新春アンケート どうなる2025年の繊維産業(3)
2025年01月07日 (火曜日)
〈海外販売を拡大するか?/販路拡大で“米中”並ぶ〉
「海外販売を拡大するか?」の問いには、79%が「する」と回答した。前年より3ポイント上昇。新型コロナウイルス禍前の2018年、19年には85%にまで高まったが、ここ数年は70%台後半で推移する。
拡大させる際の国・地域の1位はこれまでずっと中国が1位だったが、今回初めて米国が並び、同率の51票だった。何よりも「中国・米国は世界最大の市場であるため」(バロックジャパンリミテッドの村井博之社長)という理由が大きい。3位のEU(欧州連合)も48票でほぼ横並びとなった。
「足元では欧州・中国経済低迷の影響で景気回復に力強さを欠いているものの、今後中長期的には各国の経済は成長を続ける」(東レの沓澤徹専務執行役員)。一方で「日本の需要の縮小は止められず、メード・イン・ジャパンとして輸出を拡大させるしかない」(宇仁繊維の宇仁麻美子社長)として、多くの企業が中国や欧米への市場開拓を強める姿勢にある。
環境、人権重視のトレンドが進展し、一層トレーサビリィティーの透明性が求められる中、「信頼できる日系企業としての強みを生かして、海外有望市場での販売を拡大する」(日清紡テキスタイルの村田社長)。
ベトナムやタイ、インドネシアなどASEAN(東南アジア諸国連合)では「中間・富裕層が成長していると思われる」(丸紅インテックスの片山貴文社長)として商機が拡大。ワールドはタイで「顧客づくりに成功した『タケオキクチ』のほか、昨年ポップアップ(期間限定店)を行い、手応えをつかめた2次流通を広げる」(鈴木信輝社長)考えだ。
これまで生産拠点として活用してきた素材メーカーも、販売拠点として外から外へのビジネスを活発化。「インドネシアを中心としたASEAN地域への拡販に注力する」(大和紡績の有地社長)、「生産拠点のある国での内販に加え、自社の付加価値素材の欧米への輸出にチャレンジする」(シキボウの尾﨑上席執行役員)といった動きも活発になっていきそうだ。
韓国へはインナーやデニムなどで輸出を狙う動きがあり、「価格や品質の優位性をもってシェアを拡大する余地がある」(アツギの日光信二社長)。
インドも人口の多さから魅力的。「ヨーロッパ大陸およびインドにおいては売り上げ拡大のポテンシャルがある」(インナーメーカー)、「インド国内でのEC(電子商取引)事業にトライしたい」(小泉アパレルの海原社長)といった声もある。
他にも堅調な民族衣装向け生地輸出が続く中東を挙げる声も多かった。
〈人手不足が懸念される業種は?/供給網分断に危機感〉
今回のアンケートでは人手不足への考えも聞いた。「人手不足が懸念される繊維の業種は何か?」という設問では、「縫製」が圧倒的に多く91票だった。「技術継承ができなくなることで、高付加価値なモノ作りのノウハウを失う。伝統的な縫製技術という日本の無形資産の喪失につながる」(三共生興の宮澤取締役)と、危機感を抱いている企業は少なくない。
縫製業は「特に人間の労働力への依存度が高く、機械・設備よりも、人間の手による仕事量が多いため人手不足による減少が進む」(ユニフォームメーカー)とみられる。
縫製に続き多かったのが染色整理の79票。「染色整理は過酷な環境のため外国人の依存度が高くなっているが、最近は円安により日本で働くメリットがなくなってきている」(森菊の市川喜英社長)。人手不足は縫製と染色整理加工だけに限らないが、「サプライチェーンの一部が断絶もしくは縮小するだけで、生産量が確保できず安定した製品供給ができなくなる」(学生服メーカー)と、特に国内生産に依存する業種にとっては深刻な問題だ。
「織布」(55票)、「編み立て」(51票)についても人手不足が続いている。高付加価値のモノ作りを意識するアパレルメーカーにとって「納期遅延、価格の高騰、付加価値の高い織物の提案が少なくなる」(イトキンの前田和久社長)ことを危惧する。
「熟練者の高齢化が進む中、若手の採用が難しく、国内生産から海外調達への移行がさらに顕在化していく」(スミノエインテリアプロダクツの村瀬典久社長)可能性を示唆する。「魅力ある業界へ移行していかない限り、人材確保は難しくなる」(成願の仙波一昌社長)。
「人手不足の問題は今後、どの業種においても深刻な問題」(織布メーカー)になると考えている企業は多い。AI(人工知能)や機械のオートメーション化によって効率を高めていくことはできるものの、25年は「モノ作りに関わる全工程において、人手不足に対する懸念が出てくる年になると思う」(エアークローゼットの天沼聰社長兼CEO)。
事業の縮小や労働環境の悪化、従業員のモチベーション低下などのさまざまなマイナスの影響が予想される。一方で、「省人化、自動化、デジタル技術で企業・社会を変革するDXによる新しい繊維産業のイノベーションが創出される可能性について期待したい」(東レインターナショナルの片岡社長)といった声もある。





