特集 環境ビジネス(4)/各社が創る環境・サステの今
2025年12月16日 (火曜日)
〈大阪の衣料循環に参画/独自技術で再資源化担う/シキボウ〉
シキボウは、大阪府などが先月設立した衣料品循環の枠組み「サステナブルファッション・プラットフォーム協議会」に参画した。廃棄衣料の反毛技術や、粉砕した繊維を再利用したバイオマスプラスチックペレット「コットレジン」などの独自技術を提供し、リサイクルと生産の分野で主体的な役割を担う。
同協議会は、大阪府や行政機関、民間企業など16社・団体で構成される。産官民が連携し、使用済み衣料品の回収、選別、リユース、リサイクルまでを一体的に進める。2030年度には府内で年間8千トン以上の衣類を回収し、国内でのリユースやリサイクルを含めた循環利用で年間3500トンを処理する目標を掲げている。
同社はこれまで、グループの新内外綿と連携し、不要になった生地や製品、製造過程で発生する端材を反毛してわた状に戻し、再び糸にする取り組みを進めてきた。この実績と技術をプラットフォーム内で生かして「繊維to繊維」リサイクルの生産を担い、資源循環につなげる。
繊維以外の用途も拡大する。コットレジンは廃棄繊維をミクロサイズまで粉砕し、樹脂と混ぜ合わせてペレット化する技術で、強度や耐久性に優れた成形品として再利用できる。製品の薄肉化にも貢献し、樹脂の使用量削減や軽量化も見込める。反毛による再生が難しい繊維は、コットレジンを用いてリサイクルする体制を整えている。
同社は「企業や自治体との連携強化で新しい市場を創出し、資源循環社会へ貢献する」ことを目指し、リサイクル素材の出口戦略を一層強化する。
〈ランドセルも環境配慮/人工皮革にリサイクルナイロン/クラレトレーディング〉
クラレトレーディングは、クラレが開発した人工皮革「クラリーノ」のランドセル用新銘柄「クラリーノ アクアデュオ」(アクアデュオ)の販売拡大に向けて提案を進めている。原料にケミカルリサイクルナイロン繊維を採用することで、ランドセル用途でも環境配慮型素材の普及を目指す。
アクアデュオは、クラリーノの基材となるマイクロファイバー不織布の原料に使用済み漁網や養殖ロープなど漁業系廃棄物を回収してケミカルリサイクルしたナイロン繊維を使用した。リサイクル原料使い製品の国際認証である「RCS」(リサイクルド・クレーム・スタンダード)も取得している。
漁業系廃棄物は海洋汚染の原因の一つと考えられており、世界的に回収・リサイクルが求められている。循環型社会の実現に向けて化学業界でもリサイクル原料を使用した環境配慮型素材の普及が欠かせない。そうした観点からランドセル用途でも環境配慮型の人工皮革の普及に向けて開発された。
クラリーノの特徴である軽量性や耐久性、イージーケア性などはバージン原料を使用したタイプと同等の性能を確保している。こうした点で評価は高く、イオンのオリジナルランドセルブランド「かるすぽ」に採用され、既に販売が始まっている。
一方、課題はコスト面。リサイクル原料はバージン原料と比べてどうしても割高になる。このためコスト競争力も求められるランドセル用途でさらなる普及を実現するためには、一段の高付加価値化が欠かせない。このため現在、新たな機能を付加したタイプの開発が進められており、2028年入学商戦には投入したい考えだ。
また、ランドセル以外にも一般バッグやボール、自動車内装材など幅広い用途への提案も進め、人工皮革における繊維to繊維リサイクルの拡大・普及にも取り組む。
〈サステ糸特化の見本帳/年内にGRS認証取得/新内外綿〉
新内外綿は、“環境の持続可能性”に貢献する紡績糸に特化した見本帳を初めて作った。構想から1年をかけ今年11月に完成させた。まずは400部を用意し、生地工場や生地商社、アパレルなどに配布し、オリジナルの環境配慮素材の認知度向上を図る。
見本帳には計7種類の紡績糸を収録する。全て天然資源や地球環境の持続可能性に貢献する糸ばかりだ。見本帳には複数の色の生地見本を添付し、糸で供給する。色展開などは別注することもできる。
高いトレーサビリティーを持つトルコ産オーガニック綿糸「エーゲ海オーガニック」や試行錯誤を繰り返して開発した未利用繊維を用いた糸も豊富だ。最新の商材としてはパイナップルの葉脈繊維を使った「パイナップルヤーン」、既に実績のあるものでは竹や葦(ヨシ)、ヘンプと綿混の糸がある。
親会社のシキボウと共同で開発した素材もある。廃棄されるカキ殻を利用して遠赤外線効果を得る保温機能繊維「シーウール」や生分解性ポリエステル「ビオグランデ」を使用した糸を掲載し、天然繊維だけでなく多角的な環境対応素材を一冊にまとめた。
同社は、「GRS」(グローバル・リサイクルド・スタンダード)認証の監査に合格しており、年内にも取得を完了する見通し。オーガニックコットンの国際認証「OCS」は既に取得済み。今後、こうした認証も強みとしつつ、今回新たに作った見本帳を活用して独自の“サステイナブルな”糸の普及に力を入れる。





