特集 環境ビジネス(7)/各社が創る環境・サステの今/豊島/モリリン/信友

2025年12月16日 (火曜日)

〈異業種連携の循環事業進展/「フードテキスタイル」ウールにも/豊島〉

 豊島が進める循環型社会の構築に向けた各種の活動は2025年、新たな局面に踏み出した。

 トヨタ自動車が推進する「トヨタアップサイクル」に、アーバンリサーチと共に参画した3社連携の取り組みも、大きな進展を見せた。

 トヨタアップサイクルは、自動車の製造過程で発生する再利用が困難な廃棄物を原料として再生させ、これを使って新しい製品を生み出していく。豊島は、再生原料からの製品化の工程を担う。

 24年の第1弾は雑貨・小物類を提案し、今年の第2弾はアパレル製品を打ち出した。ウェザージャケット、フィールドオーバーコート、オーガニックコットン使用のTシャツを製作。アーバンリサ―チの店舗で取り扱うほか、同社が大阪・関西万博の会場に開設した店舗でも販売した。この3社連携を通し、モッタイナイがもっといいに変わり続ける未来の実現に向け、活動を継続・拡大させている。

 このような異業種連携が、多様な分野の企業との出会いにつながり、さまざまな取り組みが生まれている。

 規格外・未活用状態の食材を染料に再活用するプロジェクト「フードテキスタイル」が今年、10周年の節目を迎えた。未活用食材を染料に使用する先駆けとして、アパレルなどの各種ブランドの採用実績を積み重ねてきた。

 今年は染色する素材の幅も広げた。合繊の染色を本格的に開始し、耐久性などを訴求してユニフォームへの採用を実現した。

 ウールの染色にも着手し、綿や合繊と共に在庫して提案する体制を整えている。

〈繊維製建材用再生ボード訴求/インテリア向け提案強化/モリリン〉

 モリリンは廃棄衣類・繊維製端材などが原料のリサイクルボード「パネコ」で、内装向け建材としての訴求を強化する。ボード状の建材「パネコボードM」を新たに打ち出す。

 パネコは店舗設備・什器(じゅうき)のデザインや制作を行うワークスタジオ(東京都新宿区)が開発する。モリリンは国内の販売総代理店として独自製品の開発から販売面で協業を続ける。パネコボードMは量産が可能な大判のMDF(中密度繊維板)として販売する。

 パネコボードMの量産はホクシンが担う。モリリンはホクシンに設備面の投資を行い、ラインを確保しながら来年3月ごろから量産化を進めたいとする。広範囲のボードを生産することで、廃棄対象の衣料や繊維製端材の大幅な使用量の増加や再生に貢献できる。量産化につながると年間で7千トンの再生が可能だと試算する。

 パネコボードMは床や内壁、天井など広範囲な面積を必要とする建材向けに訴求を強める。パネコを使用した什器や、椅子、時計などのインテリア製品などを組み合わせた総合的な空間の提案も可能だ。一般的な建材と違い、独特なミックス調の表面感を生かした空間提案は評判も良いだけでなく、環境配慮型素材としてのアピールに深みをもたらすことが期待できる。

 モリリンは「繊維製品を生み出す企業の責任として、パネコやパネコボードMを訴求する使命がある」とする。ゼネコンや住宅メーカー、建材メーカーなどに向けて拡販を狙う。

〈国際認証で新商流創出/工場緑化「コケシート」も進展/信友〉

 信友は、国際認証への対応を広げ、環境配慮型素材の提案機能を高めている。3月に「GOTS」「OCS」「GRS」「RCS」「RWS」の5種の国際認証を取得し、先月には「USコットン・トラスト・プロトコル」に加盟した。「国際フェアトレード認証」や「ベター・コットン」(旧BCI)にも参加し、計8種の国際認証・プログラムに対応する体制を整えた。認証を必要とする新規案件の引き合いが増えており、「認証を持つことで新たな商流の構築につながっている」(山田洋和サスティナブル推進室長)。

 環境配慮型素材の提案も進める。同社のサスティナブル推進室は、工場の緑化需要を捉えた「コケシート」の提案を強化している。2023年末から展開を始めたスナゴケを使ったシートは、ターゲットを工場エントランスに絞り込んだことで、採用を見据えた試験施工が増加した。

 工場立地法では一定規模以上の新設工場に対して、敷地面積の20%以上を緑化することが定められている。多くの工場が芝生で入り口周りを緑化してきたが、水やりや除草作業など維持管理の負担が重かった。コケシートは、雨や朝露など自然の水分だけで生育し、雑草も生えにくいため維持管理の省力化につながる。

 「四季を通して生育状況を確認したい」との要望が多く、半年~1年の試験施工を経て本採用を目指す。

 栽培には各地の耕作放棄地を活用しており、地域活性化にも寄与する。

 認証対応とコケシートの両輪で、顧客企業のサステイナブルな取り組みを支えていく。