繊維機械のトレンド射貫く ITMAアジア+CITMEシンガポール/デジタル捺染は総合提案

2025年12月03日 (水曜日)

 デジタル捺染機では、対応範囲や用途を広げ、ユーザーのさまざまなニーズに応える提案が目立った。

 セイコーエプソンは、今年発表したDTF(ダイレクト・トゥ・フィルム)専用プリンター「SC―G6050」などを紹介した。ダイレクトインクジェット(IJ)捺染機から昇華転写、DTFまでそろえ、ニーズに応じて選択できる強みを示した。

 ブースにはインドネシアやインドなどの企業が多く訪れた。中国製のプリンターを使う企業の中には日々のメンテナンスに苦労している声も多いという中、今回展では各種デジタル捺染機の品ぞろえとともに、プリントヘッドから消耗品まで総合的に展開していることによる信頼性も改めて訴求した。

 コニカミノルタは、7月に発表した反応染料用インライン前処理インク「オーローブ」を紹介した。インラインで反応染料インクと同時に塗布でき、前処理工程を省くことができる。顔料インク「ビローブ」に続き、反応染料でも前処理を不要とした。

 ミマキエンジニアリングは、昇華転写用IJ機の新機種「TS200」などを紹介した。TS100に続くエントリーモデルの新機種で、自動ドット調整機能で扱いやすく、多彩な色表現も実現している。

 旗艦機種で使われる「330エンジン」の高密度・高精細プリントヘッドをシングルで搭載。インクも標準4色にバイオレット、オレンジ、蛍光ピンク、蛍光イエローの4色を加えた8色にして鮮やかな色表現を可能とした。色の濃度を変えずにインク使用量を従来比約30%減らすインクセーブ機能も備えている。

 コーニットデジタル(イスラエル)は、スポーツシューズ用のデジタル捺染技術を披露した。テキスタイル用プリンターと製品プリンターの双方で対応し、ネオンカラー使いを含めてシューアッパーでの多彩な色柄表現を可能とした。

 ロールトゥロールのテキスタイル用プリンター「プレストマックス」は、白顔料とネオンカラーを同時に搭載できる形になり、凸状に白インクを盛り上げての柄表現もできる。シューズ用では既に世界で100万足以上に採用されていると言い、ブースではシルクスクリーンから切り替えた中国シューアッパー大手の達億集団がサンプルを展示していた。来年4月21~24日にドイツ・フランクフルトで開催予定の産業繊維・不織布の国際見本市「テクテキスタイル」でさらに進化させた技術を披露する予定だ。

 「ITMAアジア」のシンガポールでの開催は20年ぶりだったが、多くの出展者が南西アジアや東南アジアなどターゲットに定めていた地域との商談を活発に進めていた。一定の成果を得たとの声も多かったが、その一方で物価の高さから来る費用対効果や繊維機械の市場がない国での開催について疑問を投げかける声もあった。

 4年後の2029年の開催については会期中に発表がなく、会場では26年の上海、27年のハノーバーの案内にとどまった。今回のシンガポールが加わったことで、欧州↓上海↓シンガポール↓上海とITMAを冠した展示会が毎年開催される形になったが、出展者の中には繊維機械の開発に必要な期間と展示会の頻度のギャップを指摘する声も多い。隔年開催の上海を4年ごとにする要望も根強く、29年の開催がどうなるかだけでなく28年についても焦点になっている。(おわり)