特集 人工皮革/独自の価値を創出/クラレ/帝人コードレ/東レ
2025年11月20日 (木曜日)
さまざまな用途で採用が進む人工皮革。いまや天然皮革の単なる代替品と位置付ける時代は終わった。天然皮革にはない機能、新製法や原料変更による環境負荷低減など、人工皮革独自の価値の創出が加速する。
〈拡大するCATS/100周年で「クラリーノ」進化/クラレ〉
クラレは、人工皮革「クラリーノ」の環境配慮対応を強化している。環境負荷の小さい新製法「クラリーノ・アドバンスド・テクノロジー・システムズ」(CATS)で生産するタイプの採用拡大が続く。同社は2026年に創立100周年を迎える。クラリーノも環境配慮型原料への切り替えを進めるなど、節目の年にさらなる進化を遂げることになる。
25年度(12月期)は、自動車内装材用途が、これまで人工皮革の需要をけん引していた電気自動車(EV)の生産拡大がやや鈍化したことで勢いがない。高級バッグやハイブランド宝飾品の店頭什器(じゅうき)などラグジュアリー分野も動意を欠く。景気の伸び悩みから中国市場でラグジュアリーブランドの販売が伸び悩んでいることが背景にある。
一方、主力のシューズ用途は好調が続く。特にアスレチックがけん引する。シューズ用途で採用の拡大が続いているのがCATSで製造したタイプだ。CATSは従来製法と比較して温室効果ガス(GHG)、水使用量が削減でき、水系ウレタンを使用するため有機溶剤の使用量も事実上ゼロ。こうした特長がハイエンドゾーンで評価されている。
26年度は、自動車内装材用途が流通在庫の整理が進むことで緩やかに回復に向かうと見る。ラグジュアリー用途は厳しい市況が続く可能性が高いが、低環境負荷タイプで需要の掘り起こしを進める。シューズ用途はアスレチックに加えてタウンユースでの採用ブランド拡大を目指す。また、研磨材など工業用の拡大にも取り組む。
こうした取り組みを進めるために、低環境負荷のための施策にも力を入れる。原料のポリエステル繊維は26年度中に全てリサイクルポリエステル繊維に置き換える計画。ナイロン繊維に関しても将来的に低環境負荷タイプ原料への切り替えを進める考えだ。
同社は来年6月で創立100周年を迎える。節目の年にクラリーノもさらなる進化を目指す。
〈W杯契機に積極提案/下半期から設備投資も/帝人コードレ〉
帝人フロンティアグループの帝人コードレは、2026年にサッカーワールドカップ(W杯)が開催されるのを契機に、主力のスポーツシューズ用途で積極的な提案を進める。また、新規用途開拓にも取り組む。
25年度上半期(4~9月期)は、前年度好調の反動もあって販売量はやや低調に推移した。流通在庫が増加していることに加え、米国の関税政策の影響で中国向けの販売が減少している。また、スポーツシューズ用途は、シューズメーカーが来年のサッカーW杯への企画に向けた端境期にあることも影響した。一方、ハンドルやシフトノブなど自動車用途は安定している。ランドセル用途は少子化の影響で減少傾向が続く。
ここにきて26年のW杯に向けてシューズブランドの企画が本格化した。同社ではW杯を契機に積極的な提案を進めており、既に採用案件も堅調に確保しているもようだ。
また、製造設備の老朽化が進んでいることから、25年度下半期から26年度にかけて修繕・更新など設備投資を積極的に進める。また、雑貨など新規用途の開拓にも力を入れる。地域社会とのコミュニケーションを重視し、人材確保に努めるなど生産基盤を強化する。
環境配慮の取り組みも重視。既に原料のポリエステル繊維は、ほぼリサイクル品に置き換えが済んだ。生産プロセスの改良などによって有機溶剤使用量の削減にも取り組んでいる。
〈用途開拓に注力/衣料、インテリアも堅調/東レ〉
東レは、人工皮革「ウルトラスエード」で新規用途開拓に力を入れる。既存用途に関しても、これまで需要をけん引した自動車内装材に加え、底堅い販売が続いている衣料やインテリア用途に向けてマーケティングを強化する。
2025年度上半期(4~9月期)は、自動車内装材用途の勢いが鈍化した。販売を牽引していた電気自動車(EV)は中国市場を中心に競争激化で中・低グレード車種の生産比率が高まっており、人工皮革を採用する高級グレード車の生産が伸び悩んでいるためだ。ただ、ガソリン車での採用は堅調を維持している。
一方、衣料用途はブランドに安定的に採用されるなど底堅い。インテリア用途も好調だ。家具のほか、店舗内装材もインバウンドを背景に需要が増加した。コンシューマーエレクトロニクスも採用案件が増えており、パナソニックの電動シェーバー「ラムダッシュ」の同社シェーバー事業70周年記念モデルに採用されるなどアイテムも広がった。
今後は新規用途開拓に力を入れる。厚みや目付の自由度が高いという特徴を生かし、フェルト代替などを狙う。既存用途の需要掘り起こしも進め、マーケティングを強化する。衣料用途はデザイナーズブランドへの提案で認知度を高める。テキスタイル展示会「東京テキスタイルスコープ」(TTS)でも重点的に打ちだした。
環境負荷低減に向けて原料にリサイクルポリエステルやバイオ由来原料ポリエステルを積極的に導入する。リサイクル原料も現在はプレコンシューマー型リサイクル原料を利用するが、今後はポストコンシューマー型リサイクル原料の利用も検討する。





