特集 北陸産地(4)/新たな展開が進展/カジグループ/第一織物/マルオリグループ/松文産業
2025年12月23日 (火曜日)
〈カジグループ/アウトドア用途がけん引/26年は各事業を拡大〉
カジグループは2026年、織物、糸加工、ニットの各事業で拡大を狙う。主力のアウトドア、スポーツ用途の市場環境は厳しくなるとみるが、ブランディングと戦略的プライシングに注力して成長を図る。
織布のカジレーネの25年8月期は前年比30%強の増収となった。新工場「カジファクトリーパーク」(KFP)が1月から全台フル稼働となったことが主因で、26年は15%の増収を狙う。新工場稼働前の24年と比べると26年は54%増とする計画だ。
25年の大幅増収は主にアウトドア、スポーツ用途の拡大によるもの。自社ブランド「カジフ」を軸にするファッション用途は着実に伸びている形だが、26年は20%増を狙う。
設備はフル稼働が続く中、高付加価値品へのシフトで商品構成を変えていく。そのためにカジナイロンの加工糸使いを軸にした開発を強化していく。人件費の増加や糊(のり)剤など副資材の高騰などへの対応も重視し、来春ごろからの値上げにも取り組む。
糸加工のカジナイロンの25年は微増収だった。26年は設備更新の効果も出し、6%の増収を狙う。設備は古くなった石川製作所製の仮撚り機を全て廃棄し、TMTマシナリー製の新台に入れ替える。新台の設置は年内に完了し、来年1月からフル稼働する予定。新台による収率の向上やオートドッファー機能による省力化のほか、生産のデジタル管理や修繕費の削減などにつなげる考え。
生産品のさらなる高付加価値化にも注力し、東レのナイロン特品や旭化成のキュプラ繊維「ベンベルグ」使いを軸に、「これまでにない加工糸の開発を強化する」(梶政隆社長)考えだ。
〈第一織物/新商品の打ち出しを強化/今期は15%増を計画〉
第一織物(福井県坂井市)の前期(2025年11月期)は売上高横ばいで微減益となったもようだ。今期(26年11月期)は新商品の打ち出しを強化し、15%の増収を狙う。
前期の売り上げは欧州や日本が伸びたものの、アジアが苦戦し、10%増を狙った計画には及ばなかったもよう。アジアは中国の回復が遅れ、これまで健闘していた韓国も失速した。韓国は主力のゴルフブランド向けに一服感が出たもので、今後はゴルフ以外のブランドへの販売も強化していく。
欧州は、新商品の投入が奏功した。定番的に流れている商品は徐々に減ってきていた中で、新しい商品でカバーした。日本向けは、営業の強化が奏功したほか、ネット販売もまだ大きく売り上げに貢献してはいないが会員数が700社を超えるなど着実に広がっている。
今期は新商品の拡大に注力し、約15%の増収を狙う。9月に6年ぶりに開いた総合展でこれまでの生地開発の成果を披露したが、陰影のあるナイロン織物「ディクロス トーン」や中空糸使いの軽量感とナチュラルな外観を持つ高密度織物などが好評を得た。これら新商品の訴求を、日本、欧州、アジアなどグローバルに強化して売り上げ拡大につなげる。夏にも使える肌離れの良い生地など気候変動を見据えた提案も進める。
回復が遅れている中国市場では、新商品の打ち出しに加え、ニッケグループの協業による販路拡大にも注力する。米国向けの拡大に向けては、主力のトップゾーンだけでなく数量が見込める価格帯での開発も検討していく。
〈マルオリグループ/今期は売上高340億円に/水平・垂直連携を強化〉
マルオリグループ(石川県中能登町)の今期(2025年12月期)は、連結売上高340億円となる見通しだ。当初計画の350億円からは下振れするが、前期比では8~9%の増収を見込んでいる。
丸井織物と旧宮米織物のテキスタイルは、7月に発生した火災の影響で数量が落ち込んだが、通期では微増を予想する。火災で被害を受けたエアジェット織機56台については、11月後半から新しい織機への入れ替えを進めており、年内に全台がフル稼働する予定。
オリジナルグッズのオンデマンドサービス「UP―T」(アップティー)を柱とするオンデマンドビジネスユニット(BU)は、14~15%増を見込む。連結子会社のアップティー(金沢市)も10%強の増収で、黒字化する見通し。
産業資材BUはティーバッグが順調に推移したほか、メルトブロー不織布の本格稼働もあって20%以上の増収となる見通しで、トレーディングBUも若干の増収とみる。
来期からの新中計は全てのBUを伸ばして3年後に連結売上高500億円を目指すもようで、初年度は10%の増収を狙う。産地での水平・垂直連携に取り組むとともに、生産品の高度化やグローバル展開の進化などに注力する考え。
デジタル投資も重視する。引き続き工場内の見える化を進めるとともに、「産地連携で産地の力を高めていくための連動に力を入れる」(宮本米藏副会長)とする。
〈松文産業/改めてモノ作りに注力/ロゴマークも一新〉
松文産業(福井県勝山市)は、この数年で進めてきた全社一体となって動く体制づくりに一定の手応えをつかみ、2026年は改めてモノ作りに注力する方針。生産体制の整備とともに、開発の強化に注力する。
鶴岡工場(山形県鶴岡市)での設備更新に加え、今期(26年3月期)は勝山工場での体制整備にも注力している。勝山工場では中期的な視点でレイアウト整備に取り組んでおり、設備の更新も進めている。
現在は製織準備工程の整備を進めており、ワーパーを新たに導入して1ライン増やすほか、来年の稼働予定でビーマーも設置した。新しい設備の導入で扱いが難しい糸に対応し、対応のスピードも高める考え。織機は昨年に続いてエアジェット織機(AJL)への更新も進めており、3月末までにAJL11台の導入を完了させる。
開発は、主力のファッション用途に加え、将来に向けた新しい用途にも注力する。新たな開発では、NEDOの「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム」で採択された「スーパー繊維導電糸によるワイヤーハーネス軽量化技術の開発」のテーマに日本導電繊維やクラレなどと参画しており、糸加工での開発に携わっている。
今秋に会社ロゴを一新した。ロゴの更新は20年以上ぶりで、「最先反を生み出す」というキャッチコピーも入れた。ロゴのデザインは「M」をモチーフにして、撚糸から展開する強みを表現。勝山工場、鶴岡工場、栗東工場(滋賀県栗東市)の3工場が一体となった姿も表現した。色は日の丸のように白の背景に赤のロゴとし、顧客である合繊メーカーのグローバル展開に合わせて、同社も海外市場を意識して取り組みを進めていく姿勢を打ち出した。





