LIVING-BIZ vol.125(2)/特集 寝具寝装モノ作り/輸入数量増、国内生産減/市場変化踏まえた供給体制へ

2025年12月17日 (水曜日)

 2025年の寝具寝装は、9月まで輸入数量が前年同期を上回るが、国内生産数量は下回る。国内生産数量の減少が続いており、生産体制の再編を進める動きが目立つ。

〈ベトナムへ生産シフト/中国も引き続き存在感〉

 財務省の貿易統計によると、25年1~9月期のふとん輸入数量は、前年同期比6・3%増の1354万枚だった。羽根・羽毛ふとんは23・1%減だったが、人造繊維ふとんが9・2%増とけん引した。

 主要アイテムの一つである人造繊維使いのふとんは、中国からの輸入数量が約89%を占める。中国製が圧倒的だが、地政学リスクなどによってベトナムの生産拠点としての位置付けが高まっている。さらにASEAN地域へ出店する日系量販店向けの供給拠点としても役割が増している。

 東洋紡せんいのマテリアル事業部ライフマテリアルグループは、ベトナムで協力工場を活用し、改質加工わた、紡績糸の生産体制を構築している。綿が先行し、綿を改質して吸湿発熱機能を高めた糸「ホットナチュレネオ」が、国内の25秋冬向けブランケットに採用されたほか、ホットナチュレネオの吸湿性をより高めた有機綿タイプも26春夏向けインナーで採用されている。

 得意とする改質技術を生かし、海外生産のコストメリットや現地供給能力を高めることで差別化する。ベトナムで改質レーヨンの量産体制もこのほど構築。日本で作る改質わたと同等の性能を持つ改質レーヨンを供給できる。

 粒わたや寝具、クッション製造などのアライ(京都市)のベトナム子会社、アライベトナムは、ASEAN地域の日系量販店向けビジネスが拡大する。カード機や、コンフォーターを含めた縫製機器を持ち、昇華転写プリント機も23年に導入。日系のスポーツウエアのプリントなども手掛ける。

 一方でベトナムはロット数が大きく、日系大手量販店や大手寝具製造卸以外は活用しづらい。そのため、小ロットに対応できる中国・山東省などのニーズも引き続き高い。中国は原料、素材から生産できる体制が整っており、寝具の生産拠点として「少なくともあと5年」(寝具関連企業)は中心になるとみられている。

〈国内生産体制再編も/持続可能性を追求〉

 国内生産数量は、減少傾向が続いている。経済産業省の生産動態統計によると、ふとん生産は20年以降300万枚割れが続く。25年1~9月期も12・6%減と下回る。国内の素材メーカーや寝具メーカーでは、生産体制を再編する動きが目立つ。

 東レの短繊維事業部は、寝具の中わた用途を含むポリエステル短繊維を生産する愛媛工場(愛知県松前町)の連続重合・直接紡糸(連重)設備を9月に停止し、国内はバッチ式紡糸設備のみとなった。バッチ式紡糸で付加価値品の多品種小ロットに柔軟に対応する体制にした。連重の一部はインドネシアに移管。ポリステル短繊維を生産する国内外拠点の稼働率を高め、事業の継続性を担保する。

 フランスベッドホールディングスは、人口減少や住宅着工件数の減少による家庭用ベッドの生産数量減少を踏まえて、インテリア健康事業の生産拠点を集約。東北工場(福島県白河市)、佐賀工場(佐賀県上峰町)の2工場体制から、佐賀工場へ集約する。

〈26春夏寝装向け30%増へ/洗濯時短生地にニーズ/東洋紡せんい〉

 東洋紡せんいのマテリアル事業部ライフマテリアルグループ寝装チームは、26春夏向け寝具寝装素材・製品販売の数量を前年比30%増やす計画だ。高い接触冷感機能を持つ超高強力ポリエチレン繊維「ツヌーガ」使いの販売が順調のほか、速乾ポリエステル生地「速衣」(ハヤイ)も“洗濯時短”寝具への採用が決まった。

 春夏向けは接触冷感系が柱。ツヌーガ100%生地「アイコールド」や、ツヌーガとレーヨンの長短複合紡績糸「アイスデラックス」、ツヌーガ100%糸をそろえ、糸、生地、製品で展開する。海外で製品を組み立てる顧客ニーズに対応するため、25春夏向けから糸の海外販売もスタートし、販売を増やしつつある。

 25春夏向け販売数量も、前年比で50%増加した。ただ25春夏は接触冷感寝具が苦戦した販売チャネルもあり、26春夏向けで計画数を減らすなどの慎重さも見られると言う。同社もその影響を受けるが、新たな別注受注やアイテム数の拡大などで販売を伸ばしている。

 さらにスポーツ用途で展開する速衣が、乾きやすい洗濯時短をテーマにした寝具へ採用された。速衣は特殊な弾発性を持つ凹凸の少ないストレートヤーン構造で、水分の余分なたまり場を少なくし、滑らかな水分の移動と拡散を実現。冷感以外の素材にも力を入れて拡販へつなげる。

〈前年同期比12.6%減/25年1~9月のふとん生産〉

 経済産業省の「生産動態統計」によると、従業員20人以上の事業所の2025年1~9月のふとん生産は、前年同期比12・6%減の138万枚だった。アイテム別では羽毛・羽根ふとんを除いて前年同期を下回った。

 羽毛・羽根ふとんは0・1%増の62万4595枚だったものの、掛けふとんが24・3%減の22万4007枚、敷ふとんが18・7%減の52万2196枚、こたつふとんが42・4%減の1万2678枚と、落ち込みが目立っている。