跳ねる連携/対論/産地と歩む繊維産業の未来/旭化成アドバンス/帝人フロンティア
2026年01月05日 (月曜日)
〈旭化成アドバンス 取締役兼専務執行役員 繊維本部長 坂元 盛也 氏/商社の腕の見せどころ〉
――産地はどういった役割を担っていたのでしょうか。
私は1991年入社ですが、当時は石川県に研究所があり、そこで研修したことを覚えています。産地でのモノ作りが盛んで、素材メーカーも拠点を置いて、一緒にモノ作りをしてきた歴史があります。また、原糸メーカーからすれば、原料のフィードバックの役割も大きかった。撚糸や織・編み工程それぞれで糸の使われ方や状態を定点観測することができ、産地企業から情報をもらうことで糸の品質を高めることができたのです。そういった働きは、最近は少し弱まっているのが問題です。当社の場合、キュプラ繊維「ベンベルグ」の裏地事業が旭化成から移管されたこともあり、改めて産地で原糸からのモノ作りを強化しています。
――一方で現在の産地には課題もあります。
産地で生産するテキスタイルを海外に販売しようとする際、納期問題がクローズアップされるようになりました。短納期への対応力が弱まっていることが問題です。特に染色加工の納期長期化が課題になっています。海外のテキスタイルメーカーは一貫生産が多いため、染色加工がボトルネックになるケースは少ない。このため競争になった際に、日本の生地は納期問題が原因で失注するといったケースもあります。
このため需要家からのオーダーの取り方と、生産スペースの確保など工夫でリードタイムをどれだけ短縮できるかが問われます。ある程度は先行して産地企業に発注しながら、受注を獲得することでリードタイムを短くすることもできます。大きな在庫を持ちにくいのが難点ですが、だからこそ商社の腕の見せどころでもあります。また、一部で加工場と協力し、設備投資も進めています。
もう一つは、海外での染色を絡めた生機輸出も一部で行っています。ただ、これは問題が起こったときにどうやって対応するのかといった問題がネックになります。いずれにしても日本でしか作れないものをやるしかない。そのためには、国内でもう一つ付加価値を創っていくことが求められています。
――産地はどのような未来を目指すべきでしょうか。
産地企業の間で力の差も広がってきました。また、後継者難という問題もあります。こうしたことを考えると、産地の規模は、さらに縮小する可能性が高い。同時に、非常にしっかりと事業を維持・拡大している産地企業もあり、そういった企業が現在の産地をリードしています。素材メーカー・商社は、そういった産地企業としっかりと取り組み、発注していくことが必要です。そのためには、やはり開発力が重要になります。
〈帝人フロンティア 執行役員 衣料繊維部門 衣料素材本部長 東 政宏 氏/付加価値創造しかない〉
――産地はどのような役割を担ってきたのでしょうか。
新入社員時代、産地で研修してもらい繊維のことを一から教えてもらいました。そういった教育的役割も大きかったのです。現在でも技術だけでなく文化も含めて各産地に凝縮されて残っており、まさに繊維産業のコアです。開発力の面では、まだ日本の繊維企業に一日の長があります。なかなか他国ではまねのできないことが多い。こうした産地の持続可能性や国際競争力をどうやって高めていくかが問われています。
――それには課題も多い。
グローバル競争の激化に対応できていない部分があります。産地は分業で成り立っていますが、国内の産業構造が脆弱(ぜいじゃく)化したことでスピーディーな量産ができず、納期の長期化という問題が深刻です。また、人手不足の問題も大きい。織・編み工程などは比較的自動化・省人化ができますが、染色加工では難しいのが課題です。
もう一つは、川上と川下の連携が弱まり、川上から川下への流れを考えたビジネスが減っているという問題もあります。このため当社は“工と商の融合”を目指しており、成果も上がっています。例えば製品担当部署が自社の差別化糸・生地を使うケースが増えています。
また、産地企業の技術開発・高付加価値化の支援やデジタル技術で企業を変革するDX対応も重要でしょう。業務の透明性を高め、需要予測の精度を高めることで各工程の稼働状況や仕掛かり水準などを透明化すれば、もっと精度の高い発注と生産ができ、ロス削減につながるはずです。やはり企業間の協力がもっと必要なのではないでしょうか。これは素材メーカーも含めて、日本の繊維産業は“競争しながら協働する”ことが必要だと思います。
――素材メーカー・産地が連携して目指す姿は。
付加価値の創造しかありません。もちろん高付加価値品が求められる高級ゾーンだけでは量の確保が難しいという問題はあります。しかし、目を海外にまで向ければ、それなりの量の市場が存在します。
また、日本で作る高付加価値テキスタイルを世界に発信すれば、結果として日本の取引先も増えるでしょう。メード・イン・ジャパンを市場に合った形でタイムリーに販売できれば、ブランド化にもつながるはず。特に化合繊素材は、特殊なものを作ることができますから、まだまだ可能性がある。そして生産工程だけでなく流通の仕組みまで含めてブラックボックスを作ることができれば、今後も日本でしか作れないテキスタイルを世界に発信し続けることができると思います。





