な評価を基盤として、社会全体の安心・安全を支える品質保証のインフラとして存在意義を高めることを目指します。もう一つは「変革」と「挑戦」を組織の文化として進化させること。部門を超えた挑戦に取り組みます。新たにボーケンガーメンテック(旧ユニチカガーメンテック)がグループに加わりましたから、機能性事業を中心に人体生理測定など独自の評価技術の活用にも力を入れます。

 そして、業界連携による「価値の共創」。JOIFAと連携してのオフィス家具分野への参入などはその一例です。「信頼性」と「効率性」を両立する、デジタル技術で企業を変革するDXにも力を入れます。試験データのトレーサビリティー確立や検査プロセスの高度化、顧客との情報連携を強化することで信頼性とスピードを両立します。中国の3法人も連携し、試験センターのスマートラボ化を進めます。四つ目は、専門性の深化による「創造と工夫」。専門性を高め、子供用玩具試験やサステイナブル支援事業の拡充によってお客さまとともに発展することを目指します。

〈ごはんのお供/“お供”いらず〉

 実は実家が兼業農家だという吉田さん。子供のころから米作りも体験している。「米作りの大変さもよく知っている」だけに、今年の米不足にも複雑な思いが。お米が身近にあることがあたり前の環境で育ってきた吉田さんに最もおいしいお米の食べ方を聞くと、「炊き立ての新米で握った、のりも巻かない塩むすび」と即答。お米そのもののおいしさを味わうのに、“お供”はいらない。

【略歴】

 よしだ・やすのり 1991年日本紡績検査協会(現・ボーケン品質評価機構)入所。2009年近畿事業所長、11年東部事業所長、19年6月から理事長兼最高経営責任者