2025年回顧/染色加工/化合繊産地/綿織物産地/ウール産地

2025年12月26日 (金曜日)

〈染色加工/合繊と天然繊維で明暗/人材の確保が引き続き課題/生産性の向上がカギに〉

 染色加工を取り巻く事業環境は2025年も先の不透明感を増す一年となった。日本染色協会によると1~9月の加工量(数量ベース)は織物が8億687万平方メートルで前年比1・8%減、ニットが2億5153平方メートルで同3・6%減とともに落ち込んだ。その一方、金額ベースでは織物が前年比2・4%増、ニットが0・3%減となっており、コスト上昇分の転嫁が着実に進んだことを表わす結果となった。

 需要は化合繊と天然繊維で明暗が分かれ、特に合繊が堅調に推移した。合繊ではスポーツ・アウトドアがけん引役で、ナイロン薄地織物の染色や透湿防水加工などが好調に推移した。透湿防水加工は、晴雨兼用の日傘など猛暑対策としても需要が拡大。昨年に自動車メーカーの不正問題があった車輌用途も回復する中で、スペースがひっ迫する染工場も見られた。

 その一方で天然繊維は低迷した。長い夏と春・秋の短縮により、Tシャツ用など年間を通じて販売しやすいアイテムでは染色加工量も増え、冷感や消臭などの加工も注目が高まったがコートなどの防寒物は低迷し、特にウールが打撃を受けた。そのような中で、天然繊維が主力の染色加工場が合繊強化の方針を打ち出す傾向もさらに強まった感がある。

 昨年に引き続いての大きな課題が人材不足で、設備に余裕があっても人手が足りず、生産量が上がらない悩みを多くの染工場が抱える。求人への応募を増やすために労働条件を改善し、休日数も増やしていく必要性を感じる染工場も多く、生産量が上がりにくい循環になっている。

 今後に向けては生産性のさらなる向上などが重要なテーマになっている。

〈化合繊産地/アウトドアなどが好調/足元では状況に変化も/産地を取り巻く状況が変化〉

 化合繊の北陸産地の2025年は用途によって明暗が分かれる形となった。用途ではアウトドアやスポーツなどが順調に推移し、中東民族衣装用なども白物を中心に好調を持続した。ユニフォームも在庫調整局面を終えて回復。昨年に自動車メーカーの不正問題の影響があった車輌用途も堅調だった。

 その一方でカーテンなどのインテリアは低迷した。新型コロナウイルス禍での特需以降は回復せず、今年は海外生産シフトも影響した。ファッションも総じて振るわず、日本市場や中国市場などが停滞した。

 ここでは消費動向だけでなく、プロパー販売を重視する流れの中で生地の作り方が変わったことを指摘する声も出ている。

 商品面では、天然繊維調やビンテージ風などが売れ筋となり、遮熱など猛暑に対応する機能素材も注目を高めた。一方でアセテート系など低迷する商品もあった。

 産地のスペースは時期や用途によってまだら模様だったが、アウトドア用途はナイロンの薄地高密度を中心に堅調だった。ただ、この用途も足元では先の不透明感が強まり、26年に向けては慎重な見方が増えている。

 染色のスペースも一部を除いてタイトで、人手不足や年間休日数の拡大などもあって長納期化の課題が続いている。ただ、好調だった用途でも足元では状況が変わっている分野も見られ、先に向けての不透明感が強まっている。

 合繊メーカーの構造改革が大きく進んだことも産地に大きなインパクトを与えた。この中で自販の機運がさらに高まり、先に向けての新たな取り組みがさらに重視される年となった。

〈綿織物産地/生産数量減少が続く/デニムの三備は例外/課題は生産体制維持〉

 東海や播州、泉州など綿織物産地の2025年は総じて厳しかった。小ロット化の加速で受注数量の減少が進んだ。各産地で規模縮小も進んでおり生産体制の維持が喫緊の課題になっている。

 遠州では自販の織布企業は堅調な一方、受託の織布企業は注文が減少した。インテリアや資材などの三河のほか、帯芯の三州も苦戦。一方、知多で手拭いや浴衣などの小幅を手掛ける工場は堅調だった。

 播州の25年の生産数量は前年比10%減の900万平方メートルほどとなりそうだ。この数字が現実になれば19年比で60%減となる。

 数量が減る一方で、最終製品開発の動きは活発で、他産地と連携し、お互いの弱い部分を補完したり、新たな強みを出したりするチャレンジも生まれている。

 高島や泉州、大阪南部では織布工場間で受注量の差が顕著に表れた。高付加価値化や多品種・小ロット路線に転換したところが比較的堅調だった。

 例外的に、デニムを軸とした三備ではビンテージやアメカジなどのトレンドが後押しし、堅調な生産を維持する工場が数多く見られた。特にシャトル織機で織るセルビッヂデニムは訪日観光客消費や海外需要の高まりもあり、生産がタイトな状況が続いている。同織機の生産性の低さも相まって、「1年半~2年待ち」との声も聞こえてくる。

 一方で、岡山県倉敷市で生産が盛んだった帆布は岐路に立たされている。23年に事業を終了した老舗のタケヤリに続き、今年には丸進工業が工場を休業した。

〈ウール産地/夏の長期化で需要不振/合繊への切り替えも加速/中国品の流入加速で苦戦〉

 ウールを得意とする尾州産地の2025年は昨年に続き苦戦した一年だった。暑い期間が長く、ウールの需要自体が振るわなかったことに加えて、合繊素材への切り替えがさらに加速。中国など海外品の攻勢にもさらされた。一方、産地内では新会社設立の動きもあった。

 尾州にとって今年、最も向かい風となったのは気候だ。今夏は記録的な猛暑が続き、10月まで温暖な気候だった。夏が長くなれば、防寒着としてのウールの存在感は薄らぐ。今年はコートの定番生地である紡毛織物が苦戦したことも、それを裏付けていると言える。

 ウール100%やポリエステル・ウール混から、ポリエステル100%やポリエステル・レーヨン混などウールを使わない安価な素材へ切り替わっていることも、尾州にとって逆風となった。円安で仕入れコストが上がっていることなどもあり、発注側の「なるべく安く」という思惑が働いた。

 中国からの流入も加速した。糸から製品まで一貫して作るため、必然的に尾州への注文は細ることになる。中国は内需の不振などで景気減退が続いており、手近な市場である日本に手を伸ばしている。かつては敬遠していた小ロットでも積極的に受注を請け負っている。

 新会社は7月に設立した、小塚毛織(愛知県一宮市)とスタイレム瀧定大阪による合弁会社、カナーレジャパン(同)だ。シャトル織機によるモノ作りの維持と技術継承が狙い。産地の規模が縮小していく中で、前向きな動きと言える。今後、同社はシャトルを用いたファンシーツイードを生産し海外販売を進める。