別冊ユニフォーム(20)/“着る快適”を支える素材力

2025年11月14日 (金曜日)

 ユニフォーム市場では、高機能素材の開発が一段と進んでいる。メーカー各社は基本性能をさらに高めるとともに、環境対応素材の導入も加速。快適性と耐久性、サステイナビリティーを兼ね備えた高付加価値素材で、次代のユニフォーム需要を開拓している。

〈東レ/猛暑対応の開発加速〉

 東レは、夏の長期化を新たな商機と捉え、暑熱対策素材の開発を強化している。10~11月に開いた「東レユニフォーム総合展」では、独自の仮撚り糸による清涼素材「シャミラン」をリブランディングし、夏の主力素材として前面に打ち出した。

 シャミランは麻のようなシャリ感を持ち、糸の凹凸が生地に隙間を作ることで高い通気性、吸水速乾性、肌離れ性を実現する。従来の織物に加え、今回から編み地も展開し、快適性を高めた。ワーキングからオフィスウエアまで多様な分野に提案する。

 暑熱対策では、汗染み防止素材の開発にも注力する。特殊セラミックを練り込んだポリエステル糸と生地組織により汗染みを目立ちにくくし、UVカットや防透け、接触冷感機能も併せ持つ。織物と編み地に対応し、提案の幅を広げる。

 摩擦による白化を防ぐ、独自の複合紡糸技術「ナノデザイン」を用いた新素材も披露した。耐久性を高め、ユニフォームをより長持ちさせる。主力のストレッチ素材「ライトフィックス」では、ダブル組織で肉厚ながら、軽量性と高い物性を両立した「ライトフィックスD」が注目を集めた。

 多様なニーズに応える素材開発を通じ、提案力を一層高めていく。

〈東洋紡せんい/両輪で収益力を高める〉

 東洋紡せんいのユニフォーム事業は、高機能素材の拡販と製品OEM体制の強化を両輪に、収益構造の転換を進めている。前期(2025年3月期)の大型別注の反動で上半期(4~9月)は減収となったものの、採算性の高い素材へのシフトや価格改定の浸透により、増益を確保した。売り上げの構成では、リードタイムが短く在庫効率に優れるニット素材の比率が2~3割に上昇した。

 販売をけん引しているのは、物性面で織物に近い編み地「コンフォネックス」。スポーツ向け素材「スクラムテック」を転用したもので、縦横50%以上の高いストレッチ性とスナッグ・ピリング耐性を兼ね備える。今期(26年3月期)は前期比1・5倍の販売を見込むなど好調に推移。一方、織物では工業洗濯対応の「オールフレックス」が食品・医療分野向けで堅調に伸ばす。これらの差別化素材は売上比率で事業全体の約4割を占めるまでに拡大している。

 また、縫製が難しい高伸縮生地に対応するため、ベトナムの自社工場・東洋紡ビンズンを中核とした製品OEMを強化。生地供給から縫製までを一貫管理し、監査対応を含めた品質体制を整備した。

 下半期は高付加価値素材の拡販とサプライチェーンの最適化を軸に事業を推進。来年2月の「VIATT」出展を通じ、素材開発力と生産背景を一体化した提案を強める。

〈帝人フロンティア/暑熱対策や循環提案で〉

 帝人フロンティアは、暑熱対策や環境対応といった時代のニーズを捉え、差別化素材の展開を加速させている。「糸や構造体で差別化してきた」戦略の下、快適性と機能性を両立した素材の販売を拡大する。

 上半期(4~9月)は、ワーキング向けに暑熱対策素材の販売が好調に推移した。高通気とストレッチ性を併せ持つ織物「エアーインプレッション」は、通気性に加えて上着にもボトムにも使える耐久性が評価され、販売が拡大した。スポーツ分野の技術を応用した素材開発も進め、汗染みを目立たなくする編み地「デュアルファイン」は、接客を伴う現場のニーズを捉えている。ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維「ソロテックス」も堅調だった。

 オフィス向けでは、梳毛調ポリエステル織物「トリクシオン」が好評で、ファッション部門にも波及している。メディカル白衣向けに防透け素材とソロテックスを組み合わせるなど、付加価値の高い提案を広げる。

 同社は環境対応を全社の柱に据え、リサイクルポリエステル繊維「エコペット」は今年で30周年を迎えた。佐川急便、ミズノと連携した「資源循環スキーム」の試験運用が着実に進むなど、社外との連携が拡大している。今後もユニフォーム市場に向け、資源循環型の提案を一段と加速させる。

〈日清紡テキスタイル/消臭、難燃など開発多彩に〉

 日清紡テキスタイルは、ユニフォーム用途に向けて高機能素材の拡充を進めている。上半期(1~6月)は糸や織り組織の工夫による高通気・ストレッチ素材「エアリーウェーブ」や、綿100%でありながら20%以上のストレッチ性を持つ織物「アスタリスク バイ ナチュレッシュ」などの差別化素材の販売を伸ばし、増益・利益改善が進んだ。

 特に通気性とストレッチ性を両立した素材の採用が拡大し、定番品からの置き換えも進んでいる。インドネシアでは広幅織機の増設を計画。差別化素材の供給に対応できる体制を強める。

 新たに開発した消臭後加工「ナノフレッシュ」シリーズは、汗由来のアンモニア臭に特化したタイプと、イソ吉草酸・酢酸にも対応する「ナノフレッシュ―S」の2種を展開。従来のバインダー方式ではなく、繊維と消臭成分を化学的に結合させることで、高い洗濯耐久性を実現した。工業洗濯50回後でも効果が持続し、ワークウエアや電動ファン付きウエアのインナー用途などに提案を強める。

 自己消火性を持つ難燃素材「スペリエンス」も開発。カネカのモダクリル系難燃繊維「プロテックス」と綿を組み合わせることで、快適な着心地と難燃性能の両立を図る。細分化するニーズを捉えながら拡販に取り組む。