別冊ユニフォーム(4)/ワークウエア/拡大基調さらに鮮明に
2025年11月14日 (金曜日)
2025年のワークウエア業界の市況は、市場の拡大基調がさらに鮮明になってきた。夏の暑さと熱中症対策義務化を受けて、暑熱対策ウエアが業績を押し上げた。好調な業績を受けて、メーカーと販売企業は共に備蓄強化などの積極的戦略にかじを切る。拡大を維持するため、潜在需要の顕在化を目指す取り組みも活発化した。
〈熱中症対策義務化が追い風〉
ワークウエア業界の市場が拡大する原動力となっているのが、電動ファン(EF)付きウエアやアイスベスト、ペルチェ素子式ウエアなどの暑熱対策ウエアだ。6~8月の平均気温は、これまで最も高かった過去2年を超える観測史上最高に達した。加えて、6月に施行された熱中症対策の罰則付き義務化の追い風を受けて業績を伸ばすメーカーが大勢を占めた。熱中症対策の主流となったEFウエアは、多くのメーカーで7月にはほぼ完売となる売れ行きで、業績を押し上げた。
業績好調を受けて、供給体制の強化を狙った積極的な設備投資も実施された。バートル(広島県府中市)は、今年から稼働を始めた物流倉庫「キャンプバートル」に続いて、ベトナムに新設した第3工場を9月から稼働させた。コーコス信岡(同福山市)も本社工場を刷新、生産関連部署を集約しモノ作りを一元管理することで品質の向上を目指す。
一方で、夏に偏重する業績の是正は道半ばだ。各メーカーは、通年需要が見込める商品開発に注力し、打開策を模索する。
アイトス(大阪市中央区)は、ユニフォームでは「業界初」となる易リサイクル設計に対応した新商品を発表した。CUC(岡山県倉敷市)は、高視認などで作業者の安全性を確保することに焦点を当てた幅広い製品を展開する。
村上被服(府中市)は、各種基準にも適合する幅広い製品構成の難燃作業服をラインアップする。端境期商材を拡販するシンメン(同)、多ブランド戦略で各分野の需要を捉える桑和(倉敷市)など、各社が多角的な手法で業績偏重の是正に挑む。
〈インフレで備蓄に価値〉
デフレ下では、次の期に持ち越した商品は価値が下がり不良在庫となったが、原材料価格が上がり続けるインフレ下では新たに製造した商品は価格が高くなる傾向にあり、値上げ前の持ち越し備蓄の価値は損なわれない。デフレからインフレに移行しつつある現在では、備蓄に価値が生まれることになりそうだ。
一部メーカーはインフレを機に、来期持ち越しのリスクがありながら、備蓄を厚く構え欠品を防ぐ体制を敷く。ジーベック(福山市)は、晩夏までEFウエアを備蓄。欠品を防ぐ供給体制で今夏はEFウエアの販売点数を大幅に伸ばした。ビッグボーン商事(同)も高い販売実績のある5種のセットアップに商品展開を絞り込み、厚い備蓄を積む。
ユニフォーム販売企業でも、自社の物流センターを構えて自社で備蓄をしたことで業績を伸ばしたユニフォームネクストに追随して、早い段階から欠品に陥るEFウエアの在庫を確保する動きが見られた。
自社で独自の商品を開発することに重きを置く販売企業も増えた。HARADA(山口県防府市)は、別注を主体としたオーダーユニフォームカンパニー事業で、短期間で別注を形にできる「パターンオーダー」を立ち上げた。
九州ワーク(長崎県佐世保市)は、納所佳民社長の発案で、東レとTSデザイン(福山市)と共同で開発したセットアップを25春夏に独占販売した。
〈潜在需要の顕在化狙う〉
アタックベース(福山市)は、ワークウエア以外を主力とする販売代理店でも、EFウエアやペルチェ素子式ウエア、水冷式ウエアを取り扱い品目に加える動きが加速している点に着目。既存顧客とは異なる潜在需要の顕在化を狙い異業種向け展示会に出展する。
海外の潜在需要を探る動きも本格化しそうだ。このほどドイツのデュッセルドルフで開かれた世界最大規模の労働安全・衛生分野の見本市「A+A2025国際労働安全衛生展」にEFウエア「エアークラフト」を展開するバートルとデバイスを開発製造する京セラインダストリアルツールズ(福山市)が出展。Asahicho(府中市)もアシストスーツ「イージーアップ」で海外市場進出の糸口をつかもうとする。





