新春アンケート(2)/2026年は跳ねるか?どうなる繊維産業

2026年01月06日 (火曜日)

〈国内生産数量が拡大するのは?/機能性にたける「化合繊」に期待〉

 設問5の「国内生産数量が拡大する工程は?」では、前年に続き「化合繊」への期待が突出した。化合繊を挙げた企業は24社に上り、2位の「縫製」(14社)を大きく引き離した。円安を追い風に、日本の技術力を生かした高機能素材や環境配慮型素材で、世界市場での競争力を高めようとする姿勢が鮮明だ。

 化合繊が支持される最大の理由は、日本独自の技術力に対する再評価にある。「世界的に化合繊ニーズの高まりがあり、機能性にたけた日本の合繊」アパレルメーカー)への期待は大きい。

 用途の広がりも成長を後押しする。「いずれも用途が多岐に広がるのと、アウトドア、ヘルスケア用途での国内ならではのモノ作りの価値が訴求できている」(旭化成の工藤幸四郎社長)ほか、「地産地消の推進や少ロット対応、輸出向けのメード・イン・ジャパン商品の生産が拡大すると予想」(帝人フロンティア)と、輸出拡大を見据えた動きも目立つ。

 サステイナビリティー対応も国内生産拡大の鍵を握る。「環境負担の軽減を目的とした化合繊が拡大する」(紳士服メーカー)、「機能性や環境対応ニーズの高まりを受けて、高機能繊維やサステ素材は拡大が期待される」(合繊メーカー)といった声が相次ぎ、付加価値の高い環境配慮型素材が国内生産のけん引役となりそうだ。

 一方、労働集約的な「縫製」分野では、量的拡大よりも質的転換が進む。「オーダーメード等の専門性の高いものの縫製は国内回帰」(インナーメーカー)、「DtoCブランドやカスタムオーダー品での国内縫製ニーズが増加」(クロスプラスの山本大寛社長)など、小ロット・短納期・高付加価値品への特化が生存戦略となっている。

 「その他」で注目されるのが資源循環関連分野だ。「経産省から繊維製品における資源循環ロードマップが出され、これに対応しなければならないという脱炭素・環境対応の視点と、消費者・ブランド側からのニーズの高まり」(商社)を背景に、「リユース・反毛・リサイクル」を挙げる声があった。循環型経済への移行に伴い、静脈産業とも連携した新たな国内生産モデルが生まれつつある。

 ただ、楽観論ばかりではない。「国内生産は、さらなる高度化・高付加価値化の流れは継続するが、量的な拡大が進むことは想定しにくい」(東レの沓澤徹専務執行役員)、「国内生産は既に縮小傾向にあり、拡大は見込めない」(伊藤忠商事の武内秀人執行役員)といった冷静な見方も根強い。人手不足などの課題を抱える中、国内生産は「量から質へ」の選別が一段と進みそうだ。

〈海外生産・調達を拡大するのか?/リスク回避で欠かせないベトナム〉

 円安やコスト高が続く中、繊維・アパレル業界では海外生産・調達を再び拡大する動きが強まっている。「海外生産・調達を拡大するか」の設問6では、「拡大する」との回答が78%に達した。25年予測の76%から2ポイント上昇し、23年水準(79%)に迫る。

 生産拠点の分散が進む中、設問7の「拡大させる場合、重視する国はどこか」を聞いたところ国別ではベトナムが中国を上回り、首位となった。

 ベトナムは「チャイナ・プラスワン」の受け皿にとどまらず、品質や安定性が再評価されている。「政治、人材、一元管理の面で安定感に重きを置き、リスク回避を見据え欠かせない存在」(学生服メーカー)と信頼を寄せる声がある。「生産における地政学リスクを考慮すると、久しく言われていたチャイナ・プラスワンへの本格的な取り組みを加速させる時期。工場の安定性に加え、品質における信頼度も向上している」(ジュンの原誠常務)と評価する。

 一方、2位(46票)の中国については、単純な撤退ではなく、強みを生かした使い分けが進む。「中国は一定レベル以上の全ての素材がそろい、小回りの利く生産対応が可能なために選択肢から外せない」(ニッケの金田至保取締役)、「原料インフラと輸送リードタイムにおいて、中国が主であることに変わりない」(福助の三條毅司取締役)といった声が根強い。「機能性衣料の生産拠点は中国市場が非常に大きく、材料および加工、生産はまだ中国シフトにメリットがある」(紡績)と、高付加価値品や短納期対応での優位性は依然として高い。

 3位のインドネシア(36票)など、他地域への関心も高まる。「ASEANは、中国偏重リスクの緩和において外せないため、生産安定性とコストバランスを見ながら拡大を見込んでいる」(岡本の岡本隆太郎社長)と、分散化の動きが加速する。「当社で販売する商品の97%程度は海外生産。生産地は地政学リスクやコスト高を考慮して中国から東南アジアへの分散が進む」(しまむらの高橋維一郎社長)と、拠点再編を進める企業もある。

 新たな調達先としてインド(12社)を挙げる企業も増えた。インド政府は、30年までに繊維・アパレル輸出額を現在の約400億ドルから1千億ドル規模へ拡大する目標を掲げ、産業全体のコスト構造を見直す包括的なロードマップを策定。今後の拡大余地は大きい。

 26年に向け、コスト削減に加え、「BCP(事業継続計画)」と「品質・機能」を両立させたサプライチェーン再構築が、各社の重要課題となりそうだ。

〈バングラデシュ「LDC卒業」/関税増に警戒感高まる〉

 チャイナ・プラスワンの有力候補地として存在感を高めてきたバングラデシュは、2026年11月に国連の後発開発途上国(LDC)認定から卒業する。これにより、日本向け輸出で適用されてきた特別特恵関税(無税)が適用外となる可能性があり、業界ではコスト増への懸念と、その後の競争力を巡り見方が分かれている。設問8ではその影響を聞いた。

 最大の影響として挙がるのが、関税復活による調達コストの上昇だ。「これまで享受していた特恵関税のメリットがなくなることで、コストメリットが薄れる懸念がある」(伊藤忠の武内秀人執行役員)との声がある。卒業に合わせ、日本との二国間FTA(自由貿易協定)締結に向けた動きもあるが、「もし締結できない場合は低価格帯商品への影響はかなり大きい」(スポーツメーカー)と警戒感を示す。

 一方で、豊富な労働力と蓄積された生産ノウハウを背景に、優位性は揺らがないとの見方も根強い。「同国の労働人口、労働賃金などを考えると他国比較ではまだ優位性あり、LDC卒業後も大きな影響はない」(合繊メーカー)、「豊富な人材を求めての登用なので、拡大する傾向には変わりがない」(専門商社)と、生産拠点としての実力を評価する声が多い。「多少の単価アップは見込まれるが、価格競争力はある」(イトキンの前田和久社長)との見方もある。

 業界の関心は、関税負担を回避するための新たな枠組み、特に経済連携協定(EPA)の行方に集まる。「二国間協定が締結されると思われるので、影響はないと予想する」(商社)、「日本とのFTAが実現するか否かを静観する」(ほかの商社)といった声が多い。「影響はただちに発生せず、発生したとしても限定的」(クロスプラスの山本大寛社長)とした上で、「LDC延長の可能性があることと、卒業したとしても二国間EPA締結の可能性」を理由に挙げる。

 ただ、不透明な情勢に備える動きもある。「関税の引き上げによりコスト上昇の要因になるため、品質や技術力の面も考慮して他国への振り替えなどの可能性も出てくる」(アパレルメーカー)と、調達先分散を模索する声も少なくない。

 「他の地域に振り替えが難しい背景も多く、影響は限定的」(商社)との指摘通り、バングラデシュは既にサプライチェーンの要衝だ。LDC卒業を見据え、政府間交渉の進展と並行し、各社は高付加価値化や生産性向上によるコスト吸収など、多角的な対応を迫られそうだ。