繊維ニュース

新春アンケート(1)/2026年は跳ねるか?どうなる繊維産業

2026年01月06日 (火曜日)

〈原材料価格は?/8割超が「上がる」〉

 設問2として「繊維製品の原材料価格はどうなるか」を聞いた。「上がる」は前年から6ポイント増の82%となり、原材料価格の上昇が今後も続くとみる企業が大勢を占めた。「変化しない」は10%にとどまり、「下がる」との声はほぼなかった。

 新型コロナウイルス禍やロシアによるウクライナ侵攻を背景に物流網が混乱し、原材料価格は急上昇した。その後も高止まりが続いており、「上がらない要素は全くなし」(イトキンの前田和久社長)という見方が多くの企業で一致している。円安の影響による輸入原燃料や材料価格の高止まりに加え、人件費の上昇も重なり、「当面は高値トレンドが継続する」(旭化成の工藤幸四郎社長)と警戒感を示す。

 中東情勢など地政学リスクの不透明さを指摘する声も多い。「賃金上昇をはじめインフレ基調の継続による国内産地企業の加工料金アップ、輸送費の高騰も継続することが予想され、今後もさらなるコストアップが想定される」(東レの沓澤徹専務執行役員)とする。

 また、「人件費の上昇継続により、原材料価格は上がる」(しまむらの高橋維一郎社長)として、構造的な課題として人件費を挙げる企業も多い。

 サステイナビリティー対応や特定素材の不足も価格上昇圧力となっている。ウールについては、高級素材需要の増加に加え、豪州やニュージーランドでの生産減少による供給制約から、「2026年も価格は上昇基調と予測される」(御幸毛織の渡邉紘志社長)との見通しが示された。

 一方、価格は「変化しない」と予測する向きも一部にある。「利上げにより為替が円高に振れ、原材料を含む輸入品の価格高騰に歯止めがかかることを期待」(伊藤忠商事の武内秀人執行役員)、「中国の景気回復の遅れにより需給バランスが改善しない」(リュクスの金子忠正社長)といった声があった。ただ、「円安是正には時間がかかり、輸入コストは依然高水準で推移する」(セーレンの山田英幸社長)と、現行水準での横ばいを見込む声もある。

 「分からない」とする企業もあり、「トランプ関税が与える世界景気へのマイナスインパクトは続く」(モリリンの森俊輔社長)、「積極財政など変動する要素が多すぎて判断できない」(おたふく手袋の井戸端勇樹社長)といった慎重な意見も聞かれた。

 昨年11月7日の国会答弁での高市早苗首相による「台湾有事」発言を契機に日中関係は冷え込んだ。

「地政学リスクやサプライチェーンの変動が継続する可能性があり、価格の安定は見込みにくい」(アパレルメーカー)との指摘通り、26年に向けても不安定な調達環境が続きそうだ。コスト増をいかに吸収し、あるいは価格に転嫁するか、各社は難しい判断を迫られている。

〈拡大する小売り業態は?/ネット通販、SPAが突出〉

 設問3として、繊維・ファッション業界で「今後の成長が見込まれる小売業態は?」を聞くと、前年に引き続き「ネット通販」(93票)と「SPA」(51票)への期待が突出する。消費者のデジタルシフトや節約志向を背景に、利便性とコストパフォーマンスに優れた業態への支持が集まる構図が浮き彫りになった。

 圧倒的な支持を集めたネット通販については、単なる販売チャネルの移行にとどまらず、実店舗との融合(OMO)やデジタル技術の活用が進展。「スマートフォンの普及により、時間や場所を問わず買い物ができ、利便性と多様な選択肢がある」(オンワードホールディングスの保元道宣社長)と、購買体験の質的な向上が成長を支える。

 世代間の変化を指摘する声も多い。「特に若い世代にはネット通販での買い物が当たり前になっている」(アツギの日光信二社長)ほか、電子商取引(EC)市場は「OMO推進やSNSを通じたコミュニケーション活動など、スムーズな購買体験につながる取り組みの強化、購買行動の変化が、さらなるECの定着及び継続的な成長につながっていく」(岡本の岡本隆太郎社長)状況だ。

 ネット通販に次ぐSPAについては、経済環境の変化が追い風になるとの見方が強い。物価高による消費者の選別眼が厳しくなる中、「経済の二極化によって、今後日本のファッションブランドにはより高いコストパフォーマンスが求められるようになる。そうした商品を自社で開発できるSPAに理がある」(バロックジャパンリミテッドの村井博之社長)と指摘する。

 一方で、百貨店などの既存業態については見方が割れる。「百貨店も高感度で上質な消費を中心に順調な推移を見込む」(百貨店)と、富裕層ビジネスに勝機を見いだす企業がある。一方で「インバウンドの影響で25年は過去最高売り上げを出した店舗もあったが、実績を見るとインバウンド需要はピークアウトしている」(商社)と、訪日客頼みの成長に慎重な見方を示す声もあった。

 また、新たな成長領域として「リメークはサステの観点から注目されていることや、古着についても過去と比較して抵抗感がある人が少なくなってきている」(アパレルメーカー)といったリユース市場や、「睡眠アプリ『goomo』の発表により、アプリやコネクテッドモデルのマットレスの販売の強化をしていく」(nishikawa)といったヘルステック分野への言及もあった。

 「勝ち組と負け組はより鮮明になるのでは」(合成樹脂製品・産業機械メーカー)との指摘がある通り、消費者の生活様式や価値観の変化に対応できるかどうかが、今後の明暗を分けることになりそうだ。

〈店頭価格は?/コスト転嫁と高付加価値化進む〉

 設問4の「店頭価格は?」については、依然として「上昇基調が続く」との見方が強い。アンケートでは26年の価格が「上昇する」との回答は75%に達した。「変化しない」は22%、「低下する」は3%だった。「上昇」の回答率は23年の89%をピークに、25年予測の83%、26年予測の75%と緩やかに低下してはいるものの、依然として大多数が値上がりを予測する「高止まり」の状況を予測する。

 上昇予測の背景には、構造的なコスト高がある。「店頭価格が下がる要素が少なく、上がるとみるのが妥当」(旭化成の工藤幸四郎社長)との見方が支配的だ。具体的には「原料、物流、人件費の上昇傾向に加え、円安によるコスト高の中、最終製品への価格転嫁は継続し、小売価格は上昇する」(東レの沓澤専務執行役員)など、複合的な要因が価格を押し上げている。

 特に、人件費や物流費の影響が大きい。「為替の影響次第だが、人件費や輸送費の上昇が小売価格に転嫁される」(しまむらの高橋社長)としており、サプライチェーン全体でのコスト負担が店頭価格に波及する構図は変わらない。

 一方で、単なるコスト転嫁だけでなく、付加価値による単価アップを志向する動きも定着しつつある。「高付加価値商品へのニーズの高まりによって価格は上昇する」(オンワードホールディングスの保元社長)や、「快適性を追求した高機能製品やサステなど高付加価値商品の需要増加により、店頭価格は上昇し、価格の二極化が進む」(大和紡績の野間靖雅社長)といった声が聞かれる。適量生産への転換も価格維持の一因となっており、「『定価販売重視』へのシフトで値引きよりも適量生産・高付加価値化で利益確保を狙う動きが強まる」(御幸毛織の渡邉紘志社長)との意見もある。

 ただ、「上昇」の比率が前年比でやや低下し、「変化しない」が22%(25年予測比6ポイント増)に増えた背景には、消費者の節約志向への警戒感もある。「一般消費者の家計における衣料品支出に割く金額が低下するため、価格が高くても買う理由が薄い」(生地商)といった指摘や、「高級品との二極化が進むものの、景気好転とならない限り、店頭価格は弱含み」(帝人フロンティア)と、値上げ疲れを懸念する声も一部にある。

 23年のような急激な一斉値上げの局面からは落ち着きを見せつつあるものの、26年に向けてもコスト高を背景とした“インフレ定着”の傾向は続きそうだ。