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ひと/大和紡績 社長 野間 靖雅 氏/仕事は勇気

2025年11月07日 (金曜日)

 入社当時、大和紡績は上場企業だった。「私たちの世代でもう一度、あの頃の姿を取り戻したい」と、IPO(新規株式公開)の実現に強い意欲を燃やす。若手の頃には、ヒット商品のTシャツを手掛け、工場をフル稼働させて年間400万枚を供給していたこともある。「街で1日1枚見かければ100万枚売れていると言われた時代」。自社製品が店頭を埋め尽くす光景に胸が躍った。

 最も印象に残るのは、30代に経験した品質トラブルだ。大量返品が発生し途方に暮れていた際、部署の垣根を越えて先輩や後輩が集まり、何日もかけて検品作業を手伝ってくれた。「一人ではない、チームで戦っているのだと実感した」

 最終的に顧客から「よくやった」と評価され、信頼関係をより深めることができた。この経験が「メーカーの強みは、みんなで助け合い、モノ作りを進めていくこと」という信念を育てた。

 仕事の信条は「勇気」。「悪い報告ほど、勇気を持って早く伝えるべき」。誠実に向き合う姿勢こそが信頼を生むと、新入社員にも説いてきた。社長就任後の3カ月間は徹底して顧客や工場を回り、現場の声と期待を肌で感じた。

 歴史小説を愛読し、特に好きな人物は織田信長。革新的な面を評価する。一方で「源氏より平氏の方が好き。滅びの美学に引かれる」とも話す。

 中学まで野球に打ち込んだが、けがで断念。現在は息子たちが出場している試合や、趣味のオリックス・バファローズの試合の応援で熱くなる。バファローズが「負けると機嫌が悪くなる」と社員に指摘され、思わず苦笑する。

 同社の合繊、産業資材、製品テキスタイルの各事業を「3本の矢」に見立てる。「3本の矢それぞれを太くし、確固たる地位を築きたい」。チームワークと勇気を胸に、再び上場企業としての輝きを取り戻す挑戦が始まる。(佑)

 のま・やすまさ 1989年大和紡績(現ダイワボウホールディングス)入社。2016年ダイワボウノイ取締役、19年同社常務、21年大和紡績産業資材事業本部副本部長、23年経営企画室長、24年取締役を経て、25年6月社長に就任。60歳。