特集 北陸産地(2)/北陸との取り組み強化/蝶理/東レ/旭化成アドバンス/一村産業

2025年12月23日 (火曜日)

〈蝶理/テキスタイルを強化/産地品をグローバルに販売〉

 蝶理は北陸産地との取り組みにおいて、テキスタイルの強化や産地品の出口創出などに注力する。今後は特に海外市場への拡販を狙う。北陸の染色スペースがタイトな中、加工反だけでなく生機での輸出も増やす考えで、販路の拡大とともに、海外の染色加工の体制も整える。

 独自の差別化糸展開を拡大する中、糸を生地や製品につなげての展開も強化していく。製品では差別化糸を使った展開が進捗(しんちょく)しており、特にテキスタイルの強化を重視する。産地への差別化糸販売だけでなく、産地で生地にしての仕入れも強化することで、北陸との取引をさらに増やしていく。

 産地との取引拡大では、「プロダクトアウトとマーケットインの融合」を重視する。この中で「テキスタイルは最も融合させやすい分野」とし、テキスタイルの強化に取り組む。川下の顧客を産地に呼び込む取り組みも強化しており、今後の成果につなげる。

 グローバル展開の拡大に注力し、北陸品の輸出も伸ばす。海外販売の拡大に向け、今期は繊維原料、生地、製品、資材の各部署が連携して、欧米やアジアの展示会への参加を積極化している。

 販売体制も整備し、米国や香港、欧州などで繊維の担当者を増員する。フランクフルトはこれまで化学品主体の事務所だったが、新たにテキスタイルの人材を置き、香港も増員する。米国は昨年に資材の人材を配置したところだが、さらに製品と素材の担当者を駐在させる。

 北陸品の輸出は、染色スペースがタイトなこともあり、生機でも伸ばす。そのために海外の染色も活用していく。その一環でインドネシアのウラセプリマはブラック以外にも展開を広げ、ユニフォームやファッション、スポーツの染色加工に対応する形にした。

〈東レ/酷暑で合繊素材に好機/国内での開発・生産が重要に〉

 東レは、2026年度(27年3月期)も北陸産地に対して積極的な発注も見込む。近年、夏の酷暑が長期化していることが合繊素材にとって好機となるとみており、暑さ対策の機能素材などを国内産地で開発・生産する重要性が一段と高まっているとの認識だ。

 東レの西村友伸テキスタイル事業部門長は、26年度に関して「北陸産地への発注量を減らす考えはない。逆に少し増やすといった前向きな見通しを持っている」と話す。用途別で見ると、学生服地などは流通在庫の調整が長引いており、大きな期待はできないものの、スポーツ衣料用途などは引き続き堅調に推移するとみる。

 また、婦人・紳士服地など一般衣料用途に対しても強気だ。「昨今の猛暑で暑さ対策など機能素材のニーズが急増しており、合繊素材にとってチャンス」と指摘。暑さ対策など機能を切り口としたテキスタイルの開発と生産を進めるために、北陸地域など国内産地の発注先企業が持つ技術やノウハウの重要性が一段と高まったと強調する。

 国内産地への発注量を維持・拡大するためにも、今後は産地企業との取り組みによって開発・生産する機能テキスタイルを国内外のアパレル向けて一段と積極的に提案していく。

〈旭化成アドバンス/アウトドアが好調を持続/裏地の生産量は実需ベースに〉

 旭化成アドバンスの繊維事業の第3四半期(4~12月)はほぼ計画通りとなる見通しだ。繊維資材が特需もあって前年同期比増で推移するが、これは第4四半期(2026年1~3月)に落ち着く見通し。

 衣料素材は、ファッション用途が微増で、前年も好調だったアウトドアは横ばいで推移。裏地は、昨年10月に旭化成からキュプラ繊維「ベンベルグ」の裏地事業が移管されたこともあって伸びている。ユニフォームでは欧州向けが伸びるなど特需もあった。

 北陸産地との取引量は、スポーツ・アウトドアが好調を維持する。26年も順調に推移する見通しで、顧客の販売が伸びる中で先の受注も獲得していると言う。海外向け、国内向けとも順調で、北陸への発注量も今年並みを維持する見通しだ。

 一方ファッションアウター用途は市況低迷の影響が見られる。ベンベルグ使いは健闘しており、フィブリルタイプなどが伸びているが、ジアセテート使いが苦戦している。26年は中国市場の回復に期待する。長く景気の低迷が続く市場だが、足元ではベンベルグ使い以外でも市況の回復が見られ始め、来年は販売拡大を狙う。

 一方、裏地は厳しくなるとみる。上半期(4~9月)は、ベンベルグの生産量回復に合わせて休止していた品番を復活させるなど生産量を増やしてきたが、足元はその動きが一服。実需ベースの生産に戻す中で、4月以降は今年に比べると若干の減速を見込む。

 そのほかの用途ではインナーは低迷が続くほか、ジアセテートの回復も遅れるとみる。

〈一村産業/アパレルを巻き込んで開発/日本起点の5極連携も〉

 一村産業の繊維事業の第3四半期(4~12月)は、欧州ラグジュアリー向けの苦戦もあって低迷した。2026年は欧州向けや中東向けなどの市況を厳しくみて、新しい商品の打ち出しなどに注力する。

 26年はユニフォーム用途が夏物を中心に堅調に推移するとみる一方、欧州ラグジュアリー向けは低迷が続き、中国の市況低迷の影響も懸念される。順調に推移していた中東向けも、中国勢の台頭や流通在庫の増大などの影響が見られだし、来年の市況を慎重にみる。

 中東向けでは新たな取り組みを重視し、原綿にこだわった開発などポリエステル短繊維織物ならではの新商品の打ち出しに注力する。旗・幕・幟(のぼり)などの繊維資材についても、物流でのサービス強化など新たな取り組みを検討して拡大を狙う。

 今年の北陸産地への発注量は前年比増となる見通し。特に染色がユニフォームなどで拡大している。グローバル展開を強化する中でも生機の取引量は落としておらず、微増となる見通し。

 26年の北陸との取り組みでは「既存商品では勝負しづらい。開発を継続して新商品をいかに打ち出せるか」(竹内弘二繊維事業部門長)と話す。アパレルの顧客も巻き込み、産地を含めて3者一体となったモノ作りで開発を強化していくことをポイントに挙げる。今年もアパレルの顧客とともに北陸産地を訪問する機会を増やしているが、モノ作りの現場を見てもらうことで新しい芽が出つつあるという。

 日本のボトルネックに対応する海外生産の活用も視野に入れ、北陸への発注量を落とさないことを前提に、「日本起点の5極連携」も検討していく。