合繊メーカー4~9月期決算 米国関税政策が影響

2025年11月17日 (月曜日)

 合繊メーカーの2025年4~9月期決算は、まだら模様となっている。これまで好調に推移してきた企業は、米国の関税政策の影響などで伸び悩む一方、繊維事業を中心に構造改革を進めている企業では収益改善などの成果が出ている。

 東レの繊維事業は減収ながら増益となった。衣料用途は総じて堅調に推移。産業用途は自動車向けなどの市況が本格回復には至らなかった。そうした中、コスト削減に努めたことで増益を確保している。一方、炭素繊維複合材料事業は減収減益。航空宇宙用途は実需回復基調にあるものの、流通在庫の調整が続いている。一般産業用途は圧力容器用途が調整局面となった。

 帝人は繊維・製品事業は減収減益。衣料繊維では中国向け生地販売が前期にあった前倒し出荷によって減少したが、北米向け生地や国内向け生地・製品は堅調。産業資材も水処理向けポリエステル短繊維や生活資材が好調を維持する。今後の拡販のための費用が増加したため、利益が減少した。一方、マテリアル事業は営業赤字となった。アラミド繊維での大型の定期修繕が影響した。ただ、アラミド繊維と炭素繊維はともに構造改革が進み、収益性は改善している。

 旭化成のマテリアル事業は減収減益。うち繊維関連を含むカーインテリア事業とコンフォートライフ事業ともに減収減益だった。カーインテリア事業は欧州を中心に販売量が増加したが、円高の影響や販管費の増加が収益を押し下げた。コンフォートライフ事業では、キュプラ繊維「ベンベルグ」がインド市場での他素材との競争激化により、販売量が減少。ポリウレタン弾性糸「ロイカ」も需要減退に加えて米国の関税政策の影響で荷動きが鈍った。

 東洋紡では環境・機能材事業が減収減益だが、不織布マテリアルは国内生産体制見直しで収益性が改善している。また、機能繊維・商事事業は減収ながら大幅増益と、順調に構造改革が進む。中東向け生地輸出が好調で、スポーツも国内生産体制の集約を進めた。エアバッグ用基布は日系顧客の減産の影響を受けた。

 事業再生計画に取り組むユニチカは機能資材事業、繊維事業ともに価格改定などの効果で収益が改善した。繊維事業の事業譲渡先もほぼ決まり、全社ベースでも収益改善が進んでいる。

 1~6月期のため直接比較できないが、クラレのトレーディング事業は増収増益と好調。スポーツ・アウトドア分野の好調が続く。一方、繊維事業は営業赤字。人工皮革「クラリーノ」はラグジュアリーや自動車用途の販売が減少した。繊維資材も欧州の建材用途の市況低迷の影響が続いている。