特集 産業資材用繊維機械/成長領域で繊維の技術/資材の幅広い要望に対応

2025年12月19日 (金曜日)

 先進国型の繊維産業では、産業資材分野の重要性がますます高まっている。繊維は最先端分野やインフラ関連などさまざまな分野で使われており、これからも広がっていくとみられる。資材用途では、高機能繊維やスーパー繊維を含めて特殊な糸への対応が求められるケースも多く、生地組織もさまざま。繊維機械メーカーでは多様な要望に応える機種の開発・提案を強化している。

〈炭素繊維用に続く柱構築/タイヤコードディップ糸などに注力/TMT神津〉

 TMT神津は、強みを持つ炭素繊維用ワインダーに続く新しい柱の構築に取り組む。産業資材用ワインダーでは、タイヤの補強材として使われるディップコード糸用に力を入れるほか、ガラス繊維用やアラミド繊維など高機能繊維用の開発も強化している。

 タイヤコード用では、ディップ工程後の糸も安定して巻き取れるテークアップワインダー「EKTW-CAX150S(M)」の提案を進めている。接着用の樹脂を付与して固くなったディップ糸でも安定した巻き取りやオートターレットによるパッケージ切り替えが可能となっている。1~2年前から提案を開始したが、良好な巻き姿と安定した切り替えが好評を得ており、既に複数の顧客で導入が進んでいる。電気自動車(EV)の普及もあってタイヤの性能向上が求められている中、特にこれまでの主流であるファブリックディップとは異なる形で開発を進める工場での導入を見込んでいる。

 ガラス繊維やアラミド繊維、液晶ポリマーなど高機能繊維用のワインダーにも注力する。リワインダーの「ワインディングマスター」ではガラス繊維などに対応しているが、テークアップワインダーも伸ばしていく。拡販に向けて性能の向上にも取り組み、現在は中速機(毎分500~1500メートル)の開発に注力している。

 リワインダーでも産業資材用での拡販を狙う。ワインディングマスターは、既に高張力での巻き取りやトラバースの大型化を実現したタイプを打ち出しているが、さらなる性能向上にも取り組んでいる。

〈産資用TFシリーズを展開/ドローイングにも引き合い/ストーブリ〉

 ストーブリは産業資材用途で、テクニカルテキスタイル用の織布システム「TF」シリーズを展開している。開口や筬(おさ)打ち、緯入れ、給糸などそれぞれが独立して動き、幅広い糸種や織組織の生産が可能。スペーサーファブリックや厚みのある多層織物、複合材料向けの特殊織物など、生産品に応じ仕様を個別に構成できる。

 TFシリーズは、ションヘルのカーペット織機の技術を生かして開発された織布システムで、ダブルレピア織機「TF20」に続いて、「TF30」が発表された。高さ変更が可能なレピア式緯糸挿入、サーボ制御の開口や筬の水平動作など高度な技術の組み合わせにより、3D織物や特殊織物などさまざまな製織が可能となった。

 繊細な糸処理も特徴の一つで、炭素繊維やガラス繊維、アラミド繊維など高機能糸での織布にも向く。産業資材用での新しい開発を可能とする機種として、日本でも提案していく。

 製織準備機では自動ドローイング機が、産業資材用途でも注目されている。従来は作業本数が少ない太い糸での導入はなかなか進まなかったが、近年は省人化の切り口から産業資材用途での導入も進み、日本での販売は引き続き堅調に推移する。

 10月の「ITMAシンガポール」では、自動ドローイング機の新機種として「サファイアS37」が披露され、日本での提案も始まっている。

 S37は毎分280本に処理能力が高まり、画像処理能力の向上や特殊な糸でも条件設定を容易にするなどの性能向上も進んだ。糸への接触部分を低減して、部品の消耗を大きく抑えるなどの特徴も加わっている。

〈ユニラップなど提案/超広幅のガイドレス式も/イテマ〉

 イテマ(イタリア)の日本法人であるイテマウィービングジャパンは、産業資材用繊維機械として、レピア織機「R9500エボ」や「イテマテック」ブランドで展開する「ユニラップ」「ヘラクレス」を提案する。R9500シリーズでは、超広幅のガイドレス式の販売も始める。

 R9500シリーズは緯入れの汎用(はんよう)性の高さから産業資材用途でも多く導入されている。足元では産業資材用の比率が一時的に落ちているが、例年だと日本での販売台数の約40%が産業資材用になる。R9500シリーズはセカンドジェネレーション型とエヴォ型を展開するが、2026年からの受注はエヴォに一本化される。

 10月の「ITMAシンガポール」では、新たにガイドレス式の超広幅機が発表され、540センチ幅まで可能となった。糸を傷つけにくいガイドレス式は産業資材用途でも要望が高いが、これまで360センチ以上はガイド付きのみだった。360センチ超のガイドレス式への要望は日本でも多く、今後R9500シリーズで提案していく。

 レピア織機に取り付けて製織時にできる捨て耳の左側をなくす「iSAVER」(アイセーバー)の提案も進める。産業資材用途でも無駄をなくす装置として注目されており、特に高価な糸を使う用途で好評を得ている。

 産業資材用織機のイテマテックで展開する機種の提案も強める。ユニラップは独自の片レピアで、扁平糸をよれることなく製織できるなど特殊糸の製織に強みを持つ。高張力織物の製織に強みを持つヘラクレスもそろえる。

〈ユーザーの要望具現化/資材用途も幅広く/福原産業貿易〉

 福原産業貿易は、資材用を含めて顧客の要望に応える技術開発に力を入れている。特に電子柄機やファインゲージ機に重点を置くが、今後はオートドッファー(自動玉揚げ)や自動化などの視点での開発にも取り組む。

 丸編み機の開発においては、資材に特化したものはないものの、ユーザーの要望に応じた技術を開発していく中で資材用にも多く使われる形になっている。既存の資材用途では、丸編み機に高い生産性が求められる貼布基布や、高付加価値機が多いマットレス用などがあり、天井・サイド材や裏貼りなどの自動車内装材用でも使われている。さまざまな用途になるが、スペーサーファブリックが生産できる丸編み機の需要も引き続き多い。

 衣料用途を含めての開発では、電子柄編み機やハイゲージ機などに力点を置いており、10月に開かれたITMAアジア+CITMEシンガポールでは、両面選針の電子柄丸編み機で40ゲージ(G)を実現した新機種を紹介した。新開発の選針機構により、高速化や省エネなども実現している。

 両面選針の電子柄編み機はこれまで36Gまでだったが、さらなるファインゲージ化を実現した。丸編み機としては既にシングルニットで60G、ダブルニットで42Gを開発しているが、今後は電子柄機でもハイゲージ機へのニーズが増えるとみている。

 今後は省人化や自動化などでの開発にも取り組む考え。

〈注目の超音波スリッター/環境配慮型水洗機も提案/伊藤忠マシンテクノス〉

 伊藤忠マシンテクノスは、機械商社として資材用途でも海外から最新鋭機種を日本市場に積極的に提案している。今注目が高まっているのがウィリー(イタリア)の細幅用超音波スリッター「スリットラベルTLC」と、ビアンコ(同)の水洗機「ハッピースカータンク」だ。

 スリットラベルTLCは、縦方向の超音波スリッター。カットする生地の制御には光学センサーを採用しており、送り込み時のリボンのセンタリングと位置合わせを高精度に行う。これにより生地のズレやよじれによる加工ミスを防止する。

 また、加工中にスピーディーにリボンロールの充填(じゅうてん)が可能だ。10個の円形ブレードとブレードホルダーの交換も容易にできるようになっており、操作性に優れる。最小カット幅は9ミリまで可能となる。日本でも導入実績があり、新規での導入に向けた商談も進む。ウィリーも日本市場を重視しており、積極的な提案を進める考えだ。

 一方、水洗機のハッピースカータンクは、生地に含まれるポリウレタン弾性糸に由来するケイ素油などを効率的に除去できる。小型のためステンターの前に取り付けることができ、ヒートセットとの連続プロセスが可能となる。加工量当たりの水使用量や化学薬品量も少ない環境配慮型の装置だ。

 既に中国では100台以上が導入されている。織・編み物だけでなく不織布にも使用できるため資材用途にも提案する考えだ。