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和歌山産地の原糸販売/糸の魅力、生地で伝える/産地連携で新たな商機

2025年12月25日 (木曜日)

 和歌山産地に原糸を販売する各社は、生地開発を通じた提案を活発化させている。高付加価値なモノ作りが求められる中、糸の“表情”が最も伝わる丸編み地を作り込み、顧客に具体的な製品イメージを示すことで提案力を高める動きが鮮明になってきた。

(角川香穂)

 独自性を打ち出すため、紡績糸の提案手法にも変化が表れている。従来は、コストや手間のかからない「糸ひねり見本」や、天竺などベーシックな編み地を顧客に見せる方法が主流だった。

 差別化や企画性が強く求められる現在は、さらに踏み込み、工夫を凝らした生地を提案するケースが増加。難易度の高い試作を通じて糸の個性を引き出し、生産時の留意点まで助言できるようになるなど、単なる素材提供にとどまらない“生地づくり目線”での提案が加速している。

 4、5日に和歌山市内で開かれた「和歌山ヤーンフェア」でも、各社が糸の魅力を引き出した丸編み地を多数披露した。和歌山に営業所を構えるヤギは、産地に拠点を置く意義を重視した開発を進める。甘撚りコーマ糸「FFY Yarn」(ふわふわやん)を使用したテレコ生地では、フジボウテキスタイル和歌山工場(和歌山市)に「この生地に最適な加工」を依頼。その結果、膨らみと柔らかさを兼ね備えた生地に仕上がり、加工技術との組み合わせで糸の特徴を際立たせた。

 「丸編み地の生産も依頼し、産地の活性化に貢献したい」と話すSTXは、11月の「東京テキスタイルスコープ」投票企画で4位に入ったニットキルトを披露した。髙木メリヤス(大阪府交野市)と開発した同素材は、表地と裏地の間に挟む中わたに、蝶理のピン仮撚り糸「SPX」を採用。通常は安価なフィラメント糸を用いることが多いが、加工後に膨らむSPXの特性を生かすことで独特のボリュームと立体感を実現し、新しい糸の活用法として注目を集めた。

 旭化成アドバンスは、綿100%の梳毛糸をリリヤーン形状にした5番手を、裏毛の裏糸に用いた生地を提案。従来の太番手糸に比べてボリューム感のある風合いを実現し、特殊形状糸の使い方に迷う顧客へ具体的な活用例を提示した。シキボウと新内外綿も産地企業と連携し、新規開発糸を用いた意匠性の高い丸編み地をそろえ、糸の可能性を訴求している。

 会場ではSTXが、アビラス(奈良県大和高田市)が展開する、編み立てた糸をほどいて凹凸を残した「デニット糸」での生地試作を決めるなど、新たなモノ作りも始動した。糸と産地の技術が融合し、新たな商機を創出していく。