特別インタビュー(前)/東レ 大矢 光雄 社長/経済は緩やかに回復/下振れリスクにも目を
2026年01月05日 (月曜日)
2026年が幕を開けた。世界の情勢は不透明感や不確実性を増しているが、東レの大矢光雄社長は「下振れリスクはあるが、経済は回復に向かう」と前向きな予想を立てる。同社は今年、100周年を迎えるほか、新たな中期経営課題を始動するなど、節目の年になる。経済や繊維業界の方向性、東レの針路を聞いた。(桃井直人)
――2026年の世界経済・景気をどのように予想していますか。
拡大の幅は異なるのですが、各国・地域ともに26年は25年と比べて経済が回復する見通しを立てています。そうした見立てに対して、大きな違和感は覚えません。自動車産業も昨年よりは改善すると考えられ、今年は緩やかな回復傾向が続くのではないかと予想しています。
下振れリスクの一つは米国の金融政策です。利下げが行われると国際的な資金の流れや為替に影響を及ぼします。日本は利上げが取り沙汰されており、個人消費がどうなるのかを含めて注視が必要です。いずれにせよ、「下振れもある」という前提でマネジメントすることが重要です。
――米国の相互関税や日中関係悪化の影響は。
米国の関税政策ですが、繊維で言うと、税率発表の時には既に顧客との間で価格が決まっていましたので、影響はありませんでした。今後は値下げ要求があるかもしれませんが、当社は価値に見合った適正な対価を得る「戦略的プライシング」が根付いているので心配はしていません。
日本と中国との関係悪化についてですが、ビジネス面にはあまり影響を及ぼさないと考えています。中国は景気低迷が指摘されますが、成長率は日本よりも高く、政府のてこ入れもあります。ただ、消費材は良いところと悪いところの差が拡大しているのが懸念材料です。
――日本に目を移すと、合繊メーカーなどでも再編が続いています。
各企業がそれぞれの方針に基づいて実施していますので、その方針に対して言えることはありません。ただ、繊維業界全体の話をすると、供給面での不安は大きくなりつつあると感じます。東レの役割や期待は大きくなると思いますので、産地や市場が維持・拡大できるよう力を注ぎます。
――そのような年に、東レは100周年の節目を迎えます。
織物で例えるならば、「新しい価値を通じて社会に貢献する」という企業理念が経糸です。そして、時代に適合した経営が緯糸になります。歴代の経営者が連綿と取り組んできたことで100年という歴史が重ねられました。この経糸と緯糸は次の100年も変わりません。
バックボーンになっているのは、創業以来変わることのない、人を基本とする経営です。人を大事にし、人材育成にも力を入れてきました。自由闊達(かったつ)で、チャレンジ精神が旺盛な企業風土が醸成され、それによって織物が仕上がりました。





