繊維ニュース

特集 CSR/各社各様の取り組み推進/社会的要請、欠くことできず

2025年12月18日 (木曜日)

 CSR(企業の社会的責任)は、企業が社会的・環境的な要請に対して責任を果たすことを指し、2000年代から日本でも取り入れられるようになった。取引先の拡大やエンゲージメントの向上などにつながるとされており、企業にとって欠くことのできない取り組みの一つになっている。

 CSRは、コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティーの略で、日本語では「企業の社会的責任」と訳される。社会問題に対して企業も積極的に取り組まなければならないとする考え方だ。CSRが必要になったのは、企業の不正行為に対して社会の見る目が変化したからとされる。

 10年にISO(国際標準化機構)が正式なガイドラインとして国際規格「ISO26000」を発行した。ガイダンス規格であって、認証を受けるものではない。組織の自主的な社会的責任への取り組みを促進することを目的としており、多様性の尊重という概念も包含する。

 ISO26000では、組織が尊重すべき社会的責任の七つの原則と七つの中核主題が掲げられている。七つの原則として「説明責任」「透明性」「倫理的な行動」「ステークホルダーの利害尊重」「法の支配の尊重」「国際行動規範の尊重」「人権の尊重」が示されている。

 中核主題は「組織統治」「人権」「労働慣行」「環境」「公正な事業慣行」「消費者課題(顧客への責任)」「コミュニティーへの参画」の七つ。消費者課題は分かりにくいが、組織の活動や製品、サービスが消費者に危害を与えないことと定義される。

 サステイナビリティーやSDGs(持続可能な開発目標)など、似た言葉もあるが、サステよりも幅広く、SDGsは普遍的な目標である。

 CSR活動に取り組むことで、企業としての信頼性向上や人材採用に好影響があるとされる。

〈YKK/廃棄ファスナーを再生/繊維も資源として循環へ〉

 YKKは、資源循環に貢献する各種の施策を推進している。

 その一環として、廃棄されるファスナーを減らすため、部位別に素材を回収、再利用して新たなファスナーに生まれ変わらせる取り組み「zip TO zip」(ジップ・トゥ・ジップ)を展開する。

 ジップ・トゥ・ジップは、YKKが形成した三つのループの実現に向け取り組みを進める。

 ループ①「社内での資源の循環」は、YKKの社内で作るもので、リサイクル技術の構築を進めながら、これまで廃棄されていた〝社内資源〟を再利用するために回収する仕組み作りを行う。

 ループ②「顧客との協働」は、顧客との連携により、廃棄していたファスナーの回収からリサイクルまでのスキームを作り上げ、実践する。

 ループ③「環境・社会との連携」は、社会全体にまで取り組みの輪を広げ、消費者にもファスナーのリサイクルを定着させ、廃棄されるファスナーを減らし、地球にやさしい環境作りを目指す。

 商品展開の面では、〝繊維to繊維〟で循環型社会の構築につながる施策も打ち出す。

 「ナチュロンプラス・ファイバーソースト再生PET開具」は、テープ・エレメント、開具などに繊維由来再生PET(ポリエチレンテレフタレート)を使用した。繊維廃棄物を資源として循環させる。

 一方で、製品の耐久性を担保するため、スライダーには再生亜鉛合金を採用した。

 YKKは、繊維由来再生材を使用し、最終的に廃棄する際には、ファスナーも衣服と一緒にリサイクルできる単一素材化を目指した循環型商品の開発に力を注ぐ。イノベーションを通じ、繊維業界が抱える環境課題の解決に貢献していく。

〈豊島/共同輸送・配送の実現に向けて/ホワイト物流への施策進化〉

 豊島はCSR(企業の社会的責任)への施策の一つとして、業界に先駆けてホワイト物流を推進してきた。2019年に「持続可能な物流の実現に向けた自主行動宣言」を発表し、企業間連携による関東地域の共同配送に加え、国内のフェリーを活用した共同輸送を始めた。

 具体的な実施は22年5月から田村駒、スタイレム瀧定大阪の2社と連携し、東京港に届いた商品を、関東の同じ納品先に配送する共同配送を始めた。各社別々で配送していた輸送を効率化することで、CO2削減にもつなげた。ドライバー不足など、国内物流の環境の変化に合わせて取り組みを継続している。

 それに先行して、国内外でフェリーの航行事業などを行う関光ロジNEXT(山口県下関市)と協業し、関東向けに東京九州フェリーを活用した輸入貨物の混載輸送を開始した。トラック輸送に依存した体制を見直し海上輸送へのモーダルシフトを推進するのが狙いだ。

 23年には年間約70㌧のCO2排出を削減した。この国内フェリーを活用した取り組みが評価され、今年、国土交通省が定める「令和6年度エコシップ・モーダルシフト事業」の優良事業者に認定された。

 今年3月からは従来単独で行ってきた国内無人航走路線を、MNインターファッション、ヤギの3社と商社間の共同配送を開始。10月時点では、全体で10㌧トラック約68台分の貨物が海上輸送に変わり、約102㌧のCO2削減を達成した。幹線輸送だけでなく、納品先まで一貫した共同配送の実現も目指す。

 藪輝彦常務は「物流課題は、1企業だけでなく業界全体で取り組める案件もあり、協業企業を増やし取り組みを大きくすることでCO2削減にもつなげていきたい」と話す。