跳ねる連携/対論/産地と歩む繊維産業の未来/東レ/蝶理
2026年01月05日 (月曜日)
日本の繊維産業にとって国内の繊維産地はこれまで大きな役割を果たしてきた。規模こそ縮小したものの、現在でもその存在感は大きい。特に素材メーカー・商社にとっては、さまざまな課題に直面しながらも産地は今後も共に歩むパートナーである。素材メーカー・商社の担当者が、産地との連携の可能性について論じる。
〈東レ テキスタイル事業部門長 西村 友伸 氏/産地は繊維産業の原点〉
――日本の繊維産業にとって産地とは何でしょうか。
一言で表すなら、繊維産業の“原点”であり“要”でしょう。当社も長年にわたって北陸を中心とした産地と組んで高次の織・編み物を生産し、付加価値を実現してきました。そこでの経験などの中から原糸の進化も可能になり、例えば独自の複合紡糸技術「ナノデザイン」のようなものが生まれました。東レ合繊クラスターの取り組みを20年以上続けているのも、そうした産地の技術力、連携力、自立力を高めるお手伝いをしたいからです。当社の原糸工場である石川工場(石川県能美市)と産地企業をデータ接続する、デジタル技術で企業を変革するDXも開始しました。
アパレルからは、もっと生地を海外で生産・供給してほしいというニーズがあることは事実です。しかし、日本でしかできないモノ作りがありますから、しっかりと日本で生産を続けなければなりません。やはり産地との取り組みが東レの強みであり、日本の繊維産業の強みです。素材メーカーが原糸を開発し、産地が高付加価値なテキスタイルにして、それを素材メーカーが世界に販売するというサプライチェーンをこれまでも作ってきました。
――一方、課題もある。
産地が抱える大きな課題が人手不足です。設備投資しても、それを稼働させる要員が不足しています。給与水準や休日数などが要因ですから、なんとかこれを変えていかなければなりません。産地に生産を委託している合繊メーカー・商社が、しっかりとした価格で生地を販売し、委託加工料を引き上げていけるようにすることに尽きます。そのためには素材の良さをどうやって消費者に伝え、高級ゾーンの商品に採用してもらえるかが問われます。アパレルともっと話をして、売り場で素材を訴求してもらえるような好循環を作る必要があります。
また、他産業から繊維に移ってくる人材も少なからずおり、そういった人は「繊維は面白い」と言います。繊維の魅力をもっと発信することが重要です。
――素材メーカー・商社と産地が目指す未来は。
日本の繊維産業そのものを強くするしかありません。生地・製品の輸出を強化しなければなりません。アパレルの海外進出のメーカーとしても協力します。同時に、海外アパレルの生地バイヤーをもっと日本に呼び込まなければ。その点で「東京テキスタイルスコープ」(TTS)のような展示会をもっと盛り上げる必要があります。それと、例えば日本の産地企業と協力して海外で生地を生産し、産地企業がライセンス料や技術指導料といった形で収益を得る仕組みを作ることも一つの方向になるかもしれません。
〈蝶理 常務執行役員 繊維本部長 芦田 尚彦 氏/日本の生地を世界に売る〉
――日本の繊維産業にとって産地の役割とはなんでしょうか。
例えば30年前を振り返ると、当社も北陸には福井と石川の両産地に支店があり、そのほか足利や桐生、五泉などにも支店を置いて産地と密着した事業を展開していました。当時は川下も含めてまだ国内生産が多く、最終的な仕向け地も一部は北米や欧州への輸出がありましたが、やはり国内が中心でした。しかしその後、韓国・台湾そして中国の台頭によって日本の産地はコスト競争力の面で劣勢となり、縮小してきました。当社も現在では支店・出張所を置いているのは北陸(金沢市)と岡山だけです。
それでもまだ日本の産地は、例えば糸加工なども含め、サプライチェーンに深みがあります。モノ作りに対する真摯(しんし)な姿勢を見ていると、もっと生地を売って、産地からの仕入れを増やさなければいけないという思いが強い。そうでなければ、商社としての立ち位置もなくなります。そのためにはもっと出口に近いところを強化する必要がありますから、米国や欧州の人員を増強しています。やはり世界に向けて日本の生地をもっと売ることが必要です。現在、日本の生地を採用できるのはトップゾーンの商品だけです。それで産地の設備が回るのかという問題がありますが、海外を含めればトップゾーンだけでもそれなりの市場規模があります。そこで海外展示会に向けてチームを作って取り組んでいます。マーケットインとプロダクトアウトの両方をできるのがテキスタイルの強みですから。
――一方で産地は課題もあります。
一つは人員の確保です。省人化のための設備投資がもっと必要でしょう。そのための支援もしてきました。低価格品については海外生産に移っていきますから、高付加価値品に特化するしかありません。そして、テキスタイルの出口をしっかりと作ることが重要。アパレルなど川下の取引先を産地に連れていく試みも続けています。テキスタイルが最終製品の付加価値につながるようにしなければなりません。
ただ今後、染色スペースが一段と不足する可能性があるという問題は無視できません。海外での染色も必要になるでしょう。当社も既にウラセ(福井県鯖江市)さんと合弁でインドネシアに染工場を持っています。これまでブラックフォーマル用生地の染色が中心でしたが、それ以外の用途の加工も増えています。
――産地と連携して目指す姿は。
産地も世代交代が進んでおり、デジタル技術に強い世代が中心になりつつあります。そういった人たちと連携することで、いろいろと新しいアイデアも出てくると思います。





