物語は糸から始まる~北陸ヤーンフェアレビュー 第1回
2025年12月04日 (木曜日)
糸の独自性を訴求
「北陸ヤーンフェア2025」が11月19~20日に福井で開かれ、福井開催としては最多となる3391人が訪れた。出展企業数は79社・団体で、合繊メーカーや紡績、商社、糸メーカー、繊維機械、大学、試験センターなど幅広い業種がそろい、産地企業の新しいモノ作りに寄与する提案を行った。
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合繊メーカー各社は、糸の独自性を訴求した。前回展までの主流だったサステイナビリティーはベースとなり、より機能性や感性などを打ち出す動きが強まった。
東レは、高付加価値品をそろえるファイバーシリーズ「トーレ・プレミアム・ゴーセン・セレクト」を紹介。中でも好評だったのが「キュープ」で、湿気を吸って放出する際に冷却効果をもたらす「放湿冷却」機能が注目された。高い防透け性や紫外線遮蔽(しゃへい)、汗染み抑制の機能を兼ね備える「ギガダル」も注目を集めた。セラミック粒子の含有率だけでなく、強度や染色性などを含めた糸の総合力が強みだ。
ファイバーの部署が生地や製品販売にも踏み込む動きも進み、ブースではPLA(ポリ乳酸)使いのシャー織物を使ったコーヒーフィルター「ナント」も紹介した。
帝人フロンティアは、光の反射を利用して汗染みを目立たなくし、UVカットや防透性も備えた「ファインハント」を開発し、今回展で発表した。酸化チタンを含む特殊断面のポリマーを中心部に配した芯鞘型のコンジュゲート構造の糸。光の乱反射で紫外線や可視光線の透過を防ぎ、紫外線遮蔽率85%以上、防透け性93%以上の効果を発揮すると言う。
新しい糸では、「SWT」(仮称)も紹介した。四つ山断面でマイクロボイド構造のシック&シン糸(太い部分と細い部分が周期的に現れるムラ形状の意匠糸)で、レディース用途などで好評を得た。
旭化成アドバンスは前回展までに続いてジアセテート「ナイア」を紹介するとともに、キュプラ繊維「ベンベルグ」を初めて出品した。旭化成のベンベルグ工場が火災からの復旧を終え、来年1月から火災前の生産量に戻ることが背景。
ベンベルグ、ナイアとも糸加工で付加価値を高めた商品を中心に紹介した。ナイアは複合でニットでも使いやすくした糸の提案も進み、ナイロンやポリエステルとの組み合わせで訴求した。
東洋紡せんいのブースでは、超ハイマルチナイロン仮撚り加工糸「シルファインLXT」が注目された。44T×96Fのスーパーブライトナイロン加工糸で、柔らかな風合いや上品な光沢感などが特徴。改めて訴求した常圧カチオン可染ポリエステル糸「カラファイン」や「東洋紡コアスパンヤーン」も好評で、具体的な引き合いを得たと言う。
共同出展した御幸毛織は、長短複合糸「マナード」を軸にウールの魅力を訴求した。今回はウール×ナイロンのマナードの細番糸を、薄地織物にして紹介。経がナイロン、緯がマナードの薄地織物で、外観は合繊ライクに仕上げ、ウール使いに見えない点も来場者の関心を高めた。
KBセーレンは、猛暑対策品などの提案に力を入れた。遮熱などの機能を持つ「イレイド」はカーテン用途が主力だったが、近年はファッションなどにも広がっている。シャリ感やスパンライクな風合いを持つ生地「シエスタ」も、絣(かすり)調といった通気性のある生地が好評を得た。





