別冊ユニフォーム(7)/暑熱対策ウエア/気温35℃以上の需要捉える
2025年11月14日 (金曜日)
電動ファン(EF)付きウエアは熱中症対策に有効なアイテムとして市場に浸透し、社会インフラへと成長しつつある。その一方で、気温が35℃を超えた場合は、EFウエアだけでは冷却効果が不十分となる。そこで登場したのが、ペルチェ素子式ウエアやアイスベスト、水冷式ウエアだ。EFウエアに上乗せして販売できる商品として客単価向上にも寄与する。
〈ペルチェ式ウエア〉
25春夏は、多くのメーカーがペルチェ素子式ウエアの販売に乗り出した。メーカー出荷金額に基づく市場規模は、2024年の約18・5億円から34・5億円に伸びたと推計される。
今年は、ユーザーの声を反映して欠点を解消した新商品が登場。皮膚の感覚がまひして冷却効果を感じにくい欠点を解消するため、多くの機種でゆらぎモードが搭載された。
冷却素子の数や位置、いかに体に密着させるかなどさまざまな改良が施され、事業所納入向けを中心に販売が好調だった。
EFウエアや水冷式、アシストスーツと組み合わせた複合型も登場し、市場を活性化させた。EFウエアに上乗せして販売できる商品として客単価向上を狙う販売店から引き合いがあった。
ただし、バートル(広島県府中市)が販売した「アイスクラフト」は納期遅延などの影響で流通在庫が残る結果となった。持ち越して販売するため、来年の販売に影響を与えそうだ。
〈アイスベスト〉
アイスベストは35℃を超える外気温の中で、EFウエアの効果を出すための補助的なウエアとして、18年ごろから商品化が進んだ。
EFウエアやペルチェ式ウエアなどの暑熱対策ウエアの中では比較的、安価でバッテリーを持つわずらわしさもないことから、アイスベスト単体で着用するケースも増えていた。
クロダルマ(府中市)やジーベック(福山市)は、大容量で持続時間が長い保冷剤を併せて発売した。EFウエアに保冷剤ポケットを配置するデザインはAsahicho(府中市)のほか、シンメン(同)、寅壱(岡山県倉敷市)なども投入。アイトス(大阪市中央区)やコーコス信岡(福山市)、ジーベック、シンメンなどは保冷剤を持ち運べるケースやバッグなども商品化し、1日中アイスベストを使いたいワーカーの要望に応える。
〈水冷式ウエア〉
粉塵やスパッタ(溶接金属飛沫〈ひまつ〉)が発生するため、EFウエアが使えない業種では、水冷式ウエアに根強い需要がある。
CUC(倉敷市)は、視認性の高いハイビズカラーの蛍光イエローや蛍光オレンジの水冷式ウエアを上市した。作業者の安全を守る観点からハイビズカラーのアイテムを拡充しており、統一感のあるアイテムでコーディネートできる。事業所納入向けで販売を伸ばした。
ビッグボーン商事(福山市)は、水の気化熱冷却を利用して熱中症を防ぐ「アクアテック」シリーズを改良して発売した。バッテリーが不要で、EFウエアのインナーに適している。新作は、通気口を開け、透湿性の高い裏地を採用することで蒸れ感を軽減した。カラーは、白衣の下に着用しても色が透けにくいグレーや視認性の高い蛍光イエローを追加した。
〈アシストスーツ〉
さまざまな分野で人手不足が深刻化していることを受けて、一人当たりの業務が増える労働者の負担を軽減するため、アシストスーツ(AS)を導入する事例も増えてきた。ゴムやばねを利用した無動力型が主流の日本では、ペルチェやカスタマイズ性の高さなどで高付加価値化を図る開発が進む。
アトリエケー(兵庫県姫路市)は、無動力型AS「タスケル」にペルチェを装着した「タスケルWI(ウィー)」を発売した。追加分もほぼ完売となる売れ行きで、来期に向けた開発も進めている。
冷却部分は一つで自由な位置に取り付けできる。バッテリーは別売りで、汎用(はんよう)モバイルバッテリーを使用できる。冷却部分は、環境温度から最大25℃低くなる。冷暖兼用で通年使用できる。
クラボウは、サポーター一体型タイプのアシストスーツ「CBW」の販路を広げている。独自構造によって作業時に多い前傾姿勢や持ち上げ姿勢時の腰・膝部分のパンツの突っ張り感を軽減。コーポレートカラーや、現場に合わせた機能性のある生地、デザイン、仕様といったカスタマイズ提案もできる。幅広い用途に向けて高通気、防炎、撥水(はっすい)、防汚、消臭など機能性を持った生地の提案も可能で素材メーカーならではの強みを発揮した別注が増えつつある。





