糸メーカー/海外生産で隙間を埋める/供給不安に柔軟に対応

2025年12月17日 (水曜日)

 素材メーカーの構造改革や品種集約、市場の変化などで今後の入手に不透明感が出ている糸種が増えている。そのような中、糸メーカーや商社では海外生産で対応し、市場に空いた穴を埋める新たな提案も進みだしている。

(星野公清)

 新たな打ち出しが進んでいる分野の一つに常圧カチオン可染ポリエステルがある。旧三菱レイヨン「AHY」の技術を引き継いだユニチカが強みを持っていた分野で、同社の繊維事業撤退で今後の不透明感が出ていることが背景にあるとみられる。ユニチカが強みを持っていた商品では、バイメタル構造ポリエステル「Z10」なども挙げられる。

 東洋紡せんいは、常圧カチオン可染ポリエステル「カラファイン」の提案を改めて強化しており、多くの引き合いを得ていると言う。長繊維に加え、今後は短繊維の展開も始める予定。日東紡の撤退でメーカーが減ったコアスパンヤーンにも海外生産で対応し、「東洋紡コアスパンヤーン」として改めて提案を強めていく。

 GSIクレオスは、常圧カチオン可染ポリエステル短繊維「365ファイン」を打ち出し、その一商品として旭化成のキュプラ繊維「ベンベルグ」と組み合わせた「セルカ」の展開を始めた。アクリル×ベンベルグの吸湿発熱糸を展開しているが、市場でのアクリル離れに対応するもので、ポリエステルを常圧可染にしてベンベルグと組み合わせやすくした。中国からポリエステルわたを輸入し、日本で紡績。30、40番手で在庫を積んで展開する。

 特殊な合繊原料を輸入し、自社の糸加工技術と組み合わせて展開する糸メーカーが増える中、市場で空いた領域に対応する提案も出てきている。糸商のシモムラ(石川県小松市)は、糸を輸入して自社の糸加工技術を加えて展開する事業を本格化した。輸入する糸は特殊なものを多くそろえ、サイドバイサイド型のポリエステル伸縮糸や高強力糸なども展開している。

 繊維商社の弘伸(京都府長岡京市)は、国内の撚糸工場がフル稼働を続ける中、上海子会社を活用した中国でのコンバーティングで品ぞろえを拡充している。その一環で畜光糸や再帰反射糸を開発し、11月の北陸ヤーンフェアで初披露した。

 蓄光糸は太陽光や蛍光灯などの光エネルギーを吸収し、暗くなると発光する糸。再帰反射糸は球状のガラスビーズと反射性アルミ層から成る再帰反射材を使い、視認性に優れるなどの特徴を持つ。ともに一定の需要がある糸だが、フジボウテキスタイルの小坂井工場(愛知県豊川市)が12月末で繊維から撤退することで先の不透明感が強まっている。弘伸は、この需要に対して中国でのコンバーティング生産で対応。現時点では細部を詰めている段階だが、多くの問い合わせがあると言う。