特集 環境ビジネス(13)/各社が創る環境・サステの今/東レ・ライクラ/蝶理/エシカルファッション協議会

2025年12月16日 (火曜日)

〈PUリサイクル確立へ/「グリーンプロジェクト」推進/東レ・ライクラ〉

 ザ・ライクラ・カンパニーと東レの合弁でポリウレタン(PU)弾性糸「ライクラ」ファイバーを製造販売する東レ・ライクラは、製造工程での環境負荷低減やリサイクルなど持続可能な製品の実現を目指す「東レ・ライクラ・グリーンプロジェクト」を推進している。

 同プロジェクトは2022年にスタートしたもので、「企業としての責任」「製造工程における環境負荷の低減」「未来を守る持続可能な開発」を基本的な方針にリサイクルや次工程の環境負荷低減を可能にする機能糸などのラインアップを拡充した。

 その一つとして、PU混素材からPU成分を抽出する技術も確立し、24年から滋賀事業場に試験機を導入してリサイクル技術の開発を進める。まずは製造工程で発生する端材や残糸を原料に再生するプレコンシューマー型リサイクルで量産化を進めるが、将来的には使用済み繊維製品を原料に再生する“繊維to繊維”のポストコンシューマー型リサイクルの実現を目指している。

 また、ザ・ライクラ・カンパニーがバイオ原料によるPU弾性糸の開発を進めており、26年には実際に糸の販売も始まる予定。東レ・ライクラとしても性能や実際の環境負荷低減効果などを評価した上で、ユーザーからのニーズがあればラインアップに加える考えだ。

〈海外でも循環スキーム活用/排気ガス由来の再生素材提案/蝶理〉

 蝶理は、廃棄される繊維を循環させるスキーム「B―LOOP」(ビーループ)を協働で運用するパートナー企業を増やしている。繊維製品の製造過程で発生する繊維くずや古着を回収し、新しい繊維に再生させる仕組みの活用を広げている。

 蝶理と結び付きが強い北陸産地企業と連携し、糸・生地の生産過程で発生する廃棄繊維を回収している。そのうちポリエステルはペレット化した上で糸に加工する。それ以外の原料は、反毛後にフェルトや糸に再生させ、自動車の吸音材などに再利用する。

 現在は海外でも、その国・地域の環境に応じた取り組みを進める。中でも、ベトナムでは縫製工場から繊維くずを回収し、100%ポリエステルは脱色した上で長繊維に変え、綿混のポリエステルは紡績糸に再生させている。日系を問わず、現地に進出するアパレルメーカーへの提案が進み、実績が生まれつつある。

 循環事業では、新商材「RE:Carbo」(リカーボ)の提案も始まっている。リカーボは、工場から発生する排気ガスを使用したポリエステル繊維で、中国の糸メーカーの盛虹化繊新材料が開発した。

 工場内で回収した排気ガスからエタノールを抽出し、それを原料に使用して再生ポリエステルを製造する。再生原料を30%取り入れることで、工場の二酸化炭素(CO2)排出量を30%削減できると言う。

 海外では既に大手ブランドの採用実績があるが、蝶理は独自のブランディングで国内での普及を図っていく。

〈会員企業がさまざまなPJ推進/廃棄物炭化PJなど/エシカルファッション協議会〉

 繊維・アパレル業界からエシカル経済をけん引することを目的に活動するエシカルファッション協議会(岡山市)では、会員企業が環境配慮に向けたさまざまな取り組みに力を入れている。

 今年、同協議会の認定プロジェクト(PJ)として始動したのが、多様な有機系廃棄物を炭化させて幅広い素材に転換する「ガーボン」だ。環境に配慮したエシカル商品などを取り扱うGab(ガブ、東京都渋谷区)、炭素素材製品の研究開発などを行う大木工藝(大津市)、服飾雑貨や靴の企画、販売までのノウハウ提案や販売を行うジャルフィックR&D(横浜市)が協業して取り組んでいる。

 プラスチックや衣服、食品残渣(ざんさ)など幅広い廃棄物を独自のプロセスで炭化し、それを原料に人工皮革や建材、ペレット、顔料、活性炭、肥料、消臭・抗菌剤など、幅広い用途に転換。資源循環というストーリーのある商品開発を後押しする。廃棄処理費用の削減とともに、新たな収益源の創出、持続可能な社会づくりを目指す。

 今後は、実証実験、事業化フェーズへと踏み出す。既にトヨタ自動車と実証実験も始めている。

 発信にも力を入れている。8月に岡山市内で開かれた、岡山県内を中心とした企業・団体のSDGs(持続可能な開発目標)達成に向けたさまざまな取り組みを披露する「おかやまSDGsフェア」に出展。会員企業のデニム整理加工のコトセン(岡山県倉敷市)、洗い・染色加工のニッセンファクトリー(同)、ジーンズ製造卸のビッグジョン(同)、アン・ドゥー(岡山市)、大木工藝、ケケン試験認証センターが取り組みをPRした。