新春アンケート(3)/2026年は跳ねるか?どうなる繊維産業

2026年01月06日 (火曜日)

〈海外販売を拡大するか?/販路拡大で中国抜く欧米〉

 繊維・ファッション業界で、国内市場の縮小や円安を背景に、海外販売を強化する動きが加速している。設問9の「海外販売を拡大するか?」との問いに対し、「拡大する」と回答した企業は84%(94社)に達した。

 設問10の「拡大に当たり重視する国・地域(複数回答)」では、米国が52社で最多となり、欧州連合(EU)が49社と続いた。長年最大の市場だった中国(46社)を欧米が上回り、高付加価値品が評価される市場へのシフトが鮮明となった。

 米国や欧州を重視する背景には、環境規制への対応や日本製品の品質に対する再評価がある。「環境や人権配慮を重視する米国およびEU向けに、トレーサビリティーの明確な環境対応商品の販売を拡大させる」(日清紡テキスタイルの村田馨社長)とし、サステイナビリティーを重視する市場でのシェア拡大を狙う。旭化成も「当社の得意とするのは機能品で、欧米での需要喚起・拡大が重要」(工藤幸四郎社長)と、高機能素材の展開に注力する構えだ。

 円安基調も輸出拡大の好機と捉えられている。「足元で続く円安基調を考えると輸出をより増やすことは喫緊の課題」(モリリンの森俊輔社長)との認識は広まっており、「高機能・高性能繊維やサステ素材の海外販売を拡大していく」(合繊メーカー)といった動きが活発化している。米国やEUは、「日本の商品価値、日本同等の品質などの差別化が評価され、販売拡大の可能性のあるマーケット」(双日ファッションの由本宏二社長)としての認識も強い。

 オンワードホールディングスは、米ブランド「J.プレス」事業の拡大を進めており、新体制の構築や店舗出店、電子商取引(EC)サイトの刷新などの施策で、「24年度の売上高15億円から30年度に売上高150億円を目指す」(保元道宣社長)としている。

 一方、3位となった中国については、市場規模の魅力とカントリーリスクへの警戒感が交錯している。「中国市場の規模は依然として世界最大」(アツギの日光信二社長)とし、隣国の韓国も含めシェア拡大の余地があるとみる。「中国は日本生地ニーズが年々高まっている」(東洋紡の清水栄一常務執行役員)として、市場開拓に力を入れる国に多くの企業が挙げる。

 ただ、中国への過度な依存を見直す動きも目立つ。「海外事業は中国がけん引しており、中国の拡大は継続していくが、中国への集中回避として、米国・欧州のさらなる拡大をしていく」(専門商社)と、市場の多様化を進める方針だ。

 中国の次に多かったのはベトナムで、インドネシア、タイと東南アジアの国々が続いた。「若年層が多く、成長の途上で国民の可処分所得も増加しており、日本の製品に対する評価も高く見てもらえるため」(おたふく手袋の井戸端勇樹社長)という理由を挙げる。

 その他として多かったのが台湾。一人当たりの名目GDPは24年から日本を上回っており、「親日市場で、ストレス社会を背景に睡眠に悩みを抱える人が多く、国内で成功している店舗モデルの実現性が高い」(nishikawa)とみる。

 著しい経済成長が続くインドには、巨大な消費地としての期待が集まる。「ウールを素材とする高級品・高機能品の一定数量の消費が見込まれる。インドは今後経済発展が加速し販売対象国になる」(ニッケの金田至保取締役)と、富裕層向けの高級素材需要を見込む。「新たな調達地としてインドが考えられる」(バロックジャパンリミテッドの村井博之社長)と、インドを生産・販売の両面で重要視する傾向が強まってきた。

 「オイルマネー」を背景とした中東市場(UAE、サウジアラビアなど)では、日本製の高品質な素材が武器となる。「中東は民族衣装など量的・安定的な取引が期待できる」(サンコロナ小田)と指摘。「日本製の高付加価値の商品へのニーズを感じている」(三起商行)としてドバイなどでの拡大を目指す。「EU・中東は差別化された日本生地を『適正価格=付加価値を認めた価格』で購入する意志あり」(東洋紡の清水常務執行役員)と、価格競争に巻き込まれない市場として期待を寄せる。

 このほか、富裕層ビジネスの展開先として、シンガポールや豪州を挙げる企業もある。「富裕層割合が高いため」(昭和西川の河合重宏取締役)としてシンガポールを重視。豪州についても「海外販売により、日本品質の商品の見直しが浸透することに期待したい」(御幸毛織の渡邉紘志社長)とした。

 「国内市場がシュリンクしており、海外に活路を見いだすことは第一の打開策」(北高の高山茂也社長)である今、各社は全方位的な拡大ではなく、自社の強みが刺さる国・地域をピンポイントで狙う「一点突破」の動きを強めている。

〈「トランプ関税」/繊維業界の4割が警戒〉

 第2次トランプ米政権が掲げる高関税政策、いわゆる「トランプ関税」に対し、繊維業界の警戒感がくすぶっている。設問11でその影響について聞いたところ、「ある程度マイナス」(36%)と「非常に大きなマイナス」(3%)を合わせた「マイナス」回答は約4割に達した。「ほとんどない」との回答も39%と拮抗しているが、先行き不透明感から「分からない」とする企業も22%あり、楽観視できない状況だ。「ある程度プラス」「非常に大きなプラス」は全くなかった。

 「マイナス」と予測する企業の多くが懸念するのは、米国向け輸出の減少という直接的な影響よりも、米中摩擦の激化に伴う間接的な余波だ。特に警戒されているのが、米国から締め出された中国製品の行方である。行き場を失った中国製の廉価品が周辺市場へ流入しつつあり、「ASEAN地区での地産地消商権には間接的なマイナス影響あり」(東洋紡の清水常務執行役員)と分析。アジア市場での需給バランスの崩壊を危惧する。

 世界的な消費マインドの冷え込みもリスク要因となる。「今後の日本企業収益の減少やインフレの長期化による消費低迷からなる繊維市況への影響の見通しが難しく、『分からない』」(クラボウの中川眞豪取締役)とし、マクロ経済への波及を注視する。

 サプライチェーンの再編圧力も強まる。「中国縫製からベトナムをはじめ、他の国へのシフトが加速。既存工場のキャパシティー争奪戦が激化し、コストの上昇が見込まれる」(学生服メーカー)と指摘する声も。米国向けの生産地を他国にシフトすることによって、生産キャパシティーの確保が難しくなる、コスト上昇といった点で「サプライチェーンの混乱による影響が懸念される」(エムシーファッションの幸晋也社長)との見方もある。

 一方で、約4割が回答した「影響はほとんどない」とする企業は、内需中心の事業構造や、地産地消体制の確立が背景にある。「米国のJ.プレス事業は、米国内での生産が中心であるため影響は極めて小さいと考える」(オンワードホールディングスの保元社長)といった声が聞かれた。

 ただ、直接的な関わりが薄くても、為替やさまざまなコストへの影響は避けられないとの見方は根強い。「先行きが不透明な中、まずは在庫削減、固定費削減などリスク対策に注力するとともに、安易な値下げを行うことがないよう顧客ごと、個別に交渉を進める」(東レの沓澤徹専務執行役員)といった声も聞かれ、不測の事態に備え守りを固める姿勢を示す。