「TTS26秋冬」レビュー~展示会の新たな形③

2025年12月03日 (水曜日)

自分らしさを表現

 今回で2回目の開催となった「東京テキスタイルスコープ」。出展281社の展示エリアは、東京都立産業貿易センター浜松町館(東京都港区)の3~5階に分かれたが、合繊、ウール、加工など、どのエリア・ゾーンの企業も強みや得意商材を打ち出すことで個性を表現していたのが特徴的だった。

 東レは、複合紡糸技術「ナノデザイン」と人工皮革「ウルトラスエード」を軸に展示し、合繊だからこそできる表現や機能を訴求した。中でもひときわ目を引いたのが、小塚信哉氏のブランド「シンヤコヅカ」とのコラボレーション。キービジュアルになる製品を制作してブースに並べた。

 同ブランドは、ウールや綿を使うことが多く、「ウルトラスエードなどを使ってもらったのは良かった」(東レ)とした。シンヤコヅカも「普段は使わない生地を選んだ。違和感は全くなく、これはこれで良いアイテムが作れた」と話した。

 東レ合繊クラスターは、高感性テキスタイル分科会とサステナブルイノベーション素材分科会が出展した。高感性素材では、着用時の快適性を追求したハイストレッチ素材などを並べた。サステイナブル素材では、8デシテックスのリサイクルナイロンによる超軽量素材、100%バイオマス由来ナイロン510原糸を使った生地などを打ち出した。

 西川毛織(名古屋市中区)は、二つの異なる経糸と一つの緯糸で織り上げた経二重織のデニム調ウール生地が人気を集めた。ドレープ性といった特徴もあり、婦人のジャケットなどで採用されている。備蓄販売を行っており、今回展でもピックアップが多かった。

 ササキセルム(愛知県一宮市)は、尾州ならではの高品質な生地を紹介した。レーヨン・ポリエステル生地を白化したフィブリル感のある生地、コーデュロイとシャーリングを組み合わせた生地などが注目された。「新規への広がりも意識して備蓄品を展示した。新規客の来場もあり、今後に期待する」とした。

 ファインテキスタイル(岐阜県羽島市)は、綿・ウール生地を縮絨(しゅくじゅう)して凹凸感を付与した生地、アメリカンカジュアルから着想を得たメンズ向けの生地などに顧客が関心を寄せたと言う。「当社は企画力にこだわっている。これからもモノ作りには力を入れる」と強調した。

 刺しゅう加工のタナベ刺繍(香川県東かがわ市)も目立っていた。今回提案したのは漫画風のイラストを刺しゅうで再現する「コミックステッチ」。84デシテックスの刺しゅう糸を用いて躍動感のある線画を表現する。足を止める来場者も多く、同社は「反応を持ち帰り、ブラッシュアップする」と話した。

(次回掲載は8日)