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東レ 次期中経はROICを上位概念に

2025年12月02日 (火曜日)

 東レの大矢光雄社長、沓澤徹専務執行役員繊維事業本部長は1日に東京都内で会見し、現中経の現況や次期中経の方向性を説明した。大矢社長は、現中経の重点施策のうちROIC(投下資本利益率)の浸透などで一定の評価を与えた一方で、イノベーション創出などは「効果発現が遅れた」との認識を示した。次期中経では、ROICを上位概念とした経営を進めるとした。

 現中経が終了する2026年3月期の連結業績見通しは、売上収益が2兆6300億円(中経目標2兆8千億円)、事業利益1500億円(1800億円)で共に未達。ただ、収益性改善を目指したダーウィンプロジェクト(Dプロ)や戦略的プライシングなどに取り組んだ結果、3年連続で増益を確保し、ROICも当初掲げた約5%に到達する。

 次期中経は、ROICを上位概念として経営を進めるとの考えを示した。「コア成長や次世代領域に経営資源を集中する。付加価値が低く、他の事業ともシナジーが見いだせない事業は撤退・縮小の検討を推進することでROIC経営を進化する」と強調し、成長戦略と構造改革の両輪で経営に当たる。

 成長戦略では、繊維や炭素繊維複合材料などの既存事業、環境・資源循環・新エネルギーや次世代モビリティーなどを新用途開拓・新事業創出に位置付ける。この二つを組み合わせることによって長期的事業拡大を図る。繊維は複合紡糸技術「ナノデザイン」、リサイクル繊維、縫製一貫型、エアバッグを軸とする。

 構造改革については「終わりはない」とし、投下資本が大きい低ROIC事業については次期中計でもDプロの仕組みを継続(仮称・NextDプロ)する。現中経では300億円の収益改善効果が見込まれる。一方で「次期中経では300億円はいかないと思うが、3桁億円にはなる」と予想した。

 全社ベースでのROIC目標値は明言しなかったが、大矢社長自身の思いとして「繊維事業や機能化成品事業は2桁%に到達しないといけない」とした。25年度の見通しは、繊維が9%、機能化成品が8%。炭素繊維複合材料も30年に2桁%(25年度見込み3%)を目指す。

 投資については、既存事業に関しては一巡したとしつつ、新事業への投資は検討を続ける。日本が製造業で勝つために必要と捉えるデジタル技術で企業を変革するDXの投資も実行し、全体では現中経と同程度の設備投資規模になる見込みだ。