特集 環境ビジネス(5)/各社が創る環境・サステの今/東洋紡せんい/小松マテーレ/ソトー

2025年12月16日 (火曜日)

〈多彩な環境配慮型の糸/オーガニックからリサイクルまで/東洋紡せんい〉

 東洋紡せんいは、新タイプのリサイクル綿糸から、豊富な実績を持つオーガニック綿糸まで幅広い環境配慮型の糸をラインアップする。

 同社の糸で注目が高まっているのが新タイプのリサイクル綿糸「さいくるこっと」。新方式の開繊技術によって繊維長を維持した反毛を原料とするため、細番手糸やリサイクル原料100%の紡績が可能。糸表情の品位にも優れる。

 また、天然繊維の上質感と合繊の機能を両立する長短複合紡績糸「ネイチャーブリッジマナード」も重点提案している。独自の長短複合紡績糸「マナード」の技術を応用し、シルクや綿とマスバランス方式を含むケミカルリサイクルナイロン繊維「ループロン―C」の複合紡績糸と、リネン、再生ポリエステル繊維の複合紡績糸などをそろえることで、こちらも環境配慮型の糸だ。

 もう一つ、根強い人気があるのがオーガニック綿糸「ソレイユ オーガニック」。同社の前身会社の一つである新興産業は日本におけるオーガニック綿糸販売のパイオニアの一社であり、日本オーガニックコットン協会の設立メンバーを務めるなど豊富な実績を持っている。

 インドの有機栽培農家とパートナーシップを結び、コンタミ(不純物)対策も実施することで高品質なオーガニック綿糸を日本市場に供給し続けている。

〈クアトローニTKを開発/無孔膜で低膨潤性実現/小松マテーレ〉

 小松マテーレは透湿防水生地「クアトローニ」シリーズの新商品として、「クアトローニTK」を開発した。無孔膜での課題だった水膨潤の課題をクリアしており、2026年5月から受注を開始する予定。10月にドイツで開かれた「パフォーマンスデイズ」でも好評を得ており、スポーツやアウトドア、ユニフォームなどの用途に向けて提案していく。

 新しい商品・技術の研究開発はサステイナビリティーを前提にしており、透湿防水素材では非フッ素系を中心に無孔膜と多孔膜の双方で開発を進めている。透湿防水では、生地を薄く軽くして省資源につなげる開発にも重点を置いている。

 クアトローニTKは、無孔フィルムを使った非フッ素系透湿防水生地で、社内開発コンテスト「リ・クリエイション09」の取り組みから生まれた。

 親水性無孔フィルムを使った透湿防水生地は、表地が薄く軽くなるのに従って、水膨潤による外観変化が出やすいという課題が残っていた。雨が当たる所が膨潤して生地に凸凹ができる問題で、ラミネート加工プロセスを根本から見直して解決した。

 加工剤の工夫、表地と裏地の組み合わせ、ラミネートの仕方などさまざまな技術を組み合わせることで低膨潤性を実現した。性能を維持した上で実現しており、洗濯による耐水圧低下もほとんどないと言う。透湿防水素材の評価に用いられるB―1法も1平方メートル=3万グラム・24時間以上と高い快適性を実現(目付90グラム以下)。耐水圧は初期、10時間後とも2万ミリ以上で、薄さは3層ラミネートの従来品比30%減。柔らかさについても、従来品の半分の応力で変形する結果を得ている。

〈輸出拡大へ「GRS」取得/社内向けに環境意識の醸成も/ソトー〉

 ソトーは、合繊の加工が中心の日化工場(愛知県一宮市)で、リサイクルに関する国際認証「GRS」を取得した。輸出拡大に加えて、社内の環境意識の醸成を図るのが狙い。ほかにも一宮市独自の排水処理システムや尾州が得意とするウールなど、環境配慮への取り組みもアピールする。

 日化工場は化合繊への加工を手掛ける上に欧州向けが多い。環境意識が高い欧州への輸出では国際認証が必要不可欠と判断し取得に動いた。輸出だけでなく、社内での薬品の管理や従業員の環境に対する意識を高める狙いもある。「毎年ある監査を活用しながら社内の体制も強化したい」(上田康彦社長)

 同工場では、オーガニック繊維に関する「GOTS」「OCS」といった認証も取得。ウールの加工が中心の第一工場(同)と一宮工場(同)では、ウール関連の「RWS」を取得済みだ。RWSはグループのソトージェイテック(岐阜県輪之内町)と兒玉毛織(愛知県津島市)でも取得している。

 一宮市独自の排水処理システムもPRする。市一帯には染色整理などの各工場まで延びた専用の排管が地下に敷設されており、工場から出る排水はその管を通り同市西部浄化センターで一斉に浄化処理される。上田社長は「全国的に見てもまれな産地」とし発信を進める。

 尾州が得意とするウールの環境性能も訴求する。合繊とは異なり生分解性を備えるため、「持続可能性という観点からすればウールほど優れた素材はない」と強調する。