特集 北陸ヤーンフェア2025(3)/東レ/東洋紡せんい/帝人フロンティア/御幸毛織

2025年11月13日 (木曜日)

〈優位性持つ糸をシリーズ化/海外でも高付加価値糸拡大/東レ〉

 東レは独自のポリマー技術や複合紡糸技術によって生産する高付加価値品をそろえるファイバーシリーズ「Toray Premium GOUSEN select」(トーレ・プレミアム・ゴーセン・セレクト)を紹介する。10月に発表したコンセプトブランドで、現在は「ギガダル」「スプリングフィット」「キュープ」「ライティグラム」「シルックシルデュー」の5商品をラインアップしている。

 ギガダルは、高い防透け性、紫外線遮蔽(しゃへい)、汗染み抑制の機能を兼ね備え、猛暑対策としても引き合いが増えている。セラミック粒子を超高濃度に含有し、特殊断面構造にして、物理特性を維持しながら高い機能性を実現している。

 スプリングフィットは、環境配慮型のストレッチ糸。2種類のポリマーをコンジュゲートした独自の複合紡糸技術により、ポリエステル、ナイロンとも高いストレッチ性とキックバック性、高耐久性を実現している。

 キュープは高吸放湿性ナイロンとして長く展開している商品で、近年は海外でも注目が高まっている。湿気を吸って放出する際に冷却効果をもたらす「放湿冷却」素材としても注目されている。

 ライティグラムは11デシテックス以下の極細ナイロンで、北陸産地でも薄地高密度織物用などで多く使われている。

 日本で生産する糸は、今後も技術を進化させながらさらなる高付加価値化を進めていく。

 優位性を持つ糸を海外市場にも拡販していく考えで、北陸に高付加価値糸を供給していくことで産地企業の差別化の助力になるとともに、テキスタイルの部署にもつなげながら拡大を狙う。

〈ナイロンの新商品を紹介/高級原料の長短複合糸も/東洋紡せんい〉

 東洋紡せんいはマテリアル事業部が展開する合繊や天然繊維使いの差別化糸を幅広く紹介する。ナイロンでは新たに開発したマイクロファイバーの加工糸、紡績糸では高級原料を使った長短複合糸などを展示する。

 ナイロンでは、超ハイマルチのナイロン仮撚り加工糸「シルファインLXT」を新たに提案する。44T×96Fのスーパーブライトナイロン加工糸で、柔らかな風合いや上品な光沢感などが特徴。バージン品だけでなくケミカルリサイクル品もそろえる。

 要望の高まりを受け、コアスパンヤーンを「東洋紡コアスパンヤーン」として改めて訴求する。日本、マレーシア、インドで生産する。

 原糸販売Gの商品では、高級原料使いの長短複合糸シリーズ「ネイチャーブリッジマナード」、冷感素材「すーぱーツベタイン」、常圧カチオン可染ポリエステル糸「カラファイン」などを紹介する。カラファインは長繊維、短繊維ともそろえる。

 ネイチャーブリッジマナードは御幸毛織と共同で展開している商品群。今回は特に北陸のテキスタイルメーカーに焦点を当てた展示とし、天然繊維の特徴を出しながら扱いやすさも向上させた提案を行う。

 マナードの長繊維と短繊維を均一に混ぜる技術により強度や防縮性、防シワ性などを持たせることで、高級天然繊維原料も扱いやすくなる。会場では、リサイクルナイロン「ループロン」と組み合わせたシルクや超長綿使い、リサイクルポリエステルと組み合わせたリネン使いなどを紹介する。

 シルク糸は80番手(綿番手)、リネン糸60番手(同)など細番手糸もそろえる。

〈猛暑対策で新商品/天然繊維調も充実/帝人フロンティア〉

 帝人フロンティアは、「猛暑対策」「天然繊維調」「エコペット」の三つの切り口で独自の糸を提案する。猛暑対策では新商品を紹介する予定で、天然繊維調合繊素材は長繊維だけでなく紡績糸も含めて幅を広げている。

 猛暑対策素材は今春夏向けでも展開し、遮熱・遮光などの機能を持つ「涼しや」がカーテンだけでなく一般衣料用途にも広がるなど堅調に推移した。来春夏向けでは商品幅を広げる考えで、今回展では汗染み防止、UVカット、防透性を兼ね備える新商品を紹介する。

 紡糸や延伸技術で天然繊維のような外観を持たせたポリエステル糸の提案も充実させる。イージーケア性と感性を兼ね備えての提案で、梳毛調ストレッチ素材「トリクシオン」、ランダムな太さの特殊異型断面糸により天然繊維調質感と機能性を両立させた「シフォラ」などを紹介する。

 長繊維だけでなく紡績糸の提案も拡充し、特殊二重構造の紡績糸「マーフィル」を提案する。紡績糸の展開はこれまでTシャツなど丸編み用を中心に伸ばしてきたが、今回展では織物のサンプルも紹介し、提案の幅を広げる。

 30周年を迎えた再生ポリエステル「エコペット」は、特殊異形断面糸なども紹介して改めて糸の技術を訴求する。足元では欧米のスポーツ・アウトドア用途などで浸透し、資材用途などでも採用が広がっており、今後のさらなる拡大を狙う。

〈マナード薄地織物訴求/ウール50%で外観は合繊/御幸毛織〉

 御幸毛織は今回、東洋紡せんいと共同出展し、長短複合糸「マナード」を軸にウールの魅力を訴求する。今回展ではウールとナイロンを組み合わせたマナードのさらなる細番手化を実現し、薄地織物にしてブースで紹介する。

 東洋紡せんいのリサイクルナイロン「ループロン」と組み合わせたマナードを使い、ウール50%・ナイロン50%混の薄地織物を開発した。

 ループロン使いのマナードはこれまでニットが先行していたが、今回は長繊維を扱う製織工場に向けてスポーツ・アウトドア用途に使える薄地織物を開発した。

 ナイロンを経糸に、マナードの100番手、130番手(ともに毛番手)を緯糸に使う。ウール50%の混率だが、織物外観はウール使いに見えず合繊ライクに仕上げた。マナードの糸売りが主体だが、ブースでは薄地織物にして展示して特徴を分かりやすく伝える。

 このほか、ウールとトリアセテートを組み合わせたマナードなどを紹介するほか、羽織や袴などマナード使いの和装品も展示する。

 同社は尾州産地向けが主力だが、ウールを広げていく上で北陸を重視する。足元ではインナーやアウターなどで引き合いが増えているが、今後はスポーツやアウトドアなども含めて注力。用途ごとに応じた糸づくりを進めながら販売拡大を狙う。