物語は糸から始まる~北陸ヤーンフェアレビュー 第6回

2025年12月11日 (木曜日)

紡績糸や樹脂の提案も

 合繊長繊維織・編み物産地で開かれる同展だが、綿紡績も新規開拓を狙いに出展する。その1社であるシキボウは、10月に開いた自社展と同じ出品内容だったが、特に「和紙糸に関心が高かった」。芯にポリエステル、鞘に和紙糸を配した複合糸は同社としては新素材で関心を集めた。強撚長短複合糸「メリンコール」も長繊維部分を温度調節樹脂「コンフォーマ」使いにしたタイプを提案。興味を示す来場者が多かった。

 シキボウグループの新内外綿は廃棄されるパイナップルの葉と綿の混紡糸「パイナップルヤーン」のほか、「ちょっとリッチなグレー杢(もく)」「リサイクルカシミヤ混紡糸」「反毛ヤーン」、シキボウ「フィスコ」とカチオン化加工綿を使った後染め杢糸「アートコット」の組み合わせなどの杢糸を提案した。

 リサイクルカシミヤ混紡糸は再生カシミヤ10%を混紡。バージンのカシミヤ混よりもコストを抑えることができる。反毛ヤーンは、2年前に生産子会社のナイガイテキスタイル(岐阜県海津市)に反毛機を導入済み。反毛わた50%を使って16、20番手を備蓄販売する。

 シキボウが活用したコンフォーマのような樹脂提案もあった。三菱ガス化学は独自のナイロン樹脂「エモクシー」や、バイオベースのナイロン樹脂「レクスター」を紹介した。

 繊維業界での認知度向上のため継続出展するが、「今回も新しい顧客との商談が多く、効果を実感している」と言う。樹脂ペレットの販売だが、前回展に引き続いて、隣のブースには糸生産を担うモノフィラメントなど合繊製造のユニプラステック(大阪市北区)も出展しており、糸での商談もしやすくしている。

 エモクシーは低吸水性や耐薬品性など特性が生きる用途で開拓を進め、産業資材を中心にスペックに合わせた開発に取り組む。繊維のほか、射出成形向けに2030年ごろの量産を目指す。ブースではエモクシーのモノフィラメント、マルチフィラメント、不織布、メッシュクロス、ブラシ、テープ、ダブルラッセルなどを展示した。

 糸生産を担うユニプラステックは2年連続の出展となる。エモクシーなど三菱ガス化学製樹脂以外にもさまざまな樹脂を繊維化する。今回展では立体編み物用モノフィラメントやBCF糸などに使うポリトリメチレンテレフタレート(PTT)樹脂使いへの反応も良かった。

 今回展は機能性を訴求する企業が多かったが、環境対応での出品もあった。初出展のモリトアパレル(東京都台東区)は、日本の廃漁網をケミカル再生したナイロン6長繊維「ミューロン」を訴求した。

 ケミカルリサイクルと繊維化は、台湾の台湾化学繊維(FCFC)が行う。糸種はなま糸、仮撚り加工糸、タスラン加工糸で、繊度は22~210デシテックスをそろえる。織物3種とダンボールニットを生機やカラーで備蓄する。「初出展なので、新たな顧客開拓を目指した。撚糸業などと接点がなかったので良い機会になった」と言う。

 日本製紙と島精機製作所の共同ブースも同様。それぞれ紙糸を提案した。初出展の日本製紙は金属イオン変性セルロース原料「Cu―TOP」による紙糸、島精機製作所は牛乳パック再生紙糸「リパック」の認知度向上を狙いに出展した。日本製紙はポリエステルとの交撚糸が、助野(富山県高岡市)の安全靴用靴下に採用されたことも紹介した。