特集 北陸ヤーンフェア2025(4)/出展者の見どころ/旭化成アドバンス/ヤギ/シキボウ/新内外綿
2025年11月13日 (木曜日)
〈ベンベルグを初出展/ジアセとともに訴求/旭化成アドバンス〉
旭化成アドバンスは昨年に続いてファイバー課とFTYマテリアル課が出展する。これまではジアセテート「ナイア」を中心に紹介してきたが、今回はキュプラ繊維「ベンベルグ」を加えて展示する。両課とも糸加工で付加価値を高めた商品を中心に紹介する。
旭化成のベンベルグ工場(宮崎県延岡市)は火災からの復旧を進めてきた。これまでは3分の2ほどの生産量だったが、来年1月からほぼ火災前の水準に戻ることから、今回展でも改めて訴求する。
ファイバー課では、ベンベルグ使いで展開する長繊維での糸バリエーションを紹介するほか、ウール混やシルク混などの紡績糸なども訴求する。ナイアは複合でニットでも扱いやすくした商品を提案する。ジアセテート70%使いを中心にナイロンとの組み合わせや、ポリエステルとの組み合わせで吸放湿速乾を出した商品などを紹介する。
FTY課は、撚糸技術を生かした提案に力を入れ、カバーリング糸やエアカバーなどバリエーションをそろえて展示する。現在はパンストやタイツ以外の用途開拓に注力しており、昨年展ではナイア×PTT繊維などアウター用途への提案が好評を得た。引き続きレッグ関連以外の用途開拓に力を入れる考えで、今回展では糸だけでなく生地にしての展示も増やすなど特徴が分かりやすい形にして提案する。
〈「ユナ・イト」大々的に/産地との協業体制訴求/ヤギ〉
ヤギは今回展で、環境配慮型素材の統一ブランド「UNITO」(ユナ・イト)を大々的に打ち出す。
ユナ・イトは、「サステナぶらないサステナブル」をコンセプトに、独自のトレーサビリティーシステム「コットンiD」も絡ませたオーガニック綿糸「ユナ・イト オーガニック」、再生コットン100%使いの「ユナ・イト リサイクル100」、北陸産地の糸加工技術と再生ポリエステル、同ナイロンを組み合わせた「ユナ・イト ポリエステル」と「ユナ・イト ナイロン」、UVカット、速乾、透け抑制という三つの機能を基本とした再生ポリエステル紡績糸「ユナ・イト プラス」――の五つで展開する。
前回展ではこのうちポリエステルとナイロンのみを展示したが、今回は5ブランド全てを出す。産地や素材の垣根が薄まる中、「合繊に限定する必要はない」と判断した。新商品として、リネンライクな再生ポリエステル「LINAIR」(リンエアー)も提案する。
同社は同展を「糸をPRできる貴重な場」と位置付けており、産地で生産した織り・編み地も展示し、北陸産地との協業体制をアピールする。
ポリ乳酸(PLA)繊維「PlaX」(プラックス)も展示訴求する。
〈国内開発力で差別化/調温機能糸など新提案/シキボウ〉
シキボウの原糸販売は、富山工場(富山市)で開発した独自糸を軸に、特殊原料と綿を組み合わせた多彩な素材を提案する。“国内開発”ならではの対応力を生かし、高度化する顧客ニーズに応える。
今回展では、調温機能を備えた新商品を披露する。芯に特殊ポリエステル、鞘に綿を配した長短複合糸で、寒い時には暖かく、暑い時には涼しさが持続する。インナー向けを中心に提案し、季節を問わず快適性を高める。光沢のある連続シルケット糸「フィスコ」や、テンセルと綿を組み合わせた滑らかな風合いの糸など、質感にこだわった糸もそろえる。
環境配慮型素材も拡充する。芯にポリエステル長繊維を用い、和紙を巻き付けた糸は、独特のシャリ感を持ち、Tシャツや靴下用途への採用を見込む。新内外綿とは、パイナップルの葉と綿をブレンドした糸を打ち出し、サステイナブル素材の可能性を広げる。
国際認証の取得にも力を入れ、先月にはオーガニック繊維に関する国際認証「GOTS」と、リサイクル素材に関する「GRS」を取得した。国内に加え、ベトナムの販売子会社シキボウベトナムや、インドネシアの紡織・加工子会社メルテックスも同認証を取得しており、環境配慮型素材をグローバルに展開できる体制を整えた。国内外で多彩な糸作りができる生産体制を強みに、新規販路を開拓する。
〈杢糸の進化提案/再生綿で新たな表現/新内外綿〉
新内外綿は、親会社のシキボウと共同出展し、2026年向けに開発した新作杢(もく)糸を披露する。3種の新商品を丸編み地で前面に打ち出し、質感と環境配慮の両面から訴求する。
新作の一つは、キュプラや光沢のあるポリエステルを綿と混紡した上質な杢糸。「カジュアルでもフォーマルでもない」ちょうど良いバランスを追求した。定番の「GR7」「GR1」カラーで、30~40番単糸を展開する。
二つ目は、トレース可能な製品をわたに戻したリサイクルカシミヤを活用し、新たな風合いを生み出した新商材。綿90%・カシミヤ10%混の30番単糸で、杢と生成り色をそろえる。最後の杢糸は、生機C反などの廃棄素材から作られる反毛わた50%と綿を混紡した。渦流紡績によりほこりが出にくく、反毛わた高混率を実現している。20番単糸を中心に杢と生成り色を用意する。
シキボウとの共同企画も進化した。「フィスコ×アートコット」は、同社の生地染めで杢調を表現できるカチオン可綿混糸「アートコット」に、シキボウの連続シルケット加工を施し、光沢感を持たせた。シキボウの特殊紡績法による毛羽コントロール糸「ふわポップ」と杢糸の組み合わせも披露する。
環境対応にも力を入れ、このほどサステイナブル素材に特化した見本帳の展開を始めた。パイナップルの葉や竹、ヘンプ、葦(ヨシ)と綿の混紡糸などを収録し、新たな需要を掘り起こす。





