繊維機械のトレンド射貫く ITMAアジア+CITMEシンガポール③

2025年11月27日 (木曜日)

デジタルの活用が進展

 村田機械は改めてユーザーとの関係強化を重視し、「ムラテック ライフサイクルサポート」として、深く長く取り組むことでユーザーの競争力を引き上げていく提案に力を入れた。ブースでは自動ワインダーの最新機種「AIcone」(アイコン)と渦流精紡機「ボルテックス 870EX」を展示したが、機械の販売にとどまらず、技術サポートなどを含めて同社の強みを総合的に訴求した。

 パンフレットなども用意し、改めて顧客との関係強化を図る姿勢を打ち出した。具体的には導入サポートから保守管理、稼働効率アドバイス、BCP(事業継続計画)対応、設備や機器のアップグレード、レトロフィットなど事業運営に関わる全てのフェーズで深く取り組んで、顧客の競争力向上に貢献していく。

 その一つの手段として「MSS」(ムラテック・スマート・サポート)を紹介した。MSSはオンラインでつながって異常監視や予防保全など製造現場を支援するサービスとして広がっており、既に世界の1200社以上に導入されている。今回展ではMSSでできることの紹介だけでなく、工場の効率化や稼働率向上など「現場の競争力につながる」点を改めて訴求した。

 展示した機種でもデジタル技術の活用が進んでおり、アイコンでは、豊田自動織機の子会社であるウスターテクノロジーズ(スイス)との協業で実現した、毛羽の状況を見ながら巻き取り速度を自動調整する機能も紹介した。

 豊田自動織機は、リング精紡機「RX300」とエアジェット織機「JAT910」の実機を展示した。精紡機ではレーヨンへの対応など汎用(はんよう)性を広げた新型コンパクトシステムを搭載して紹介した。

 JAT910では、ウスターテクノロジーズの製織監査システム「Q―バー2」を付けての実演を行った。織機のリードの上部に付けて製織状況を監視する装置で、欠陥を検出するとアラームや生産停止で対応する。JAT910は、織幅内で緯入れ状況を検知する「iセンサー」を搭載し、最適な緯入れ設定条件の算出や稼働率向上を支援する機能を持つが、Q―バー2により経糸での支援も可能となる。

 TMTマシナリーは、延伸仮撚り機の次世代機「ATF―G1」の実機を展示した。昨年の上海展でモニターで発表した機種だが、今回は生産機がイメージできる両側40錘機を初めて実機展示した。生産機としてデザインも変わり、インドやインドネシア、ベトナムなどブースに訪れたさまざまな国から注目を集めた。

 多様な性能が向上し、新型ヒーターで従来比50%の省エネを実現した。巻き取りは従来と同じスペースで4段から5段に増やし、生産性は25%高まった。低床も特徴で、機械の高さは2545㍉。4段時より27%低くし、作業のしやすさも向上した。

 40錘×12の480錘まで可能。世界での初導入はバングラデシュで、6台を据え付け中だ。