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日本のアクリル繊維 需要振興が重要に

2026年01月13日 (火曜日)

 三大合繊の一角に数えられるアクリル繊維だが、日本での生産が減少の一途をたどっている。背景にあるのがポリエステル繊維など他の合繊との競争で劣勢となったことによる需要縮小だ。アクリル繊維の生産を維持するためには、一段の需要振興が重要だ。特に環境負荷低減のための取り組みが不可欠となる。

 日本でのアクリル繊維生産は、2023年に大手メーカーの一角だった三菱ケミカルグループが撤退。日本エクスラン工業も減産を続けていたが、汎用(はんよう)わたの生産から撤退し、アクリレート系繊維を含む機能性わた生産に特化する方向を昨年明らかにした。

 日本化学繊維協会によると、国内のアクリル短繊維生産は14年に14万㌧あったものが新型コロナウイルス禍に見舞われた20年に8万4千㌧まで減少。その後、経済正常化で21年は9万7千㌧まで回復していたが、23年は再び8万2千㌧まで落ち込んだ。その後もメーカーの撤退や減産が続き、24年は7万6千㌧まで減少し、25年も1~11月累計で7万㌧にとどまるなど減少に歯止めがかからない。

 生産減少の要因の一つは、かつて大きなウエートを占めた中国への輸出が、アンチダンピング課税の継続によって現在も難しくなっていることがあるが、より根本的な要因として、他の合繊との競争で劣勢となっていることがある。

 コスト競争力に優れるポリエステル繊維の高機能化が進み、アクリル繊維はシェアを奪われた。かつてアクリル繊維の牙城だった合繊毛布や縫いぐるみの“側”、ボア、ハイパイルといった用途も現在ではポリエステル繊維が主流だ。

 最近では、ウール混紡の服地やニット製品でもポリエステル繊維やナイロン繊維が使われるケースが増え、長期的な需要減退傾向が続いている。

“強み”生きる用途への開拓を

 こうした傾向は今後も続く可能性が高い。背景にあるのが環境負荷低減への対応力だ。アクリル繊維は、100%使いが少ないことや化学組成上の特性からリサイクルが容易ではない。欧州を中心に進められているデジタル製品パスポート制度のような環境情報の開示が義務付けられる流れが強まったことで、アパレルメーカーが、アクリル繊維の使用自体を避けるケースが増える可能性がある。

 このため日本のアクリル繊維生産を維持するためには一段の需要振興が不可欠だ。強みである染色性や耐候性、風合いの良さが生きる用途を中心に、強いサプライチェーンを持つアパレル・流通との連携が重要になる。また、リサイクル性の向上など環境配慮特性を備えることも必須条件となる。この点で東レはSPAとの連携やマスバランス方式ケミカルリサイクルの実用化など成果を上げつつある。

 また、資材用途での需要確保も重要だ。アクリル繊維はショートカットファイバーやパルプも含めると、ブレーキ・クラッチ摩擦材の添加材、電池のセパレーター、フィルター部材などで安定した需要がある。水と油の両方と親和性を持つ両親媒性といったユニークな性質もあることから、資材用途でのさらなる可能性を秘める。汎用わたから撤退する日本エクスラン工業は、改めて資材用途に力を入れている。