繊維ニュース

合繊メーカー 進む構造改革

2025年12月25日 (木曜日)

 合繊メーカー各社が進める構造改革に成果が出始めた。世界的に合繊市況が低迷する中、資本効率を重視する“選択と集中”によって繊維関連事業の収益性に手応えを示す。構造変化に合わせて、事業体制の見直しも進むことになりそうだ。

 東レは、収益が低迷する特定事業・会社の構造改革(ダーウィン・プロジェクト=Dプロ)を進めており、繊維関連ではポリエステル短繊維事業とポリプロピレンスパンボンド(PPSB)事業が対象となる。これまで生産体制の再編・適正化を進めたことでポリエステル短繊維事業は2024年度(25年3月期)に黒字浮上した。PPSB事業も改善が進み、25年度での黒字化が視野に入る。

 帝人は、アラミド繊維事業で25年度上半期(4~9月)までに大型の減損処理を実施するなど抜本的な構造改革を進めた。さらに26年度までに400人超の人員削減と約150億円のコスト削減に取り組む。

 こうした構造改革によって25年度下半期から収益のV字回復を見込む。炭素繊維事業も生産適正化によるコスト構造が改善。複合成形材料事業は赤字が続いていた北米事業の譲渡が完了し、収益性の改善効果が定着した。

 東洋紡はエアバッグ基布事業の収益改善ロードマップを実行しており、タイ原糸工場の稼働率も向上した。タイを中核拠点とする生産体制再構築を進めており、中国のエアバッグ基布製造販売子会社である東洋紡汽車飾件〈常熟〉を帝人フロンティアに売却することも決めた。

 不織布マテリアル事業も外部委託生産を拡大するなど生産体制見直しが進む。さらにアクリル繊維事業子会社の日本エクスラン工業(岡山市)は、需要減退が続く汎用(はんよう)わた生産から撤退する方向を明らかにした。

 旭化成はドラスチックな動きを見せる。このほど、旭化成アドバンスと帝人フロンティアの統合を決めた。メーカー系列の枠を越えた事業統合によって収益力のさらなる強化が狙いとなる。また、キュプラ繊維「ベンベルグ」糸・生地の染色加工を得意とする子会社、富士セイセン(山梨県富士吉田市)の事業停止と清算を決めるなどベンベルグ事業でも選択と集中が進む。

 クラレは、生産子会社であるクラレ西条(愛媛県西条市)でのポリエステル長繊維「クラベラ」の生産を26年末までに停止する。クラレトレーディングも26年1月からクラベラ事業部と繊維素材事業部を統括する「繊維部門」を新設し、事業横断で高付加価値品拡販に取り組む。構造改革に合わせて事業体制の見直しが進む。