アパレル関連企業/服作りAI活用の現在地/各作業に向けた提案進む

2025年12月01日 (月曜日)

 アパレル業界における生産のデジタル化は試行錯誤が続くが、人工知能(AI)の技術をいち早く取り入れ、活用の提案を進める企業もある。生活領域にも浸透してきたAIが、アパレル生産ではどのような活用法が期待できるのか、取り組みの事例を伝える。(強田裕史)

 豊島は、ICTを基盤として業務の課題解決に有効な提案を行う「DX戦略」を推進する。その一環として、2023年から生成AIの活用にも着手した。

 現在、柄を生成AIで制作するサービス「バーチャルスタンダード・AIパターン」、ユーザーがデザイン、生地、色・柄、モデルを順に選択し、生成AIで3次元のモデルに着装させるシステム「ファブリックジーニー」、採寸作業を自動化する装置「バーチャルスタンド・AIメジャー」の提案に力を注ぐ。

 中でも、AIメジャーについては本格的な外販も視野に入れる。周知を広めるため、11月には縫製機器をはじめ服作りに使用する機器を集めた「東京ファッション産業機器展―(FISMA TOKYO)」(東京都ミシン商工業協同組合主催)に初出展した。来場者のAIへの関心が高く、同社のブースも常に活況を呈していた。

 東レACS(東京都港区)は、アパレル業界に向け、CADシステム「クレアコンポⅡ」とデータ管理システム「サイフォーム」を軸にした各種ツールを提供する。両システムは性能を更新し続け、生産現場の効率化を支えてきた。

 サイフォームの最新版は、AI―OCR(光学文字認識)によって手書き、PDFなどの帳票をデジタルデータとして取り込めるようにした。縫製仕様書をはじめとした資料の作成でも、加工指図書など別帳票への転用を可能にし、転記作業の時間を大幅に削減する。

 AI翻訳の機能でも、対象言語にベトナム語を追加し、使用の範囲を広げた。

 通販大手スクロール(浜松市)の子会社、スクロールインターナショナル(東京都品川区)は24年から、アパレル製品の企画・開発に特化した生成AIシステム「ライトチェーン」の提案を進める。

 OEM/ODM企業などに向け、業務上の負担を軽減するメリットを発信し続けた結果、導入企業は150社を超えた。最近ではユニフォーム業界からの引き合いが増え、導入先の範囲を広げつつある。

 ライトチェーンは中国のAIベンチャーと共同開発したシステムで、スクロールインターナショナルは国内でのソフトウエアの拡販を担う。機能の追加も重ねており、電子商取引(EC)サイト別にデータ連携できる「仮想試着」などのサービスも提案している。