特集 環境ビジネス(3)/各社が創る環境・サステの今/東レ/帝人フロンティア/旭化成
2025年12月16日 (火曜日)
〈「デューエイトPS」開発/撥水とパウダータッチ両立/東レ〉
東レは、PFAS(有機フッ素化合物)フリー撥水(はっすい)の生地「デューエイトPS」を開発した。複合紡糸技術「ナノデザイン」を駆使しパウダータッチを付与することにも成功している。機能と快適性を融合した商品として、27秋冬物から販売を開始する。
PFASフリーの撥水生地では、「デューエイト」を25春夏物から展開している。特殊な凹凸構造を生地表面に形成し、優れた水滴除去性を発現する。国内外から引き合いがあるなど順調だが、幅広いシーズンで使いたいという要望が寄せられ、そうした声を受けてデューエイトPSを開発した。
ナノデザインを駆使し、10マイクロメートル以下の極細糸が何層にも重なったかさ高なループ状構造を生地表面に作る。これによって撥水機能と上質なパウダータッチを両立した。連続した極細糸でループ状構造を構成しているため、洗濯時の質感変化や毛羽脱落がない。
織物と編み地の両方で提案でき、用途は婦人と紳士のアウターやボトムスなどを想定している。デューエイトPSは、春・秋・冬シーズン物として投入し、夏物がメインのデューエイトとすみ分ける。2027年度に20万メートル、30年度に50万メートルの販売を目指す。
現状は、「&+」(アンドプラス)として展開中の回収ペットボトル由来原料の使用比率は約50%だが、ゆくゆくは100%に高める方針を示す。再生ポリエステルに機能と快適性を付与した生地として成長を図る。
〈中わたも環境配慮型に/海外展示会でも注目高い/帝人フロンティア〉
帝人フロンティアの再生ポリエステル繊維「エコペット」が今年で30周年を迎えた。幅広い用途で利用されているが、新たに中わたに使用した「サーモフロント」が登場した。
サーモフロントは、原料にエコペットを70%以上使用した衣料用シート中わたのマザーブランド。エコペットによる中空8フィン断面短繊維「オクタエア」を使った「サーモフロントOA」、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維「ソロテックス」との混綿タイプ「サーモフロントSL」、旭化成のキュプラ繊維「ベンベルグ」との混綿タイプ「サーモフロントBE」をラインアップする。
中空8フィン断面短繊維を使用することで通常のポリエステル製シート中わたよりも保温性が高く、ソロテックスやベンベルグと混綿することでドレープ性を高めることや吸放質性を持たせるなどさまざまな性能や機能を実現した。再生ポリエステル繊維で複雑な異形断面糸・わたを製造することは技術的難易度も高く、エコペットで長年培ってきた紡糸技術・ノウハウが投入されている。
海外の展示会でも積極的に提案し、評価も高い。このため国内だけでなく海外市場での販売にも力を入れる。特に欧米はサステイナブル素材への要望が強いことから、中わた分野でも環境配慮を実現する素材として打ちだす。既に採用に向けた商談が進められており、2027年秋冬には、サーモフロントを採用した中わた製品が市場に登場する見通しだ。
〈環境負荷低減進む/環境配慮型の糸も充実/旭化成〉
旭化成のロイカ事業部は、ポリウレタン(PU)弾性糸「ロイカ」の環境負荷低減に取り組んでいる。取り組みや成果を報告する「ロイカサステナビリティレポート」も継続的に発表し、マーケットに対して“環境負荷低減を目指すストレッチ糸”としてのロイカの認知度を一段と高めることを目指す。
ロイカ事業部はロイカの製造プロセス改善など地道な努力を続けてきた。例えば事業活動による温室効果ガス(GHG)排出量を2030年度には13年度対比で60%以上削減することを目標に掲げる。廃棄物削減・リサイクル促進にも取り組み、24年度にはリサイクル率は91%にまで高まった。再生可能エネルギーも積極的に導入し、タイ子会社のタイ旭化成スパンデックスでは25年から自社で太陽光発電も導入した。
生産工程で発生する不要糸などを原料の一部に再利用するリサイクル糸「ロイカEF」は日本、タイ、台湾の3拠点で生産し、採用も拡大しつつある。マスバランス(MB)方式バイオ由来原料によるロイカは、持続可能な原材料の使用を証明する国際認証「ISCC PLUS」も取得。MB方式でバイオマス由来原料ナイロン繊維を生産するイスラエル企業、ニリットとの協業も始まり、ストレッチ生地のコンセプトを国際スポーツ用品見本市「ISPOミュンヘン」で披露するなど実用化が進む。そのほか、生分解性を有する「ロイカV550」もラインアップする。
同社では今後、織・編み・加工工程での環境負荷低減に貢献し、サプライチェーン全体でのカーボン・フット・プリント(CFP)削減につながる糸の開発に力を入れる。





