合繊業界/再編で変わる業界地図/“選択と集中”が加速
2025年12月18日 (木曜日)
合繊の“業界地図”が大きく変わろうとしている。ユニチカの繊維事業譲渡・撤退に加えて、ここにきて帝人フロンティアと旭化成アドバンスの経営統合という大きなニュースが発表された。日本の合繊メーカー・メーカー系商社による“選択と集中”が一段と加速している。一方、事業譲渡や経営統合を通じたシナジーへの期待も高い。(宇治光洋)
経営再建のための事業再生計画に取り組んでいるユニチカの繊維事業は、この1年で譲渡先がほぼ決まった。主要な事業のうち、ポリエステル繊維・スパンボンド不織布事業などはセーレン、衣料繊維事業はシキボウに譲渡されることになる。かつては十大紡績・合繊8社の一角に数えられたユニチカの繊維事業撤退は、業界地図の変化を象徴する。
そうした中、このほど帝人フロンティアと旭化成アドバンスが2026年10月に経営統合すると発表した。帝人と旭化成の繊維事業会社としての役割も担うメーカー系商社同士の統合は、企業系列の枠を越えた業界再編の動きとして業界に衝撃を与えている。
背景には、繊維事業を取り巻く環境が一段と厳しさを増していることがある。中国を中心とした海外企業との競争激化に加えて、株主からは資産効率を重視した経営が一段と求められる。
また、日本の繊維産業は工場設備の老朽化が進んでおり、継続的な修繕・更新や新規投資が可能な利益率を確保しなければ、事業継続が物理的に不可能になっている。そのためには自社での撤退とベストオーナーへの譲渡による事業集約によって、効率化と収益性の向上を進める動きが顕在化したと言えるだろう。
こうした動きで台風の目になっているのが帝人フロンティアだ。旭化成アドバンスとの統合のほかにも、ユニチカからタイのポリエステルスパンボンド不織布製造販売子会社であるタスコ、東洋紡からは中国のエアバッグ用基布製造販売子会社の東洋紡汽車飾件〈常熟〉を買収するなど拡大戦略が目立つ。今後、どのような具体的なシナジーを発揮するかに注目が集まる。
そして忘れてはならないのが合繊最大手として確固たる地位を築いている東レの存在だ。現在もナイロン、ポリエステル、アクリルという三大合繊全てを生産する国内唯一の合繊メーカーであり、これまで繊維事業を分社化せずに、積極的に経営資源の投入を続けてきた。26年度(27年3月期)から新たな中期経営課題をスタートさせる。成長戦略と構造改革に同じ熱量で取り組む方針は変わらない。さらに中国・東南アジアからインドまでサプライチェーンの延伸に取り組むなどグローバルオペレーションの拡大を目指している。
日本の繊維産業は変革期に突入したと言えそうだ。業界地図は今後も大きく書き換えられることになる。





