繊維ニュース

特集 東海産地(1)/付加価値の向上が活路

2026年01月13日 (火曜日)

 天然繊維を中心とする東海産地の2026年は、苦戦を強いられた25年の状況が継続しそうだ。合繊への素材変更や中国品の流入は止まる気配がない。今年を展望する。

 東海は尾州、知多、三州、三河、遠州といった産地で構成する。衣料はもちろん、浴衣や帯芯、インテリア、寝装、資材向けなど幅広い品目を手掛ける。合繊もあるが、綿やウール、麻といった天然繊維を軸としたモノ作りを得意とする。

 東海の25年は総じて、どの産地も苦戦を余儀なくされた。ウールを主力とする尾州が特に打撃を受けた。合繊素材への切り替えや中国への生産シフトのほか、夏の長期化も加わり、秋冬素材であるウールの動きは鈍かった。

 今年はどうなるか。おそらく25年の状況が継続するとみられる。物価高で安価な商品へ需要が流れており、特に衣料品をはじめとした繊維製品は顕著だろう。そうなると合繊への切り替えや中国品の流入はさらに加速することが考えられる。

 今後は付加価値を高めることが一層重要だ。それが原料なのか、モノ作りなのかはそれぞれだが、この会社、この産地、この素材“ならでは”の価値を創出する必要がある。その先には海外販売も広がるかもしれない。自社の強みを再考し、果敢に挑戦することが求められる。

〈尾西毛織工業組合 理事長 時田 典幸 氏/多彩な事業で尾州PR〉

  ――2025年の組合事業を振り返ると。

 当組合は日本毛織物等工業組合連合会の傘下組合として、連合会が進める多彩な事業の推進に携わってきました。特に成果があったのは中国バイヤー招聘(しょうへい)事業と「東京テキスタイルスコープ」(TTS)への出展です。招聘事業はこれまでは時間制で尾州企業の出展ブースをバイヤーに回ってもらうという内容でしたが自由に回れるようにしました。それによって、活気あふれる商談ができました。TTSは尾州企業8社が出展した「ビシュウスタイル2026」を展開しました。梳毛やコート地といった尾州のイメージを打破しようと、紳士から婦人まで多彩なサンプルを並べました。今までお付き合いのない企業にも尾州商品がPRできました。

  ――今後の事業計画は。

 招聘事業は中国だけでなく、台湾をはじめとした他のアジア地域からもバイヤーを呼びたいと考えています。日本の素材への意識が高い地域は多い上に、製品やデザインにも力を入れていますからね。TTSの会場でも流しましたが、尾州を発信する動画を作成しました。毛工連の公式ユーチューブで公開しているので、多くの皆さま方にご覧いただき、広く「尾州」の良さを知っていただければと考えております。

〈知多織物工業協同組合 理事長 榊原 晃 氏/産地挙げて反転攻勢〉

  ――2025年を振り返ると。

 転換期の一年でした。一昨年の10月に組合事務所が移転し、加盟社も11に減りました。今年に入って理事長も交代となり、私が務めています。

 生産量や商況を見ると、知多ならではの小幅織機で綿織物を生産する企業は受託量が旺盛でした。広幅の製織を軸とする企業は落ち着いたままでした。

  ――産地の課題は。

 納期対応と適正な加工料に対する理解を図る点が課題です。特に小幅織機の製織による織物生産が納期の調整で苦慮しています。最大限の能力で生産を進めている状態です。

 知多は受託加工の側面が強いため、加盟社が横並びの状態にあります。情報収集と合議を重ね、適正な加工料への理解を図ります。

  ――加盟社の連携が進む。

 特に50代以下の若手は連携が強いと思います。ざっくばらんに意見交換ができる、いい関係にあります。ここに60代以上の参加を呼び掛けたいです。産地が抱える課題の解決を全体で進めていく必要があります。

  ――今年の抱負は。

 反転攻勢の一年と位置付けます。「知多は元気に頑張っている」ことをアピールします。行政を含め、活用できるものは積極的に使えるように、組合を挙げて支援していきます。

〈トピックス/尾州に新会社が誕生〉

 尾州産地で昨年7月、新たな会社が事業をスタートした。紳士服地製造卸の小塚毛織(愛知県一宮市)とスタイレム瀧定大阪による合弁会社、カナーレジャパン(同市)だ。産地の規模縮小が続く中で、新会社の設立は珍しい。

 設立の背景はシャトル織機によるファンシーツイード作りの技術継承を進めることだ。職人の高齢化が着々と進む一方で、若い人材を確保・定着させ、技術継承を進めるためには、ビジネスとしていち早く成立させることが必要だった。

 ファンシーツイードは生地値が高いため、欧州のメゾン向けに照準を定めたものの、海外向けの販路に乏しい小塚毛織単独では難しかった。そこで海外向けの販路を持つスタイレム瀧定大阪との協業に至った。

 尾州のみならず、全国の繊維産地でも新会社を立ち上げる動きはほとんどない。小塚康弘社長は「やるからにはビジネスとして成功させる。技術継承を進めることで産地に貢献していきたい」と前向きだ。